閉じていた目をトニーが開けると、ペッパーの笑顔が目の前に現れた。
「目が覚めた?」
ハッピーと話をした後、どうやら眠ってしまったらしい。小さく頷いたトニーだが、先ほどのハッピーとの会話を思い出した。意識が戻ったとは言え、ペッパーと会話らしい会話が出来ていない。自分が今愛しているのはペッパーだけだということを、きっと彼女は分かってくれているだろうが、自分の口から言いたい…。そう考えたトニーは、口を動かした。
「どうしたの?」
トニーの口元に耳を近づけたペッパーは、『すまなかった』という彼の言葉を聞くと首を振った。
「トニー、お願いだから謝らないで。それに、謝らないといけないのは私の方よ。あの時、あなたの話を聞かずに出て行ってごめんなさい。何があってもずっとそばにいるって…あなたのことを支えるって誓ったのに…。ごめんなさい…トニー」
トニーの手をそっと取ったペッパーの目からは涙が零れ落ちた。ゆっくりと手を伸ばしたトニーは、頬に触れると流れる涙を拭った。
「泣くな…」
頬に触れるトニーの手の温もりに、ペッパーの心はみるみるうちに癒されていった。彼の手を両手で包み込んだペッパーはニッコリと笑みを浮かべたのだが、その笑顔に癒されたのもまたトニーも同じだった。
自分の気持ちを伝えなければ…と思ったトニーだが、息をするのさえやっとな彼は、まだ話ができる状態ではなかった。それでもトニーは
「愛してる…」
とやっとの思いで絞り出したのだった。
ようやく聞けたトニーの言葉。その一言で十分だった。
ホワイトとの関係も、彼女を愛していたのかということも、ペッパーの心のどこかにあった疑念も…トニーの言葉とそして彼が戻って来てくれたということだけで十分だった。
新たに浮かんだ涙を拭い取ったペッパーは、トニーの手にキスをした。
「分かってるわ。あなたが愛しているのは私とエストだけでしょ?それに…私も同じ。あなたなしじゃ生きていけないのは私も同じなの。それに、私が愛してるのはあなたとエストだけよ…永遠に…」
ペッパーの言葉に小さく頷いたトニー。
何があっても彼の元に必ず戻ってきてくれる唯一の存在。永遠に引き裂かれるかと思ったが、やはり彼女は戻ってきてくれた…。
元気になったら、ありったけの愛を彼女に伝えよう…。
ゆっくりと手を動かしペッパーを腕の中に閉じ込めたトニーは、目を閉じると彼女から発せられる甘く優しい香りを吸い込んだのだった。