Exposure

月一回開かれるアッセンボー会…別名ペッパーの手料理を食べる会。今月の参加者はスティーブとブルース。ソーは地球におらず、暗殺者カップルは任務で不参加。
スティーブとブルースは、タワーのペントハウスへと続くエレベーターに乗っていた。
「そういえば、そろそろじゃないか?」
「そうだな。確か再来週あたりだったはず…」
「今度はどっちなんだ?」
「それが、産まれるまで楽しみにしときたい…って、聞いてないらしい」
トニーの愛妻ペッパーは2人目を妊娠中。先月も大きなお腹を抱えていたが、予定日は2週間後だ。
「スタークも2人の子持ちか…」
「父親らしいことをしているスタークは…あまり想像がつかないよな」
ハハハと笑いあっていると、エレベーターが目的のフロアに到着したようだ。

目の前のドアが開き、二人はリビングへと足を踏み入れた。
「エスト!ママに謝れ!」
いきなりトニーの怒鳴り声が耳に入り、二人はビクッと肩を震わせた。
恐る恐る声が聞こえた方を見ると、シクシク泣くエストの目線に合わせてしゃがんだトニーと、そのそばでお腹を抱えながら顔をしかめているペッパーがいた。
「でも…」
「でもじゃないだろ?何でママに向かっておもちゃを投げたんだ?ママだけじゃない。人に向かって物を投げたらダメだろ?」
「…ごめんちゃい…ママ…。えすと、ママにおはなしきいてほしかったの…。ごめんちゃい…」
「エスト、ママもお話聞いてなかったのも悪かったわ…。でもね、お話聞いてってちゃんと言わないと。ママにだけじゃないわ…」
「ママ…ごめんちゃい」
「エスト、いいか。エストがされて嫌なことは他の人にも絶対にしたらダメだ。分かったな?」
「うん、パパ…わかった」

トニーの父親らしい側面を垣間見てしまったスティーブとブルースは焦った。おそらくトニーは、あまり見られたくなかったはずだ…と。
だが、コソコソと隠れようとした二人に気づいたペッパーが
「あら?ごめんなさい、気づかなくて…。トニー、スティーブとブルースが来たわよ?」
と、トニーに声をかけた。二人はとってつけたような笑いを浮かべ、若干気恥ずかしそうなトニーに向かい手を振ったのだった。

その気まずい雰囲気を破ったのはエストだった。
スティーブとブルースの前に走って行ったエストはぴょこんと頭を下げた。
「いらっしゃい、スティーブおじたん、ブルースおじたん」
スティーブはエストを軽々と抱き上げると
「エストちゃん、この間会った時よりまた大きくなったか?カワイイなぁ…。そうだ、エストちゃん、おじたんのお嫁さんになってくれないか?」
と言いながら柔らかな頬にキスをおとした。
するとエストは近づいて来たトニーに手を伸ばし
「やん、えすと、パパのおよめちゃんになるの!」
と、スティーブの腕の中で手足をばたつかせた。
「キャプテン、悪いな。娘は渡さんぞ」
エストを受け取りながらトニーはニヤリと笑った。
「相変わらずだな、スターク」
笑いあった三人だが、エストはブルースの方へ向くと両手を大きく広げて言った。
「ブルースおじたん!はるくすまっしゅ、やって!!」

こ、ここで?!こんな所でスマッシュされたら…壊滅的被害が…。

だが、さすがはブルース。
「エストちゃん、ここですると君のパパに怒られちゃうよ」
と笑って答えた。
「えー、パパ、おこらないよね?パパもはるくすまっしゅみたいよね?」
どうにかしてブルースにして欲しいエストは、トニーに訴えかけたが、
「いや…パパはいつも見てるからいい…」
と、あっさり断られ、
「つまんないのー」
と頬を膨らませた。

エストにトニーはキスをすると、床に下ろした。
「先にあれを渡しとこう…」
トニーはスティーブとブルースをソファーに座るように促し歩き出した。エストもついて行こうとしたが、キッチンから
「エスト、手伝ってくれる?」
とペッパーに呼ばれたため、
「はーい」
と返事をしてパタパタとキッチンへ走って行った。

「エスト…パパたちはお仕事のお話をするから、ママのお手伝い頼むわよ」
ペッパーはエストに小さなエプロンを付けた。
「うん!ママ、まかせて!」
エストは腕まくりすると、台の上に乗って、カウンターを覗き込んだ。
「ママ、おいしそうね…」
返事のないペッパーを不思議に思ったエストが横を見ると、ペッパーはお腹を押さえ顔をしかめている。
「ママ?ぽんぽんいたいの?」
「大丈夫…赤ちゃんが…いたずらしてるみたい…」
大きく息を吐いたペッパーは
「エスト、パパたちにご飯食べれるわよ…って言ってきてくれる?」
と、エストの頭を撫でた。

**

「いつもながら、美味しかったよ。毎月押しかけて悪いなぁ…」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいわ。エストもあなたたちが来るのを楽しみにしてるし…」
一足先に食べ終わっていたエストは、ダミーとジャーヴィスを相手にままごとを始めた。
「だみーとじゃーびすはパパね。トニーよ。あたしはママ。ペッパーね」
「分かりました、エスト様」
(ウィンウィン)
「ままごとかい?かわいいな」
「最近のエストのブームなのよね」
「そうなんだ。幼稚園で大流行りらしい」
ペッパーの腰に手をまわしたトニーは、ペッパーと微笑みあった。
「そうだわ。エストと作ったクッキーがあるから、紅茶でも入れてくるわね」
大きなお腹を抱えて立ち上がろうとしたペッパーをトニーが支えた。
「手伝うよ」
「あら、ありがとう」
二人は手を繋ぎキッチンへ向かった。
「相変わらず仲がいいなぁ…」
顔を見合わせたスティーブとブルースは、何やら盛り上がってきたエストのままごとを観察することにした。

「ただいま(ウィン♪)」
「おかえりなさい」
「今日は…」
と、ここでエストが叫んだ。
「だみー!わすれてるわよ!チューしてよ!」
エストに言われたダミーは柔らかな頬を触った。するとエストは手に持っていたおもちゃのおたまを振り回しながら口を尖らせた。
「もう!ほっぺじゃなくて、おくちにちゅーよ!パパはいつもママのおくちにちゅーするでしょ?」
これにはさすがのジャーヴィスも慌てた。
「え、エスト様…」
「じゃーびすも!ちゅーしたらパパはいうでしょ?『はやくきみをいただきたいよ』って」
「そ、それはそうですが…エスト様、全てお父様とお母様のマネをされなくてもよろしいんですよ?」
さすがはジャーヴィス。やんわりとエストを諭そうとしたが…。
「えー。パパとママがいいの!えすとね、パパとママ、だいすきだから!」

そういう問題じゃないだろう…。
スティーブとブルースは慌てた。
このまま続けさせていいものなのか…と。
早くあの二人が戻って来てくれないかと…。

「どうしたんだ?」
おろおろする二人の頭上から聞きなれた声がした。
振り返ると、トレーを持ったトニーとペッパーが目の前で不思議そうな顔をしていた。
「い、いや…何でもないよ…」
取って付けたような笑いを浮かべたスティーブとブルース。
トニーとペッパーは「ん?」と顔を見合わせた。

「エストちゃんは物覚えがいいんだな?」
ストレートに聞くのもどうかと思ったブルースがやんわり聞くと、
「そうなのよ。やっぱりトニーに似たのかしら…。一度聞いたことは覚えてるのよねぇ?」
とペッパーは嬉しそうに答えた。
いや、だからそうではなくて…とスティーブが言おうとしたその時…

「あん!と、とにーったら…や、やだ…」

たどたどしいが、妙に艶かしい声が部屋に響き渡った。

「「え?!」」
大人4人は顔を見合わせ、言葉を失ってしまったが、ジャーヴィスの声で我に返った。
「え、エスト様?!それは…」
自分の思うとおりに返答がなかったため、エストは頬を膨らませた。
「もう!じゃーびす!またわすれたの?パパみたいにいうの!」
「と、トニー様のように…でございますか?」
「そうよ!パパはね『はにー、がまんできないんだ…』っていうの。そしたら、ママがね『とにー、だめよ…。えすとにきづかれるわ…』っていうのよ。パパは 『だいじょうぶだよ。きみがはやくほしいんだ』っいってね。あたしが『とにー、あたしも…』っていうから…。そしたらね、だみー、あたしのおしりさわって、おくちにチューしてね!」

さすがはトニー・スタークの娘…。一言一句正確に覚えている。
スティーブは顔を真っ赤にし、ブルースは笑いを堪えるのに必死で、あやうくハルク化するところだった。
そしてトニーとペッパーは…。
紅茶のカップを持ったまま固まったトニーの肩を真っ赤な顔をしたペッパーは叩き始めた。
「だからダメだって言ったのよ!!」
「そ、そんなこと言うな。君だって嬉しそうに抱きついてきたじゃないか!」
「大体あなたは昔から場所をわきまえないのよ!」
「何だと?!ペッパー、君もあの後、私のズボンに手を入れ…」
「きゃー!!!もう!またそんなこと言うんだから!!」
段々と言い合いになり始めた二人。
スティーブとブルースは、そろそろ撤収した方がよさそうだと思い、そっと立ち上がろうとした。

すると、
「どしたの?」
両親が喧嘩をし始めたのに気付いたエストが、トコトコと走り寄り、トニーの膝の上によじ登った。
「パパもママもけんかはだめよ!」
エストに気付いた二人は言い合いをやめた。
「エスト、パパもママも喧嘩してないわよ」
「そうだ。話していただけだ」
両親の顔を交互に見比べたエストは、
腑に落ちない顔をしていたが、何か思い出したような表情を浮かべ、トニーの顔を覗き込んだ。
「ねぇ、パパ!おしえて!あのね、どうしてがまんできないの?ママも、あたしも…って。……あ!もしかして…パパもママもおしっこいきたかったの?」
だからそうじゃないんだ…とはさすがに言えないトニーとペッパー。
スティーブとブルースがハラハラして見守っていると、トニーはしどろもどろになりながら
「そ、そんなところだ…」
と、ぼそっとつぶやいた。
エストは目を合わせないトニーをじっと見つめていたが、これ以上聞いても無駄だと思ったのだろうか。
「ふーん。はやくいかないとダメよ…。あ、ママ!あたしもおしっこ!!」
と、トニーの膝の上から飛び降りると、ペッパーの手を引っ張った。
「あら、大変。早く行きましょ…」
これ幸いにと逃げ出したペッパー。
その後ろ姿を見つめながら
「ペッパー、逃げたな…。後でお仕置きだ…」
と、トニーがつぶやいたのを、スティーブとブルースは聞き逃さなかった…。

どうにも気不味い雰囲気となってしまい、耐えきれなくなったスティーブとブルースは
「スターク、そろそろ…」
と、立ち上がった。
「あぁ…。ではまた来月…」
エレベーターまで二人を見送ろうとトニーも立ち上がると、血相を変えたエストがパタパタと走ってやって来た。
「パパ!パパ!ママが…」
「どうした?」
「ママ、ぽんぽんいたいって!パパよんできてって!」
「え!!う、産まれそうなのか?!」
「産まれるって?!予定日は2週間後だろ?!」
「あくまで予定日なんだぞ?そんな予定通りなわけないだろ?!」
慌てふためくスティーブとブルースを残し、トニーはエストとバスルームへ急いだ。

「ペッパー、大丈夫か?」
お腹を押さえうずくまるペッパーの肩を抱きしめると、ペッパーは大きく息をした。
「えぇ…。トニー…産まれそう……」
「エスト。ママな、赤ちゃんが産まれそうなんだ。病院へ行くから…」
「うん!スティーブおじたんとブルースおじたんにいってくる!」
エストが走ってリビングへ向かったのを見届けると、トニーはペッパーの膝下に腕を入れ抱き上げた。
「トニー?!歩けるわよ?!それに重いし……」
「おい、ペッパー、なめるな。私を誰だと思っているんだ?それに…」
トニーは言葉をきり、ペッパーをじっと見つめた。
「な、何?」
真っ赤になったペッパーの唇にキスを落とすと
「愛する君と子供を抱えられなくてどうするんだ?あと5人は増えても大丈夫だぞ?」
ニヤリと笑ったトニーの首元に顔をうずめたペッパーは、小さく頷いた。
そしてその様子をエストがニヤニヤしながら柱の陰から覗き見していたのを二人は知らない…。

そして数時間後…ペッパーは元気な男の子を出産した。

「ペッパー、ありがとう…」
キラキラと朝日の降り注ぐ病室。トニーは腕の中で眠ってしまったエストをソファーに寝かせると、ベッドに起き上がったペッパーの隣に腰掛けた。
ペッパーの腕の中では、産まれたばかりの小さな命がぐっすりと眠っていた。柔らかなダークブラウンの髪の毛と煌めくこげ茶の瞳をしたペッパーによく似た男の子。
「トニー…スターク家の遺伝子はポッツ家の遺伝子よりも強いみたいね」
「そういえば、君にそっくりな赤毛の男の子が足元を走り回る予定だったな」
トニーは苦笑しながら、ペッパーの肩を抱き寄せ頬にキスをすると、ペッパーは幸せそうに微笑んだ。
「ねぇ、男の子だからあの名前でしょ?あなたのお父様の名前を…。それともアンソニーJr.にする?」
「君に『トニー』と呼ばれるのは私だけだからな…」
トニーは産まれたばかりの息子の頭を撫でると、ペッパーの頬に手を当て、柔らかな唇にそっとキスをした。

こうして、スターク家にやって来た待望の男の子は、エリオット・ハワード・スタークと名付けられた。

***
エリオットという名前は、海外の名前メーカーで出てきた名前ですw

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