Wedding Anniversary

「ねぇトニー、今日は早く帰って来てね?」

今日は私たちの結婚記念日。ペッパーは昨日から何やら張り切っていて、今日は休みを取っている。
「何でだ?」
分かっているが、わざと知らぬふり。
「ふふ、内緒。気を付けてね…」
そう言うと玄関先で嬉しそうにキスをして送り出してくれた。

彼女ばかりが張り切っているようだが、私もこの日のためにちゃんと準備している。今日は早めに退社して、頼んであるケーキと大きな花束と共に帰宅。そして彼女を一晩かけて抱いた後、指にそっと指輪をはめる…。
今晩のことを思うと、年甲斐もなく胸がドキドキする。内ポケットに入れた指輪の箱をそっと確認すると、車に乗り会社へ向かった。

夕方、早めに仕事を切り上げ、帰宅しようとした時だ。
「スターク!大変だ!敵が来襲した!」
キャプテンから呼び出しだ。なぜ今日なんだ…。こんな日に勘弁してくれ…。だが、断れるはずもなく、アーマーを装着した私は戦い場へと向かった。

仲間の元へ向かう途中、ペッパーに電話を掛けるが繋がらない。そうこうしているうちに、戦いが始まり、ペッパーに連絡することは出来なくなってしまった…。

敵を倒し、慌てて帰ろうとする私にキャプテンが声をかけた。
「スターク、よかったらみんなで食事に行かないか?」
「すまない。今日は大事な日なんだ…。彼女が…妻が待っているんだ。また今度…」
そう言い残すと急いで飛び立った。すっかり夜はふけ、時計の針は11時を指そうとしている。頼んでいたケーキ屋も花屋もすでに閉まっている。
彼女を呼び出すが、怒っているのだろう、電話に出る気配がない。

タワーに降り、急いでアーマーを脱ぎ捨てる。
「ペッパー!」
部屋の電気は消え、人のいる気配はない。
明かりを付けると、部屋のテーブルには綺麗に花が飾られ、冷やしたシャンパンとグラス。そして彼女の手料理が所狭しと並べられていた。
彼女がいかに今日を楽しみにしていたか痛いほど痛感し、彼女の名前を叫びながらあちこち探し回ると、寝室のベッドで丸くなって眠る彼女の姿を見つけた。
「ペッパー…」
そばに寄ると、その頬は涙で濡れていた。
「すまない…ペッパー…。約束を守らない男ですまない…」
濡れた頬を指でそっと拭い唇にキスを落とすと、閉じられたまぶたがピクっと動き、ペッパーが目を覚ました。
「トニー…おかえりなさい…」
私を見たペッパーは嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔が胸にチクリと刺さる。
「すまない、ペッパー。連絡もせずに…せっかくの結婚記念日を台無しにしてしまった…」
ペッパーは身体を起こすと、頭を下げ平謝りする私の頭を抱きしめた。
「ううん、無事帰ってきてくれて嬉しいわ…。ニュースでやってたの。攻撃が当たって倒れるあなたも映ってたから…。怪我はしてない?」
約束を守らなかった私を責めることもなく、微笑むペッパーを思わず抱きしめる。
「あぁ、大丈夫だ。ペッパー…本当にすまなかった…」
何度も謝る私にペッパーは
「トニー、謝らないで。苦しんでる人達を救うのもあなたの大事な使命なんだから…。それに、まだ1時間あるわ。冷めちゃったけど、食べてくれる?」
笑いながら私の手を取り立ち上がると、リビングまで私を引っ張っていった。

「すごいご馳走だな。作るの大変だったろ?」
隣に座ったペッパーにグラスを渡しながら聞くと、
「大好きなあなたに食べてもらうんだから、楽しかったわ」
とペッパーははにかんだ。
そのペッパーの肩を抱き寄せると、彼女の瞳を見ながらグラスを軽くぶつける。
「では…少し遅くなったが…ペッパー、いつもありがとう。君と結婚できて私は本当に幸せだ。これからも永遠にそばにいてくれ…」
彼女の唇に優しく口付けをすると、ペッパーはグラスをテーブルに置き私に抱きついた。
「私もね、あなたと一緒にいれて幸せよ。ありがとう、トニー。あなたにはいつもたくさんの愛をもらってるわ…。これからもよろしくね」
彼女は耳元で囁くと、私の唇に甘いキス。
そのまま口付けは深いものとなり、甘い身体に溺れていった。

***
あの後、一晩中トニーに愛された私は、翌朝彼の腕の中で目を覚ました。
彼はまだ眠っている。

耳元で彼の寝息を感じながら手を伸ばすと、指にキラキラ光る物が見えた。
顔に近づけると、綺麗な宝石の付いたカワイイ指輪。
手に取り外してみると内側には何か文字が刻まれていた。

”With all my love”

「トニー!」
私が出した大声で目を覚ました彼は、小さく唸った。
「何だ?朝から…。ハニー、おはよう…」
後ろから抱きしめようとする彼の腕を振り切って、くるっと身体を回転させると、目の前に面食らったような彼の顔。
「と、トニー!こ、これ!」
指輪を彼の顔の前に突き出すと
「あぁ、記念日だったからな。私もいろいろ予定してたんだが…実行できたのは君を一晩かけて愛することとその指輪だけだったよ…」
苦笑しながら答えるトニー。
気がつくと目から流れる涙を彼は優しく拭ってくれていた。
「ペッパー…今日からまたよろしくな…」
甘く優しくそれでいて心のこもった愛情たっぷりのキスを身体中に受けながら、私たちはまたシーツの海に溺れていった。

***
社長の中の人夫妻の結婚記念日に…。

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