02.心の繋がり

恋人になり数か月。二人の距離はさらに縮まり、ペッパーは今まで味わったことのないほどの幸せを感じていた。
だが最近、ペッパーには気になることがあった。それはトニーがふとした瞬間に不安そうな顔をしていること。
何か悩みでもあるのかと思ったが、本人は話そうとしない。
自分の前では無理やり笑っているように見える…そう思ったペッパーは、思い切ってトニーに聞いてみることにした。

「ねぇ、最近どうしたの?元気がないわ」
夜、ベッドに潜り込んだトニーはその言葉に肩をびくつかせた。
「私はいつだって元気だ」
目を逸らしたトニーにペッパーは顔を曇らせた。
(嘘つき…)
何か隠したいことがある時、トニーはペッパーの目を見て話そうとしない。
黙ったままのトニーをペッパーはじっと見つめた。長年秘書として傍に寄り添ってきた彼女は、恋人となった今、トニーのわずかな変化ですら見逃すまいとしているようだった。
やがて、ペッパーの不安げなそして悲しそうな視線に耐えきれなくなったのか、トニーはため息をつくと彼女の顔をじっと見つめた。
「分かった。白状する。君に言えばそんなことはないと言われると思うが…。実は…不安なんだ。君も知っているだろうが、今まで女性はたくさんいた。だが、こんなに長い間…その…一人の女性と続いたことはない…。だから…」
そう言うと、トニーは言葉を切り俯いてしまった。
彼にはたくさんの女性がいた。一夜限りの女性もだが、数回デートをした女性も少なからずいた。だが、トニーの言う通り、一人として長続きしたことはない。それはデートをした女性と付き合いながらも、他の女性と関係を持ち続けていたこと…つまりは『浮気』が原因だった。それともう一つ。彼は熱中すると何日もラボに籠り姿を見せないのだ。ディナーの約束をしてもすっぽかし、ペッパーが断りの電話をいれたことが何度もある。つまりは、どの女性も彼の本質を理解できず、誰もついていけなかったというところだろう。
まるで言うべきではなかったというように唇を噛みしめたトニーを堪らなくなったペッパーはぎゅっと抱きしめた。
「もしかして、私がいつかあなたに飽きるかもって思ってるの?」
視線をわずかに上げたトニーは小さく頷くと、ペッパーの胸元に顔を埋めた。

恋人になって分かったこと…。
それは、不安に思っている時、涙を流さず心で泣きたい時、トニーがペッパーの胸元に顔を押し付けること。まるで母親の温もりを求める子供のようなその行動は、恋人となり初めて知ったことだった。

そんなトニーが愛おしくなったペッパーは、彼の柔らかな髪の毛を梳くと頭を抱え込んだ。
「トニー。私たちは大丈夫。あなたは以前言ってたわ。私たちは心が繋がっているって。だから私たちは大丈夫。私はあなたをおいて行ったりしないから…」
何度も何度も頷くトニーをペッパーは一晩中抱き締め続けた。

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