47. Still

帰宅したトニーは玄関をくぐるとため息をついた。いつも飛び出してくる子供たちも、おかえりなさいとキスをしてくれる妻もいない。というのも、ペッパーの母親が体調を崩したため、彼女は子供たちを連れて昨日から実家へ戻っているのだ。
出迎えてくれるのはJ.A.R.V.I.S.しかおらず、しーんと静まり返ったリビングをトニーは見渡した。
「静かすぎる…」
ソファの上にカバンを放り投げたトニーは、キッチンに向かうと冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しリビングへと戻って行った。すると、テーブルの上の携帯電話が軽快な音を立てているではないか。
「もしもし」
慌てて電話に出ると、画面いっぱいに映し出されたのは愛しの子供たちの顔。
「パパ!おかえりなさい!」
「だっだー!!!だー!」
娘が電話を持っているのだろう。画面いっぱいに映し出された彼女の顔の隙間から、必死で映ろうと手を伸ばしているのは息子だ。そしてその後ろでにこにこと眩いばかりの笑みを浮かべているのは最愛の妻。
「ただいま。エストもエリもママの言うことを聞いていい子にしてるか?」
機関銃のように今日の出来事を話す娘と、まだ言葉にすることができないのに何とか注意を引こうと喚く息子の声で、静かだったリビングは一気に明るさを取り戻した。
そのつかの間の賑やかさは、トニーの心の侘しさをすーっと溶かしてくれたのだった。

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