Fall②

ヘリキャリアの医務室に運ばれたトニーを、S.H.I.E.L.D.の医療チームは蘇生させようと必死だ。
自分たちを、そしてヘリキャリアを救ってくれた恩人なのだ。だから何としても助けようと皆奮闘しているが、破片はトニーの心臓に達していた。何とか破片は除去したのだが、時間が経ちすぎていたのだろうか、心臓が再び動き始める気配がない。
その様子を祈るように部屋の外から見守っているスティーブたちだが、トニーに付けられたモニターは先ほどから嫌な警告音を発するばかりだ。
「どうして、こんなことに…」
小さな涙を零したナターシャは、クリントの肩に顔を埋めた。
「…来るなと言われた時に、私が向えばよかったんだ…」
悔しそうに拳を握りしめたスティーブは、唇を噛みしめた。

「キャプテン・ロジャース…よろしいですか?」
室内に入って来た医療スタッフは、悲壮な顔をしている。アベンジャーズの面子に見つめられた彼は、顔を伏せたままだ。
「破片は取り除きましたが…心臓のダメージが大きく…。もうこれ以上は…」
つまりもう手遅れだと言いたいのだろう。だが、皆信じたくなかった。トニー・スタークがいなくなるとは信じたくなかった。
それに、今こちらに向かっている彼の最愛の女性がまだ到着していないのだ。
「今、彼女がこっちに向かってるの!だから…」
ナターシャの悲痛な声に、クリントは彼女をそっと抱き締めた。

そこへ、コールソンとマリア・ヒルに連れられ、ペッパーが到着した。
「トニー…」
部屋を遮るガラスに手を当てたペッパーは、トニーの姿を見るとその場に崩れ落ちた。
トニーの名前を叫びながら大声で泣くペッパーに誰も何もできなかった。
だが、スティーブは違った。ペッパーが、そして仲間が悲しむ姿に堪らなくなった彼は、部屋を飛び出すと手術室へ入っていった。
「キャプテン・ロジャース!ダメです!」
突然入って来たキャプテン・アメリカ。彼は止めようとそばに駆け寄って来たスタッフを突き飛ばすとトニーのそばに立った。
「おい!スターク!戻ってこい!!!」
スティーブは反応のないモニターを睨み付けると、心臓に直接ショックを与えているスタッフを押しのけ、彼の身体を揺さぶった。
「君がいなくなったら、誰が彼女を守るんだ!聞いてるのか!トニー!」
「キャプテン・ロジャース…」
スタッフに数人がかりで引きはがされたスティーブは、部屋の隅に座り込んだ。
スタッフは再びマッサージを開始した。その姿を見つめながら、スティーブは叫んだ。
「ハワードは…君の父親は私の捜索を諦めなかった。君もそうだろ?今までも決して諦めなかった!必ず帰ってきたじゃないか!だから…頼む…トニー……」
顔を押さえたスティーブだが、指の隙間からは涙が零れ落ちた。
その涙に、そして隣室から聞こえるペッパーの泣き声に、諦めかけていたスタッフは頷き合った。
「よし、続けるぞ。何が何でも彼を救うぞ!」
スタッフが再びマッサージを開始しようとしたその時、ピッというか細い音がした。
見ると、モニターが動いているではないか。
「スタークさん!」

トニー・スタークが戻って来た!

沸き起こった歓声に、顔を上げたスティーブは安心したように息を吐いた。

③へ

1人がいいねと言っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。