トニーが倒れた。
1か月程、新プロジェクトの開発のためラボに籠りっぱなしだったのだが、ペッパー自身も忙しく、トニーの状態にまで気を配れなかった。
今朝、出社していないと連絡を受け、家へと向かったのだが、トニーはラボのソファに横たわり、青い顔をし震えていた。
「凄い熱じゃないの!どうして言わないんですか!」
目を三角にして怒鳴るペッパーだが、その声に反論する元気もないのだろう、ペッパーに手を借りたトニーは黙って寝室へと向かった。
「過労ですね。しばらくは無理をさせないように…」
往診に来た医師はトニーに処置を施すと、数日はしっかり休ませるようペッパーに言いつけ帰って行った。
寝室に向かったペッパーは、トニーがベッドに起き上がりパソコンを見ているのに気付くと慌てて彼の手元からパソコンを取り上げた。
「おい!」
仕事を中断されたトニーはペッパーを睨み付けた。だが、それに怯むペッパーではない」
「何やってるんですか!あなたは過労で倒れたんですよ!しっかり休んで下さい!」
怒り狂うペッパーに反論しても無駄だと思ったのだろう。トニーはしぶしぶベッドに潜り込んだ。
「機械はオイルをさせば動く。私もだ。だから大丈夫だ」
何か理由を言えば大丈夫と思ったのだろうか。トニーの額に手を当てたペッパーは、先ほどよりも熱を持った彼の額に濡れたタオルを置いた。
「あなたはエンジンオイルで動いてないの。だから食事をしてゆっくり休まないと…」
当たり前のことを言ったのに、トニーはペッパーの言葉に驚いたのか目を丸くした。
「私の身体の事を心配してくれた秘書は君が初めてだ…」
一体今までの秘書は何をしていたのかしらとため息をついたペッパーだが、同時に仕事の道具としてしか思われていなかったらしい目の前のボスが気の毒になってきた。
毛布を掛け直したペッパーは、無意識のうちにトニーの頬を撫でた。
「あなたあっての私なの。あなたに何かあったら困るの。だからもっと自分を大事にして下さい」
温かく柔らかい感触に、どうしてか心までも温かくなったトニーは、小さく頷くと目を閉じた。
「しばらく泊まります。あなたが心配だから」
部屋を出る前にそう告げると、毛布の山からか細い声が聞こえてきた。
「ありがとう、ペッパー…」
部屋の明かりを消したペッパーは、何か栄養のつく物を作ろうとキッチンへと向かった。
※IM1以前の二人