「スタークさん、お約束通り、リアクターと破片は全て残してありますよ」
手術から数日後。病室にやって来たDr.ウーはトニーにトレーに乗せたリアクターと破片を見せた。
胸にあった悪夢。これが自分の体内にあったのかと思うと、今さらながらぞっとする。
「あぁ、ありがとう」
ゴクリと唾を飲み込んだトニーはDr.ウーから受け取ると破片の一つを手に取った。
「どうするかな…」
いくつもの破片と光の消えたリアクター。
もう二度と使うことのない彼の一部だったものは、輝きを失い静かに最後を待っているかのようだった。
リアクターを手に取ったトニーは、ふいに思い出した。
『トニー・スタークにもハートはある』
その言葉と共にプレゼントされた初代のリアクターを。
「そうだ、いいことを思い付いた」
トニーはとある人物へ電話を掛け始めた。
数時間後、一人の男性が病室へやって来た。
「頼んでいた物、できたか?」
ペコペコとトニーにお辞儀をした男性は、カバンの中から細長い箱を取り出した。
「はい、スターク様。こちらです」
手渡しは嫌いだとベッドの脇に箱を置かせたトニーは、そっと蓋を置けた。
中にはハート型の赤いルビーの光るネックレス。
トニーはとある計画を立てていたのだ。退院したら帰国する前に、指輪とこのネックレスを贈りプロポーズしようと…。
すなわち、この男性は宝飾デザイナーであり、トニーはペッパーに贈るネックレスのデザインを彼に任せていたのだった。
「素晴らしい出来だな。だが、追加して欲しい物がある」
そう言うと、トニーはあの破片を取り出した。
「これは…」
鋭く歪な形をした複数の金属片。女性物のネックレスには似つかわない。困惑するデザイナーをよそに、トニーは説明し始めた。
「これは私の胸の中にあった破片だ。これをネックレスに付けて欲しい」
自分の胸にあった悪夢。悪夢から解放された今、彼女にこれを贈るのには理由がある。
それは今まで苦楽を共にし、支えてくれた彼女へ、自分の心(ハート)を捧げるということ。
世界に一つしかないこの破片付きのネックレスを、世界で唯一愛する女性に贈る…。それは彼女に自分の全てを捧げるということ…。
言葉には出さないが何か感じ取ったのだろう。デザイナーは大きく頷くと、世界に一つしかないネックレスに仕上げると言い、帰っていった。
「心(ハート)を捧げる…か…」
残ったリアクターを手に取ったトニーの脳裏には、ペッパーの姿が浮かんでいた。
自分は生まれ変わった。もう悪夢に悩まされることはない…。いや、例えそうでも、彼女がそばにいてくれる。永遠に愛し守りたい存在が…。
胸元の包帯に手を触れたトニーは小さく笑うと、リアクターを袋にしまった。