61. Weather

スターク邸のあるマリブは年間を通して天気も良く過ごしやすいのだが、どうしたものか、この日ばかりは違っていた。

「ねぇ…どうしてこんなに急に嵐になってるの?」
いつもは真っ青な太平洋も真っ黒な雲と荒波が渦を巻いており、大きな窓は暴風のため騒々しい音をたてている。
「私に聞くな、ペッパー。いくら私でも天候を操ることはできない」
ソファーに腰を下ろしたトニーは不機嫌そうに唸り声を上げた。その唸り声に、トニーの膝の上に座ったエストは父親の顔をじっと見つめていたが、まるで父親の真似をするかのように口を尖らせた。
口を尖らせたまま父親と母親を交互に見つめたエストは、まだぶつぶつと文句を言っている父親に同意するかのように声を上げた。
「ぶー!」
その可愛らしい仕草に苦笑いしたペッパーは、窓辺から離れるとトニーの隣に腰を下ろした。
「仕方ないわよ。このお天気ですもの。ディ○ニーランドデビューはお預けね」
ダッ○ーの着ぐるみを着たエストは、母親に頭を撫でられると嬉しそうに笑った。
そう、今日は6か月になったエストを連れて初めてディ○ニーランドへ行くはずだったのだ。ダッ○ーが大好きなエストのために、ペッパーの母親は着ぐるみを作る張り切りようだったのに、この時期にしては珍しい嵐のせいで計画は全てご破算だ。
「そうだな、別の日に行こう」
ため息をついたトニーがエストを抱き直しソファーに座らようとしたその時だった。
『トニー様、ソー様がいらっしゃいました』
予定外の来客に、トニーとペッパーは思わず顔を見合わせたが、件の人物はズカズカとリビングに姿を現した。
「久しぶりだな!鉄の男!!」
立ち上がったトニーとペッパーの肩を叩いたソーは、トニーの腕の中のエストの頬を擽ると、ソファーへ腰を下ろした。
「どうしたんだ、急に?」
ペッパーに娘を手渡したトニーが尋ねると、ソーは満面の笑みを浮かべた。
「この間奥方が食べさせてくれたのは、ピザの上にカルボナーラだったか?あの味がどうしても忘れられないんだ。ジェーンに作ってもらおうと話したが、断られた。だからお前に食わせてもらおうと来た」
ペパロニピザにカルボナーラを乗せて食べる…トニーの大好物なのだが、先日の雨の日にやってきたソーが『美味い』と連呼し全て食べてしまったことをトニーは思い出した。
外は嵐なのだ。どうせ出かけることはできない。それならエストは大好きなソーおじさんに遊んでもらった方が喜ぶだろう。と、ここでトニーは思い出した。目の前の男が雷神であることを…。
「おい…まさか…この嵐はお前のせいか?!」
身を乗り出して声を上げたトニーに面喰ったソーは、肩を窄めると豪快に笑った。
「あぁ、そうだ。分かりやすいだろ?」
要するに、自分が来る合図だと言いたいのだろう。トニーにじろりと睨まれたソーが顔を上げると、嵐はすっかり成りを潜め、外はいつものように平穏な風景が広がった。
「いい天気になったぞ!」
得意げに言い放ったソーだが、トニーはペッパーに向かって頷くと立ち上がった。
「悪いがペパロニピザのカルボナーラ乗せはまた今度だ。それより、面白い所へ連れて行ってやる。どうせ暇だろ?一緒に来い」
どうやら鉄の男は自分の知らぬミッドガルドの面白い場所へ連れて行ってくれるらしい。
立ち上がったソーは、腕を伸ばしてきたエストを抱くとトニーとペッパーの後についてガレージへと向かった。『ディ○ニーランドはコスプレとハンマー持ち込みはOKだったか?』と二人が話しているのを知らずに…。

1人がいいねと言っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。