②
いくら敵を倒しても、トニーはやはりペッパーのことを忘れられなかった。何を見ても、そして何をしても彼女と結びつけてしまう…。
もしかしたら戻って来てくれるかもしれない…。そんな淡い期待を抱きながら毎日帰宅してみるも、自分から突き放したのだ。温かく優しい存在が出迎えてくれるはずはなかった。
二人で眠っていたベッドも、そしてキッチンにあるコップ1つでさえ、トニーはペッパーの痕跡が残っているものを直視し手に取ることすら出来なかった。
トニーはひたすら敵と戦った。戦っている時だけは彼女のことを考えずに済んだから…。そして疲労困憊で帰宅すれば、ラボに篭り酒を飲み、そのまま眠る日々を過ごしていた。
ペッパーに別れを告げ2週間が経った。さすがにこの頃になると、仲間もトニーの様子がおかしいことに気づいてはいた。だが、いくら聞き出そうとしてもトニーは口を割らなかった。
覇気のないトニーはフューリーに強制的に休暇を言い渡された。だが、休暇と言っても何もする気は起こらない。結局トニーは、ラボの隅に座り込みぼんやりとしているしかなかった。
『トニー様、きちんと寝室でお休みになられて下さい。このままでは…』
ジャーヴィスが何度も声を掛けても、ダミーとユーが心配そうにそばに来ても、虚ろな目をしたトニーは何の反応も示さなかった。
しばらくぼんやりとしていたトニーだったが、おもむろにフラフラと立ち上がると、車に乗り家を出た。
トニーが向かった先…それは忘れたくても忘れられぬ大切な存在の元だった。
つまり気が付くとトニーはペッパーの家の前にいたのだ。
一方のペッパーも、トニーのことが気になり、携帯を握りしめソファーに座っていた。あれ以来、休暇を取っており出社もしていないペッパーは、毎日のように敵と戦い傷つくアイアンマンを報道するTVを見ていた。憔悴しきったトニーを見る度に、何度も戻ろうかと思った。だが、トニーの気持ちを考えると、ペッパーはその一歩を踏み出すことが出来なかったのだ。
だが、限界だった。これ以上自分を傷付ける彼を見たくなかった。戻れば拒否されるかもしれない。それでも彼を受け止めることが出来るのは…彼を救うことが出来るのは、自分しかいないのだから…。
ペッパーが腰を上げようとしたその時、ドアのチャイムが鳴り響いた。
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