Blue light 

「あーあー」
小さな手でTシャツ越しにぼんやりと見える光を触る娘。

妻の柔らかな身体に溺れている最中、タイミング悪く起き出した娘。産まれた時からだが、娘は夜半に起き出すと空腹でない限り、母親ではなく父親の私を求める。元々夜泣きをする方ではなかったが、最近は夜もぐっすり眠ってくれ、以前のように妻との甘い時間をゆっくり過ごせるようになっていたのだが…。

「何だ?これが好きなのか?」
顔を覗き込み柔らかな頬を突つくと、彼女は妻にも私にもよく似た大きな青い瞳を煌めかせた。
「だぁ」
少し顔を覗かせ始めた小さな白い歯を見せて、娘は満面の笑みを浮かべた。
「そうか、好きなのか。さすが私の娘だ」
小さな頭にキスをおとすと、娘はくすぐったそうに笑った。

やがてウトウトし始めた娘は、小さな口を開けて大あくび。小さな手で私のTシャツをぎゅっと握り締めると、寝息をたて始めた。

「おやすみ、エスト…」
ベビーベッドにそっと寝かすと、枕元に置かれた彼女のお気に入りのアイアンマンのぬいぐるみの頭を叩いた。
「お姫様をちゃんと見守ってくれよ」

*****
服を脱ぎ、ベッドの中で微笑む妻の隣に潜り込む。
嬉しそうにすり寄ってきた身体を腕の中に閉じ込め、肩から尻にかけて背中を指で撫でると、彼女の口から甘い吐息が漏れ出した。
やがて脚を絡ませた彼女は仰向けになった私の上に乗ると、胸元に手を這わし顔を近づけた。
リアクター周りにキスをする妻。彼女の柔らかく甘い口づけは、いつだって私の心を揺さぶり続ける。
キスをし続ける妻の髪を撫でると、彼女は潤んだ瞳を私に向けた。
「君も好きなのか?」
「君もって?」
「いや、エストが好きらしい」
胸元のリアクターを軽く叩くと、妻は私の肩に手を置き、唇に触れるか触れないかのキスを一つ。
「だって、私の娘だもの」
おかしそうに笑った妻の尻を掴み引き寄せ指を這わせると、白く美しい肌は次第に赤く染まり始めた。
首筋にキスを落とす彼女の前髪を掻き分けると、青い光が彼女の美しい顔を照らした。
「あら?熱くなってるわよ?」
くすっと笑った妻は身体を起こすと、私を愛おしそうに手で包み込んだ。
「知ってるさ。欲しくなったのか?」
彼女の太腿を触るように腰を動かすと、漏れ出そうになった淫靡な声を飲み込むかのように唇をキュッと閉じた。
「ねぇ、トニー…。私ね…これも好きよ…」
恥ずかしそうに微笑んだペッパーは私を掴むと、水音をたてながら腰を落としていった。

*****
「トニー?何作ってるの?」
翌日、ラボに籠っている私の元に、エストを抱いたペッパーがやって来た。
「あぁ、ちょっとな…」
私の目の前にあるウサギのランプを見たエストが文句を言うように手を伸ばした。
「そのウサギ…エストの部屋にあったランプよね?…あら?」
私の隣に腰を下ろしたペッパーは、ウサギの胸元に気付いた。
「どうしたの、これ?」
ペッパーが指さした先にあるもの。それは、小型のリアクターのようなもの。
ウサギから尻尾のように伸びるコードを繋いだ私は、妻の腕にいる娘に手を伸ばした。
「エスト、おいで」
嬉しそうに腕と脚をばたつかせる娘を受け取り、膝の上に座らせた。
「エスト、パパの力作だぞ。…いや、実際はすぐできたが…。これはな、ただのウサギのランプじゃないからな。お前の好きな…ほら、パパのこれと同じだぞ」
私とウサギを交互に見つめていた娘の小さな指が、リアクターに置いた私の指を掴んだ。
「見たいか?」
頬をくすぐると、早く見せろというように娘は机の上を叩き始めた。
「よし。では、付けるぞ…。ジャーヴィス、灯りを落としてくれ…」
部屋の照明が少しおとされたのを確認した私は、ウサギのスイッチを入れた。白く淡い光を放つウサギの胸元は、ぼんやりとそれでも存在感を放つように青い光が輝き始めた。
「だー!あー!」
ウサギのリアクター…実際はリアクターと同じ色の光を放つ電球なのだが…を指差したエストは、目を丸くして大興奮。
両手を振り上げキャッキャッと笑うその姿に、私もペッパーも自然と笑みがこぼれた。

その夜、ウサギのライトを付けてもらったエストは、あっという間に寝入ってしまったらしい。

「トニー、あの子ったら大喜びよ。でも、急にどうしたの?」
寝室に戻ってきたペッパーは、私の隣に潜り込みながら不思議そうな顔をした。
「いや…。ただ…」
彼女にキスをしながら言葉を濁した私だが、ペッパーの顔が曇ったのに気付き慌てて後を続けた。
「いや…その…。エストは君だと寝つきが悪いんだろ?どうやらこのリアクターの光がお気に入りらしい。だから、もし私がいなくても…」
「いないってどういうことよ!」
黙って聞いていたペッパーだが、私の言葉に顔色を変え飛び上がった。
「いなくなるってこと?私たちを置いて…。まさか…死ぬつもり?!」
私に馬乗りになったペッパーは、ポロポロと涙を流しながら私のTシャツの首元を引っ張った。

く、苦しい…。
ど、どうして話がそんなに飛躍するんだ?!

「ぺ、ペッパー…。おい!ペッパー!」
名前を呼んでも気付かない彼女を抱きしめ身体を反転させると、ようやく彼女は大人しくなった。
「ペッパー、最後まで話を聞け。いないと言っても今すぐにではない。今はエストが小さいからと、みんな気を遣ってくれている。たが、これから先、呼び出されれば行かねばならないこともあるだろう。私がいなくても大丈夫なように少しずつ慣らしていかないと…。君の負担も軽減されるだろ?」
私の胸元に顔を埋めているペッパーは、無言で頷いた。よく見ると、肩が小さく震えている。
「ペッパー…大丈夫だ。私は君とエストを置いていなくなったりしない。私が帰るべき場所は、君とエストの元だから…」
彼女の身体をぎゅっと抱きしめ頭に何度かキスを落とすと、顔を上げた彼女は涙で濡れた瞳で私をじっと見つめた。
「約束よ、トニー…。黙っていなくなったりしないでね…」
「あぁ…約束するよ…」

首元の伸びてしまったTシャツ…お気に入りだったんだが、仕方ないか…を脱ぎ捨てると、彼女の大好きな青い光が優しく私たちを包み込んだ。

***
リアクター好きなのは母親譲り

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