この数か月の苦労が報われた瞬間。二人きり祝杯を挙げ、それから彼女との甘いひと時を過ごそうとした矢先に現れたコールソン。やけに親しそうなペッパーとの様子に軽く嫉妬心を抱きながらも渡されたファイルを開く。
これは大変なことになるぞ…。
長年の勘か、はたまた天才的な閃きのおかげか、厄介なことに巻き込まれるのは目に見えている。
この後は闘いとなるだろう。
一瞬でも長く一緒にいたくて、何とか引き留めようとする私に向かい彼女は微笑んだ。
「終わったら、ご褒美に私をあげるから…」
そう耳元で囁くと甘い口づけを残し彼女はワシントンへと飛んだ。
一人残された私は、これから起こるべき闘いに備え、ファイルを読み始めた…。
***
『ポッツ様におつなぎしますか?』
マンハッタンへ向けて発射されて核ミサイルを抱え、異空間へと繋がる扉へと向かう私にジャーヴィスが気を利かせて言った。
「あぁ…頼む…」
目の前に映し出される彼女の顔。ニコリと笑った愛しい女性の顔を見つめながら、空高く飛び続ける。
コール音だけが鳴り響く中、突然青い空が切れ目の前に漆黒の空間が広がった。
死を目前にした瞬間、走馬灯のように思い出が駆け巡ると聞いたことがある。自分に限っては、そんなことはないだろうと思っていたが…。
この世は自分だけの世界だった。
いや、自分が生み出したものさえあれば幸せだった。
そんな私を広い世界へ連れ出そうとしてくれたのが彼女だった。
あの事件の後、アイアンマンとして自分だけの世界から飛び出した私。
道を外しそうになった時、正しい方向へ導いてくれたのも彼女だった。
彼女がいなければ私は何もできない。私は彼女なしでは生きていけない。
つまり、彼女の笑顔を…存在を守れるのなら、私は命など惜しくない…。
『繋がりませんでした、トニー様…』
ジャーヴィス…彼女の声を聞いていれば、この決意は揺らいでいたかもしれない…。
自己犠牲なんて精神は、あのお硬いキャプテンの専売特許だと思っていたのに…。
ジャーヴィスとの通信も途絶え、一人漆黒の空間へ放り出された。
目を閉じ、彼女の顔を思い浮かべる。
また泣かせてしまうな…。
別れの挨拶も言えなかった。
ペッパー、泣くなよ。
いつだって私は君のそばにいるから…。
***
耳元で怒声が聞こえ慌てて目を開けると、目の前にお馴染みの面々がいた。
「誰もキスはしてないだろうな?」
それだけ軽口が叩けたら大丈夫だな…とみんなに笑われたが、心から欲してやまないのはただ一人。
***
「トニー…」
破壊されたスタークタワーを見渡していると、泣きそうな顔をした彼女が部屋の入り口に立っていた。
腕を広げ胸に飛び込んできた彼女を抱きしめる。
「トニー…無事でよかった…」
胸元に顔を埋め何度も繰り返し彼女の頭にキスを落とす。
あの時、二度と君に逢えないかもしれないと覚悟を決めた瞬間、もう一度逢えたら永遠に君の手を離さないと決めたんだ…。
「ペッパー…。永遠に愛してるよ…」
熱い口づけを交わしあい、力の抜けた彼女の身体を抱きしめ直すと、柔らかな甘い香りに溺れていった。
【アベンジャーズの補完話。トニペパコピー本新録の再録です】