101. Stair

ある日のこと。ラボでアーマーを整備していたトニーの元へ、長男のエリオットがやって来た。
「父さん、今、いい?」
長男の声に顔を上げたトニーは、額の汗を拭うと息子に隣に座るように告げた。

15歳になった長男。幼い頃は母親のペッパーに似ていたが、最近父親に似てきたと、周囲の人は口を揃えて言う。そして息子自身も、尊敬する父親の後を追うように、同じ道へと進もうとしている。
「どうした?」
「相談があるんだ。母さんにはさすがに言いにくくて…」
男親だからだろうか、息子は昔から相談事は父親である自分にしてくる。最初はどう答えればいいのか分からなかった。というのも、自分は父親とほとんど話をしたことはなかったから。だから親としてどう答えればいいのか分からなかったのだ。だが、年月が経つにつれ、自分も親としての経験を積み、出した答えが『自分が経験したことを正直に伝える』ということだった。それが子供たちのアドバイスに本当に役立っているかはいまだに分からないが…。

ということで、今日も息子の話を黙って聞いていたトニーだったが、息子が周りに合わせて、無理をしているようにしか思えなかった。
一通り話を聞き終えたトニーは、肩を竦めると息子の背中を軽く叩いた。
「なぁ、エリ。お前は無理やり大人になろうとしてるだろ?」
口を尖らせたエリオットは、視線を落とした。
「そんなことないけど…。でも、友達はみんな済ませたって…」
年頃なのだから、仲間内ではそういう話も出てくるのだろう。だが、大切なのは心なのだ。それはペッパーと出会ってトニーが学んだことの一つだ。
「お前の気持ちはどうなんだ?それに、そういうことは大事にしておけ。お前が本当に好きな人とすればいいんだ」
昔はプレイボーイとして名高かったらしい父親だが、エリオットは母親のことを心から愛している父親しか知らない。経験豊富なその父親が言うのだ。だからおそらく間違いないのだろう。
「…パパは本当にそう思う?」
息子の髪をくしゃっと撫でたトニーは、笑顔を向けた。
「あぁ。背伸びなんかするな。お前はお前だ。一歩ずつ、自分のペースで階段を登っていけばいいんだぞ?」
にっこりと笑った父親に、エリオットも自然と笑顔になった。
「うん!分かった」
勢いよく立ち上がったエリオットはすっきりとした顔をしている。いつの間にか自分と同じくらいの背丈になった息子は、よく似た笑みを口元に浮かべると、手を振りリビングへと戻って行った。

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