A ray of light

ハワードとマリアのトニーへの愛

NYのスタークタワー。
ラボでアーマーの整備をしているトニーの元に、1本の電話が入った。
画面を見ると、そこには愛しい人の笑顔。
「やぁ、ハニー。どうしたんだ?」

「トニー?今…大丈夫?そっちに行ってもいい?」
彼女の声にわずかながら異変を感じたトニーだが、
「大丈夫だよ。ただ、君を抱きしめれるような格好ではないが…いいか?」
と茶化すように答えた。

確かに今のトニーは、アーマーを中途半端に…右手と胸部の一部、そして両足のひざ下のみに装着。整備中のため服はあちこち汚れており、彼女に抱きつくと怒られそうな格好をしている。

手くらいは洗っておくか…と、トニーが手を洗っていると、ラボの入口が開き、強張った顔のペッパーが入ってきた。
「ペッパー、どうし…」

ペッパーに声をかけようとしたトニーは、息を呑んだ。彼女の後ろには顔を布で覆った3人の男がおり、1人はあろうことか彼女の頭に銃を突きつけていた。

「トニー…」
涙で目を真っ赤にしたペッパー。銃を突きつけた男はペッパーの髪を掴むと部屋を横切り窓際へと向かった。残りの男たちはトニーの方へ走り寄ると、状況が掴めず身動きがとれないトニーを手に持っていた銃で力一杯殴り倒した。
「っ!!」
「やめて!」
殴られた頭をおさえ、起き上がるトニー。ぬるっとした感触を感じ手のひらを見ると、自分の血で真っ赤に染まっていた。

「おい!お前たちは誰だ!」
トニーは3人の男たちを睨みつけるように見回した。1人はペッパーを人質に窓際、1人はラボの入口で見張り役、そして1人は自分のそばに立ち銃口をこちらに向けている。どう考えても形勢は不利。
咳払いをするふりをして、トニーは左手にはめた時計を口元に寄せると、小声で「J、ローディーを…」とつぶやいた。
幸いなことに、トニーの行動は気づかれなかった。ペッパーを人質に取った男はリーダーなのだろう。銃口を彼女の頭に突きつけ、大声で叫んだ。

「トニー・スタークよ。お前の作る兵器は素晴らしい物ばかりだった。そこでだ。今日はお前に仕事を持ってきた。高性能の新型ミサイルをお前に作ってもらいたいのだよ」
「残念だな。私はもう武器製造から手を引いたんだ。他所をあたってくれ…」
残念そうなそぶりで首を横に振ったトニーだが、リーダーの男は薄ら笑うと、銃口をトニーに向け発砲した。

バーン!!

ペッパーの悲鳴と乾いた発砲音がラボに響き渡る。
殺そうと思って撃ったのではないのは明らかだ。銃弾はトニーの頬を掠め、壁に当たった。トニーの頬から一筋の赤い血が流れ落ちた。
「もう一度言うぞ。ミサイルを作れ!5秒待ってやる。断ると、お前の女を…」
そういうとまだ熱をおびている銃口をペッパーの頭に突きつけた。

「5…」
「待ってくれ!まず話をしよう…」

「4…」
「トニー!言うこと聞いちゃだめ!作っても…」

「3…」
「やめろ!頼む…。彼女は関係ない…。頼む…」

「2…」

銃の引き金に男の指がかかった。彼らは本気だ。ペッパーの命を奪うことなど何とも思っていないのだ。例えトニーがミサイルを作っても、完成後には殺されるだろう…。だが、このままでは彼女が…。

「1…」
「分かった!分かったから!何でも作ろう!だから頼む!彼女だけは離してくれ…。頼む…」

トニーの言葉を聞いて、男たちは銃を下ろした。
「よし。それでいい。話せば分かるじゃないか、トニー・スターク」
ペッパーを人質に取った男が指先で彼女の顎下を撫でると、ペッパーの目から涙が一筋零れ落ちた。
「話せば分かるだと?では、彼女を離せ!頼む!」
トニーは頭を下げ、必死に頼んだ。自分はどうなってもいい。だが、ペッパーは巻き込むわけにはいかない…。せめて、彼女だけでも無事に逃がさなければ…。
顔を上げたトニーの目とペッパーの目が合った。ペッパーを見つめ、大丈夫だ、必ず助ける…と無言で語るトニー。見つめ合う2人に気付いた男は、ニヤリと笑った。
「分かった。女は解放してやる」

そう言うと、銃を窓に向け乱射し始めた。窓ガラスが次々と割れ、辺り一面に破片が飛び散る。
「この女とは、あの世で会わせてやるよ!」
男は何の躊躇いもなく、ペッパーを窓から突き落とした。

「トニーー!!!」
「ペッパー!!」

ここは地上から何百メートルも上空。落ちればひとたまりもない。
だが、トニーは迷うことなくペッパーの後を追い、窓から身を投げた。

ものすごいスピードで落下していく2人。必死で手を伸ばすも、ペッパーの手にはあと少しのところで届かない。アーマーは整備中だったため、アーマーのパワーはほんの僅かしか残されてない。

このままだと…。
一か八か、トニーはブーツジェットを噴射させた。
ペッパーとの距離がみるみる縮まり、やっと追いついたトニーはペッパーを抱きしめ、空中で止まった。

「トニー…」
トニーに抱きつき泣くペッパー。
「怪我はないか?ペッパー…。無事でよかった…」
そんなペッパーをトニーは優しく抱きしめた。

ゆっくりと地上へ向かい降りていく二人。だが、あと5mというところで、あろうことか、パワーが切れた。
「!!」
「キャー!!」
抱き合ったまま急降下していく2人。
「ペッパー!大丈夫だから…。絶対に離れるなよ!」

ペッパーだけは…。絶対に助けなければ…。

トニーはペッパーの身を守るように、彼女をかたく抱きしめた…。

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3週間後…

「トニー…。お願い…早く起きて…。みんな待ってるのよ…」

二人を襲った男たちは、あの後駆けつけたローディーによって捕まった。だが、ペッパーを守ろうと身を呈したトニーは、何とか一命はとりとめたものの、意識不明の重体。医師からは、生きているのが奇跡だ…もしかしたらこのまま二度と意識が戻らないかもしれない…と宣告されていた。

目を覚ます気配すらないトニーに、ペッパーは奇跡を信じて、毎日トニーに呼びかけ続けていた。

そのペッパーの呼びかけは、トニーの耳にちゃんと届いていた。
トニーは静寂のみが支配する真っ暗な空間に閉じ込められていた。時折遠くの方からペッパーの声が聞こえるのだが、閉じ込められた空間には出口がなく、どうあがいても脱出は不可能だった。

ここに閉じ込められてどのくらいになるのだろう…。
もうダメだ…。二度とペッパーには会えないのか…。
あれだけ聞こえていたペッパーの声も聞こえなくなった。
トニーが諦めかけたその時。
「トニー…」
真っ暗な空間に一筋の明るい光が差し込んだ。

振り返るとそこには、20年以上会っていない懐かしい男女の姿。

もしかして…
「父さん?母さん?」

そこにいたのは、在りし日の両親だった。死んだはずの父親と母親がいるということは…
「私は…死んだのか?」

2人の元に歩み寄るトニーに、母親は
「トニー…」
と微笑んだ。
「母さん…」
優しかった母親。懐かしい微笑みに手を伸ばそうとしたその時、
「トニー!お前はこんな所で何をしているんだ!」
父親が大きな声で怒鳴り、トニーは立ち止まった。
死んでもまだ厳しい父親に、思わず苦笑いするトニー。
「何って…。閉じ込められて逃げ出せないんだ。それより、親父がいるということは…迎えにきたんだろ?」

「お前はまだ必要ない!」
相変わらず仏頂面な父親が、お前は何を言ってるんだ!と言わんばかりの剣幕で再び怒鳴った。

「お前にはあの声が聞こえないのか?お前を呼ぶあの声が…」

父親に言われ天を仰ぐと、微かだが
「トニー…」
とペッパーが呼ぶ声が再び聞こえた。

「トニー…早く帰りなさい。あなたを待ってる女性の元へ…。あなたはまだ、ここに来たらダメよ。早く戻りなさい…」

トニーが母親を見ると、「さあ、早く…」と彼女は優しく微笑んでいた。

「お前にはまだやるべきことが山のようにある。さあ、帰れ。」
父親の…ハワード・スタークの顔にも笑みが溢れていた。

二人に背中を押されるように、トニーは再び天を仰ぎつぶやいた。
「ペッパー…」
すると、空から降り注いでいた暖かい光が段々と大きくなり、トニーの身体を包み込んだ…。

「トニー…今度来る時は…孫の話を聞かせろよ…」

光に包まれる瞬間、からかうような父親の声が聞こえた気がした…。

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トニーの指先がピクリと動き、ペッパーは慌ててトニーの顔を覗き込んだ。

「トニー…聞こえる?」
トニーの手を握りしめペッパーが呼びかけると、今までかたく閉じられていたトニーのまぶたがゆっくりと開いた。

トニーがゆっくりと目を開くと、そこには愛しい女性の顔があった。まだ焦点の定まらない目では、彼女の顔をしっかりと捉えることができないが、トニーの大好きな彼女の瞳からは次々と涙が零れ落ち、トニーの頬を濡らした。
「大丈夫?」
ペッパーの呼びかけに答えることができないトニーは、自分の手を力強く握る彼女の手を指でゆっくりとなぞった。
「よかった…。戻ってきてくれてよかった…。トニー…ありがとう…。頑張ってくれてありがと…」
ペッパーはトニーの手を自分の頬に当てると、愛おしいそうに何度も口づけをした。

暗闇の中で一筋の光を差してくれたのは、ペッパー…君だったのか…。
父さん、母さん…彼女の元へ…戻ってこれたよ…。ありがとう…。
トニーは泣きながら嬉しそうに自分を見つめるペッパーを、優しい瞳で見つめ返した。

パパとママを登場させたら社長が死にかけました…

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