01.家族会議

アスガルドの王宮の一室は緊迫した空気に包まれていた。
オーディンは黙ったまま窓の外を眺めており、ソーは椅子に座った母親のフリッガと父親の間を行ったり来たりしている。フリッガの膝には小さなロキが座っており、その目は途切れることのない涙で真っ赤になっている。
しくしくと泣くばかりの小さな息子の涙を拭ったフリッガは、先ほどから何も言わない夫に視線を向けた。妻の視線に気付いたオーディンは、ゆっくりと窓際から離れると、妻の横に座った。チラリと父親を見上げたロキだが、相変わらず黙ったままの父親に見つめられると、顔を背け母親の胸に顔を埋めた。
「ロキ、話してごらんなさい?」
フリッガが促すように背中を撫でると、顔を上げたロキは恐る恐る話し始めた。
「僕は…拾われた子なの?」
その言葉にフリッガは息を飲み、オーディンは表情こそ変えなかったが、眉を釣り上げた。そして兄であるソーは怒りで真っ赤な顔をしているではないか。家族の様子を見つめたロキは、母親の服の袖をぎゅっと握りしめた。
「兄上は父上にも母上にも似てる。でも、僕は父上にも似てないし、母上にも似てない…」
ロキの言葉に唇を噛みしめたソーは、拳を握りしめると弟に詰め寄った。
「ロキ!誰がそんなことを言ったんだ!俺が懲らしめてやる!」
今にも飛び出して行きそうな兄。喧嘩早い兄は、今までも何度もいざこざを起こしているのを、ロキは幼いながらに知っている。そしてそれがいつだって自分を守るためであることも…。つい先日も、兄は自分をからかった友達を泣かせ、両親に怒られたばかりだ。兄に迷惑をかけてはいけないと、ロキはソーにしがみ付いた。
「兄上!ま、待って!僕がそう思っただけだから!」
弟にしがみ付かれたソーは立ち止まると、黙ったままの両親を見つめた。息子の視線に気付いたオーディンは、妻の手を取ると立ち上がり、子供たちの元へと歩み寄った。
「二人とも、わしの息子だ」
「そうよ、ソーもロキも大事な息子よ。これから先、何があっても…」
二人の頭に手を置いた父オーディンと、優しく抱きしめてくれる母フリッガ。そして繋いだ手を力強く握り返してくれる兄ソーの優しさに、ロキはもやもやとした気持ちが晴れていく気がしたのだった。

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