48. Shock

「元カレだと?」
手を差し出した商談相手は、決まりきった挨拶の後に衝撃的な言葉を口にした。
「えぇ。あなたの奥さま…ヴァージニア・ポッツさんと付き合ってました。学生時代の話ですから、かれこれ15年以上前ですが」
自分とペッパーの間くらいの年だろう、目の前の男はニコニコと笑みを浮かべているが、引きつった笑いを浮かべたトニーはソファーにペタンと座り込んだ。
「そ、そうか…」
やっとの思いでそう呟いたトニーだが、幸か不幸か相手は全く気付いてない。
「3年間付き合ってました。結婚も考えていたんですが、私のヨーロッパへの転勤が決まってしまい…。彼女はLAに残る道を選んだんです。でも結果的に良かったようですね。あなたのような素晴らしい男性と出会えたんですから」
相手は共通の話題であるペッパーの話をして場を和らげようとしているのだろう。だが、相手はトニー・スタークだ。元プレイボーイで百戦錬磨のトニー・スタークには何ともない話だと考えているようだが、嫉妬深く独占欲の固まりの彼に、自分の知らない妻の昔の男の話など逆効果に決まっている。案の定、トニーの眉間の皺は深くなる一方。彼の背後からどす黒いオーラが漂い始めたのに気付いた社員は、慌てて話を変えようとしたが遅かった。
「いやー、それにしても懐かしい。彼女にも会ってみたいですねぇ。スタークさん、どうです?この商談の後、奥さまと一緒にディナーで…も……」
そこまで言って相手はようやく気付いた。この話題は地雷だったと。
青筋を立てながらも怖いほどの笑みを浮かべたトニーは、机の上のファイルを物凄い勢いで閉じると立ち上がった。
「申し訳ないが、この話はなかったことに。君たちの方針と我が社の方針は大きく違うようだ。残念だな」
ニッコリ笑ったトニーだが、その目はちっとも笑っていない。逆に物凄い目力に、商談相手は悲鳴を上げると頭を下げて部屋を飛び出して行った。

その後、裏で密かに出回っている『トニー・スターク攻略法~商談編~』には、『トニー・スタークの前でペッパー・スタークの話は厳禁!』という一文が最重要事項として書かれたとか…。

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