49. Explosion

「エリ、なかないの!おとこのこでしょ!」
手を腰に当てたエストは頬を膨らませているが、彼女の小さな弟は真っ赤な顔をして泣き続けている。
「エリ…もう泣くな」
泣き続けている息子を抱いているトニーのTシャツも、彼の涙で濡れている。
「まま!ままぁー!!」
父親のTシャツをギュッと握ったエリオットは、母親のことを呼び続けている。
母親であるペッパーは、昨晩から不在。というのも、彼女の両親が揃って風邪で倒れてしまい、昨晩遅く彼女は実家へと飛んで帰ったのだ。
朝になり起き出してきた娘に話をすると、娘は祖父母のことを心配しつつも胸を叩いて言ったのだった。
「パパ!だいじょうぶよ!あたしがママのかわりをするから!」
と言って、エプロンを取り出したエストは、料理が苦手なトニーを手伝い朝食作りから掃除洗濯と手伝ってくれたのだった。だが問題は、母親が大好きな息子の方だった。一応母親が不在である事情を話してみたが、まだ1才にならない彼に理解できるはずもなく、しばらくは父親と姉とご機嫌で遊んでいたエリオットだったが、早めのランチを食べ終わり昼寝から起きだした頃から雲行きが怪しくなってきた。
そして今に至るわけだ。おもちゃもダメ、本もダメ。気晴らしに外へ連れて行こうとするのだが、エリオットは車のチャイルドシートに座るどころか、外へ出ることさえ嫌がる。
「おい、泣いているところを見られるのが嫌なのか?変なところでお前もプライドを持ってるんだな」
何をしても泣き続ける息子の小さな背中を撫でたトニーは、助けを求めるように娘に視線を向けた。エストも姉として何とか弟を泣き止ませようと必死なのだが、父親ですら無理なのだから自分に出来るはずがない。だが頭を捻らせた彼女は、とある名案を思いついた。
「パパ、ママにおでんわしてみたら?ママのこえをきいたら、エリもなかなくなるかもしれないよ」
先ほどペッパーから電話が掛かってきた時、エリオットは昼寝中だったのだ。それはそれで母親に触れることができず余計に泣く可能性もないわけではないが、もしかしたら…という淡い期待をかけて、トニーは娘の言葉に従うことにした。
「J、ペッパーに電話を」
『かしこまりました、トニー様』

しばらくすると、目の前に現れたモニターにペッパーの姿が映し出された。
「トニー、大丈夫…じゃなさそうね」
泣き叫ぶ息子の声と姿にペッパーは眉を潜めた。
ずっと泣いているのだろう、真っ赤な顔をしたエリオットは母親の声に気が付くと、モニターに向かって腕を伸ばした。
「まま!まま!ままぁぁぁ!!!」
だが、目の前に母親はいるのに、触れることができないに気づいたエリオットは、トニーの腕から落ちそうなくらい激しく泣き叫び始めた。
まさに逆効果。
やれることは全てやった、だがどうすることもできないと同じように頭を抱える夫と娘を見たペッパーは、すぐに戻ると電話を切った。

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