Where the new story begins.

何度も求められ、先に意識を手放したのはペッパーだった。だが、達した瞬間、何故か分からないがトニーはいつもとは違う気がしたのだった。

数週間後。
いつものように求め合った後、寝息を立てるペッパーを背後から抱きしめたトニーだったが、腕の中の温もりがいつもより暖かいことに気がついた。熱でもあるのかと思ったがそうではなさそうだ。不思議に思いながらも眠気には勝てず、トニーも目を閉じると眠りについたのだった。

朝になり、キッチンへ向かったトニーは、朝食の準備をするペッパーを背後から抱きしめた。
「おはよう、ハニー」
いつもなら笑みを浮かべながらキスをしてくるのに、今日は返事がない。不思議に思い顔を覗き込むと、カウンターに手を付いたペッパーは酷く顔色が悪く、額を手で抑えているではないか。
「ハニー、大丈夫か?」
何度か深呼吸をしたペッパーは、無理矢理笑みを浮かべると振り返った。
「えぇ…。少し気分が悪くて…」
心配かけまいとしているのだろうが、青白い顔をしたペッパーはどう見ても大丈夫ではなさそうだ。手を取りそばの椅子に座らせたトニーは、屈み込むとペッパーの目をじっと見つめた。
「疲れてるんじゃないか?最近、遅くまで働いていただろ?今日は会議もないし、休め」
「ただの立ちくらみよ。だから…」
大丈夫と言おうとしたペッパーだが、その言葉を発する前にトニーが口を挟んだ。
「これは君のボスとしての命令だ。今日は一日寝てろ。いいな?」
こういう時のトニーはガンとして譲らない。いや、ペッパーの体調に関して昔から過敏な彼は、結婚してからますます過敏になったと言うべきか…。だが、トニーの言い分にも一理ある。確かに最近仕事が忙しく、休日もない有様だった。仕事がひと段落した今、ゆっくり休ませてもらうのもいいかもしれない。
不安な顔をしている夫を安心させるように、握られた手をゆっくりと撫でたペッパーは、
「分かったわ。今日は家で大人しくしておくわ」
と言うと、トニーの頬にキスをした。

大人しくしておけと何度も念押しするトニーを見送ったペッパーは、朝食の後片付けや掃除をしていたが、ふと目の前のカレンダーを見上げた。何やら指折り数えていたペッパーだが、あることに気がつき顔を輝かせた。
「ねぇ、ジャーヴィス…。もしかして……」
彼女の言おうとしていることを瞬時に理解したジャーヴィスは、素早くペッパーの身体をスキャンし始めた。
しばらくして、ジャーヴィスは高揚した声でペッパーに告げたのだった。
『ペッパー様、これをお聞き下さい…』

夕方になり帰宅したトニーは真っ直ぐキッチンへ向かったのだが、テーブルに並べられた豪華な食事に目を丸くした。
「ただいま…。おい、どうした?今日は何かの記念日だったか?」
「おかえりなさい。トニー、あのね…その…」
ポカンと口を開けているトニーに駈け寄ったペッパーは、もじもじとエプロンを弄び始めた。
顔を真っ赤にし、なかなか続きを話さない妻にしびれを切らしたトニーは、
「何だ?早く話せ」
と、足を踏み鳴らした。これ以上焦らしても夫の機嫌が悪くなるばかり。エプロンのポケットに入れた紙にそっと触れると、ペッパーは大きく深呼吸をした。
「ジャーヴィス、お願い」
『ペッパー様、かしこまりました』
一瞬の静寂の後、室内には心音が響き渡った。鼓動が少し早いのは、相変わらず顔を赤らめているペッパーがドキドキしているからだろう。だがよく聞くと心音は2つ聞こえるではないか。
「おい…ハニー…もしかして…」
大きな目をさらに見開いて見つめてくるトニーに、ペッパーは1枚の写真を差し出した。
「あのね…病院へ行ってきたの。7週目ですって…」
写真に写っているのは小さな丸いもの。写真とペッパーの顔を交互に見つめていたトニーだったが、その顔にはみるみるうちに満面の笑みが広がった。そして目を潤ませた彼は、両手を広げペッパーを思いっきり抱きしめた。
「ぺ、ペッパー!!やったな!子供ができたぞ!!私と君の子供だ!…ん?ちょっと待て。私は父親になるのか?!おい、大変だ!私が父親になるだと…。どうしよう、ペッパー!私が父親になるんだ!」
喜びの後から急に戸惑いが襲ってきたのか、目に嬉涙を浮かべたトニーは、急にあたふたし始めた。だが、相変わらずペッパーのことは硬く抱きしめたままだ。その力強く暖かい腕の中で目を閉じたペッパーは、零れ落ちる涙もそのままに彼の胸元に顔を埋めた。
「トニー、そうよ。あなたと私の子供よ…。私たち、パパとママになるのよ…」
ペッパーの頭を抱え込んだトニーは、繰り返しキスを落とすと身体を離し、まだ膨らんでいないお腹をそっと撫でた。
「ペッパー…ありがとう。ありがとう…」
何度も感謝の言葉を囁いたトニーは、妻の目から零れ落ちた涙を拭うと、言葉では言い表せない気持ちを込めて、嬉しそうに笑みを浮かべるペッパーにキスをした。

トニペパ未来編。妊娠発覚

2 人がいいねと言っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。