91. Sight

真っ赤な太陽が海に沈んでいく。青かった水面は夕日を飲み込みながら、燃えるような赤へと変化している。時折金色の混ざるその色は、まるで彼のようで…。

バルコニーからぼんやり海を眺めていたペッパーだが、最愛の男性の声で現実へ引き戻された。
「ハニー、何してるんだ?風邪を引いたらどうするんだ」
振り返ると、毛布片手にトニーが慌てたように駆け寄って来た。そしてペッパーの肩から毛布を掛けると、少し冷えた身体を温めるようにぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫よ」
彼の匂いに包まれた途端、温もりにも包まれたペッパーは、ふふっと笑った。
「だが…」
不安そうに顔を顰めたトニーは、ペッパーの手の上からお腹にそっと触れた。
「この子にね、あの夕日を見せてたの。あなたのお家からは世界一綺麗な夕日が見えるのよ…って」
母親の言葉に、お腹の中の小さな娘はグルグルと動き回っている。その反応に口の端を上げたトニーは、ペッパーの指を自分の指と絡めると、彼女の頬にキスをした。
「見えたと言ってるぞ。もうすぐ会えるな。楽しみだ」
トニーに身体を擦り寄せたペッパーは、彼の肩に頭を乗せると、幸せそうに微笑んだ。

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