Day1
休養のため1週間の休暇を取ったトニー。
「せっかくだから何処か行けばよかったのに…」
一日中ベッドの中で過ごした後、トニーの胸元に頭を置いたペッパーが不満そうにつぶやいた。
「何だ?不満か?私は君がそばにいてくれればそれで十分だ。それとも、どこか行きたい所があったのか?」
「そういうわけじゃないけど…。家にいたら…」
あなたはすぐラボに篭っちゃうでしょ?言葉には出さないが、口を尖らせているペッパーはそう訴えているように見えた。
(ペッパーめ…分かってないな…。何のために私が1週間も休むと思ってるんだ?)
頭を撫でながら唇を落としたトニーは、ペッパーの顎を持ち上げ顔を上げさせた。
「言ったろ?1ヶ月も君のことを放っておいた埋め合わせはすると…。それに…」
「何?」
ペッパーのオーシャンブルーの瞳の中に期待に満ちた輝きを見つけたトニーは、背後に回した手でペッパーの背中を撫でた。
「君のことをもう1ヶ月以上も抱いてないんだ…。1週間では足りないくらいだよ…」
一瞬目を丸くしたペッパーだが、首を伸ばしトニーの唇に口づけした。
「じゃあ、思いっきり愛して…」
「未来のスターク夫人の頼みなら…しょうがないな…」
トニーは腕の中のペッパーを抱きしめ直すと、その柔らかな身体に再び溺れていった。
*****
腹が減った…。
1ヶ月ぶりにペッパーの身体を味わったものの、空腹感を覚えたトニーは眠れなかった。
身体のことを考えてくれたペッパーが、張り切って夕食を作ってくれたのだが…。今までの食事とは違い、『ヘルシーすぎる』料理をトニーは正直物足りなく感じていたのだった。
そのペッパーはすっかり夢の中。トニーの身体に腕を回し抱きついているため、トニーは動くに動けず我慢していたのだが、腹の虫が大きな音をたてて騒ぎ出し我慢の限界。
ペッパーを起こさぬようベッドから抜け出したトニーは、遥か離れた所に落ちていた下着を身に付けるとキッチンへと向かった。
冷蔵庫の中を覗き込んだトニー。とは言っても、料理はほとんど作れないのだから…。しばらくゴソゴソと冷蔵庫の中を漁っていたトニーだが、冷凍のピザを見つけニンマリと微笑んだ。
「これなら、私でも作れるぞ!」
オーブンにピザを入れたトニーは、鼻歌を歌いながら冷蔵庫からビールを取り出した。
そこへ、運よくと言うべきか悪くと言うべきか…トニーが起き出したことに気付いたペッパーがキッチンへやって来た。
トニーがビール瓶を持っていることに気付いたペッパー。慌ててトニーの元へ走り寄ると、瓶を奪い取った。
「トニーったら!お酒はダメよ!」
見つかった…。ガックリと肩を落としたトニーだったが、さらに追い打ちを掛けるような叫び声が耳に入った。
「ピザ?!ダメでしょ!胃によくないじゃないの!!」
「腹が減ったんだ。少しくらいは大丈夫だろ?」
オーブンからは香ばしい匂いが漂い、トニーの腹がグーっと鳴った。
「ダメに決まってるでしょ!」
目を吊り上げたペッパーはオーブンのスイッチを切ると、扉の前に仁王立ちした。
「じゃあ、何ならいいんだ?!」
空腹のため若干イラついたトニーは、大げさにため息を付いた。
「何って…。…だって…もし…」
言葉に詰まったペッパーは俯き、黙ってしまった。
「ペッパー?」
様子のおかしいペッパー。心配になったトニーがゆっくりとペッパーに歩み寄ると、ペッパーは小さな声でつぶやいた。
「も、もし…またあなたが…あんなに血を吐いて倒れたら…わ、私…」
俯いたペッパーの目から涙がポタポタと零れ落ちた。
「ペッパー…」
しまった…。また泣かせてしまった…。この1ヶ月、散々心配させ泣かせた分、この1週間は笑顔でいさせると決めていたのに…。
トニーは涙を流すペッパーを抱きしめ、顔を胸元に押し付けた。
「あなたのあんな苦しそうな姿…もう見たくないの…。あなたに何かあったら…私…」
涙を隠すように顔をギュッと押し付けたペッパーは、声をあげて泣き始めた。
「大丈夫だ…。ペッパー…もう大丈夫だから…」
子供をあやすように背中を優しくさすり続けるトニー。しばらくしゃくりあげていたペッパーだが、鼻をぐすっとすすると、トニーの胸元から顔を離した。
「…死んじゃうかと思ったの…」
「死んでない…。こうやって君のこと、抱きしめてるだろ?」
トニーは涙で赤くなったペッパーの目を覗き込み、額をくっつけた。
「私のこと置いて…急に遠くへ行ったりしない?」
「あぁ…約束する…」
その言葉に嬉しそうに目を細めたペッパーに、トニーは甘く深い口づけをした。
ペッパーの腰を抱き身体を密着させると、ペッパーもトニーの首筋に腕を回し抱きついてきた。
その甘く柔らかな身体に我慢できなくなったトニーは、そばにあったテーブルの上にペッパーを押し倒すと脚を持ち上げた。
先ほどまでの情事の名残りもあり、ペッパーはすんなりとトニーを受け入れ、甘い声をあげ始めた。
ペッパーを味わうのに夢中なトニーから空腹という文字は消えていた。
腰に足を巻きつけたペッパーを抱えたトニーは、歓喜の声をあげるペッパーの口を塞ぐようにキスをすると、そのまま寝室へと向かった。
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