「スタークさん、順調ですよ」
妊娠4ヶ月目の検診。
トニーを巻き込んで大騒動だったつわりも落ち着き、そろそろ仕事に復帰しようかと考えていたペッパーは、その言葉を聞きホッとした。
一方検診には毎回付き添っているトニーは、目を皿のようにしてエコーを見ていた。
「性別って、まだ分からないんですか?」
「5ヶ月くらいで分かる方もいらっしゃいますよ。来月の検診で分かれば、お教えしますよ」
「どうする?ペッパー?」
身なりを整えていたペッパーを見つめるトニー。
「産まれるまで楽しみにしときたいわ…」
「そうだな」
見つめ合う二人をペッパーの担当医である年配の女医は微笑ましく見守った。
「では、また来月…」
「ありがとうございます」
頭を下げ診察室から出ようとするペッパーだが、トニーはまだ話があるのか、医師の方へ振り返った。
「ぺ、ペッパー…先生に聞きたいことがあるんだ…。廊下で待っていてくれ…」
「?…分かったわ…」
頭にクエスチョンマークを付けながらペッパーが出て行ったのを確認したトニーは、咳払いをして医師に尋ねた。
「せ、先生…あの…その…」
顔を赤らめながら照れ臭そうに尋ねるトニーに、医師はピンとくるものがあったのだろう。
「…まだダメですからね…」
クスクスと笑いながら答えた。
「え?!」
なぜ分かったんだ!と言わんばかりのトニーに向かい医師は、
「スタークさん。奥様、つわりもひどかったですし…。もう少し我慢して下さいね。来月には…ね」
ますます顔を真っ赤にするトニーにウインクして答えたのだった。
「ねぇ、トニー。何の話だったの?」
病院を出て車に向かう途中、腕を絡めてピッタリと寄り添うペッパーに尋ねられ、思わずビクっとするトニー。
「い、いや…。何でもない…」
目を合わそうとしないトニーを不思議そうに見つめていたペッパーだが、車に乗り込むといつの間にか眠ってしまった。
「ペッパー…着いたぞ」
すっかり眠りこけているペッパー。トニーがいくら肩を揺すっても目を覚ます気配すらない。
しょうがないな…とトニーはつぶやくと、ペッパーを抱きかかえ寝室へと連れて行った。
ペッパーをベッドに寝かし、ベッドサイドに座るトニー。
頬を優しく撫でていると、寝言だろうか、
「トニー…」
とペッパーが嬉しそうに微笑んだ。
「夢の中まで私か?」
苦笑しながら彼女の横に寝そべり抱きしめる。柔らかな頬に何度もキスを落としていると、眠っているため無意識なのだろうが、ペッパーがトニーの胸元に顔をすり寄せてきた。トニーはペッパーの髪の毛を弄びながら、頭に口づけをした。
頬や首筋に何度か口づけをしていると、ペッパーが
「トニー…もっと…」
と舌足らずな声で囁いた。
一瞬目を覚ましたのかと驚いたトニーだが、寝息が聞こえるため寝言だったようだ。
どんな夢を見ているんだ…と思いつつも、そのペッパーの囁きに、この数ヶ月必死で我慢してきたトニーの中で何かが爆発した。
「悪い、ペッパー…少しだけだから…」
ペッパーの頬を優しく撫でると、唇を奪った。
半開きになっていた口を塞ぎ、彼女の舌を味わうように絡めると、ペッパーも小さな舌で応えてきた。
起きてるのか?と思ったトニーだが、ペッパーはまだ眠っている。
頭の中では、もう一人の自分がいい加減にしておけと警鐘を鳴らしているが、一度火がついてしまった身体はもう止められない。
ペッパーの首筋に何度も唇を押し付けながら、シャツのボタンを一つ二つと外すと、胸の谷間がチラリと見えた。
その胸の谷間に唇を寄せると、
「ん…ぁあ…」
ペッパーの口から甘い吐息が漏れた。
久しぶりに味わうその柔らかい感触と甘い匂いにトニーは胸の高まりを抑えることができず、シャツの間から覗く胸元に手を添えると顔を寄せた。
一方、夢の中でトニーと戯れていたペッパーだが、夢心地だった感触が段々とリアルなものとなってきたため、違和感を覚えパチリと目を開けた。
すると…
「トニー!何してるのよ?!」
眼下にはなぜかトニーの頭があり、そして胸元に顔を埋めているではないか。
ペッパーは思わず自分の上に覆いかぶさっていたトニーを突き飛ばした。
するとトニーは「わっ!」と叫びベッドから転がり落ちた。
ベッドから飛び起きたペッパーがそばにあった鏡を見ると、首筋には無数の赤い花が散っていた。
「ちょっと!トニー!何してたのよ!!」
まさか寝ている間に襲われるとは…。
顔を真っ赤にし、肩を震わせるペッパーの前にトニーは飛んでくると、土下座をし弁明を始めた
「すまない、ペッパー…。君にキスをしていたら、止まらなくなってしまって…。その…つまり…」
目を逸らしシーツの端を掴んで弄ぶトニー。こんなにいじけるトニーの姿は、あまり見られるものではなく…つまり甘えてくれているからで、とても可愛らしいのだが…。要はこの数ヶ月の彼の我慢も限界ってことね…。
さすがはペッパーと言うべきか、病院でのことも何となく想像がついたペッパーは、小さくため息をつくと、背中を丸めしょんぼりと座り込むトニーの背後に回りこみ、後ろからギュッと抱きしめた。
「ねぇ、トニー…」
甘えた声で囁くと、トニーはビクッと肩を震わせた。
「な、なんだ?!」
耳まで真っ赤になっているトニー。その耳元で
「私も…ね…。だけど…もう少し待って…。お願い…」
と、ささやき、耳たぶを甘噛みすると、トニーは
「そ、そうだな!来月には…と先生も言っていたし…。君の身体のためだ…」
と、うわずんだ声で叫んだ。
予想通りの反応にペッパーはニヤリとすると、トニーの正面に回り込み、頬を優しく撫でた。
「その代わり…ね…」
そう言うと、ペッパーはトニーの膝の上に乗ると、首の後ろに腕を回し、頭を抱えるようにして、キスをし始めた。まるで先ほどの仕返しと言わんばかりの熱い キス。トニーもペッパーの背中に手を回し、しばらくキスに夢中になっていた二人だが、突然甘い吐息を吐き出しながらペッパーがトニーから離れた。
自分から仕掛けたとはいえ…これ以上はマズイはね…。ペッパーはやや潤んだ目でトニーを見つめると、
「トニー…続きはまたね…」
おでこにキスを落とし、膝の上から降りた。
「へ?」
ポカンと口を開けてペッパーを見つめていたトニーだが、みるみるうちに顔が真っ赤になり、立ち上がるとものすごい勢いで寝室から飛び出して行った。
「もう!寝てる私にあんなことした罰よ…」
クスクスとおかしそうに笑ったペッパーは、イジメすぎたお詫びに…と、特性のチーズバーガーを作るためキッチンへと向かった。
絶対途中で我慢できなくなってそうですもん・・・