夫婦設定の日常
「またそんなにヒールのある靴を履くのか?」
寝室のクローゼットの前で2日後のパーティーのドレスを選んでいたペッパーは、トニーの声に振り返った。
いつも自信満々でコンプレックスなどないように見えるトニーだが、一つだけ気にしていることがある。それは…。
「あら?いいでしょ?このドレスだと、これくらいヒールがあった方が…」
「だが、それだと…」
言わなくても分かっているだろ?というように口を尖らせたトニーを見て、ペッパーは思わず吹き出した。
そう。トニーのコンプレックス…。
それは、身長。
実はかなり厚底の靴をいつもオーダーしているトニー。ペッパーが普段5cm以内のヒールに抑えているため、トニーの方が身長があるように見えるのだが、今 ペッパーが履いている靴は、5cmどころか10㎝ほどヒールがあり、並んで歩くといくら厚底で頑張ってもペッパーの方が大きくなってしまうのだ。
「あら?いいじゃない?私の方が背が高くても…」
からかうように顔を覗き込むと、トニーは頬を膨らませそっぽを向いてしまった。
「あら?旦那様はご機嫌斜め?」
少しかがんで目線を合わせるとトニーはそれが気に入らなかったらしい。
「勝手にしろ…」
とクルリと向きを変え寝室を出て行こうとするトニー。
困ったわ…からかい過ぎたみたい…。
トニーって、一度機嫌を損ねると厄介なのよね…。
ため息を付いたペッパーは、靴を脱ぎ素足になると背後からトニーに抱きついた。
「何だ?急に。私より背が高い方がいいんだろ?」
素足になったペッパーは、トニーよりも小さいことに気づいているのに…。苦笑しつつもペッパーはトニーの背中に顔を押し付け、Tシャツ越しにキスをした。
「もう…気づいてるでしょ?これで元通り…」
黙ったままのトニーの背中から離れると、跳ねるように前に移動し顔を覗き込んだ。トニーは相変わらず口を尖らせたまま。
ペッパーはトニーの首元に腕を回し背伸びをすると唇を奪った。トニーはペッパーの脇に当てた手を腰までゆっくりと滑らせた。
「…別に気にしてない…」
「もう…あなたってホント素直じゃないわね」
クスッと笑ったペッパーは、再びトニーの唇に熱い口づけをした。トニーがペッパーの尻を両手で支えるように持ち上げると、ペッパーはトニーの腰に脚を絡ませ抱きついた。
熱い吐息を吐きながら唇を離したトニーは、ペッパーの唇を舌で舐めた。
「こういうことができないだろ?私の方が背が高くないとな」
ニヤリと笑ったトニーは、真っ赤になっているペッパーをベッドの上にそっとおろした…。
トニーのコンプレックスはやはり身長だと思います。