「今日は君の誕生日だろ?ディナーを食べに行くから用意しとけよ」
朝、家を出る時には何も言っていなかったのに、昼過ぎにそう言われた私は、まさかそういう展開になると思ってなかったため大慌て。
「でも、何の用意もしてないわ…」
困った顔をした私にキスをしながら、彼は何かを手渡した。
「大丈夫だ。これがある。では、夕方…」
手を振りスキップしながら部屋を出て行った彼を見送った後、手元の袋を覗き込んだ。綺麗にラッピングされた箱には、真っ赤なドレスと靴、そしてジュエリーが一式入っていた。
「トニーったら…」
彼の優しさに自然に笑みを浮かべた私は、夕方のイベントが待ち遠しく、時計ばかり見て過ごした。
***
夕暮れの街の中、彼の運転する車で向かった先は、今大人気の小洒落たレストラン。
「予約していたスタークだが…」
「スターク様、お待ちしておりました。ご準備の方、整っております」
彼に手を取られて用意された席に向かう途中も、なぜかやけに視線を感じる。
しかも、繋がれた彼の掌は心なしか汗で濡れてる。
その横顔をそっと見ると、いつも以上に眉間に皺をよせ口はへの字。
こういう表情の時の彼は、緊張しているんだけど、どうしたのかしら?
「ねえ、トニー。ここって予約取るの大変だったでしょ?」
何で緊張してるの?と聞くわけにもいかず、とりあえずそう聞くと
「いや。そんなことはない。私を誰だと思ってる?」
と、平然と言いのける彼。私は気のせいだと思うことにした。
***
しかし…食事中も口数は少ないし、話しかけてもうわの空。
…今日の彼は絶対に何かおかしい。
「トニー!聞いてるの?!」
生返事ばかりで会話になってない状況に痺れを切らし、思わず声を荒げる。
私を通り越して向こうの方を見ていた彼はその声にビクッと身体を震わせた。
「な、何でもないよ、ペッパー。そろそろデザートかなと思って…ははは」
慌ててそう言う彼の態度に腹が立つと同時に悲しくなってきた。
「何か隠し事でもあるの?私に言えないことが…」
やだ。せっかくの誕生日なのに…せっかく彼とディナーなのに…涙が止まらない…。
「ぺ、ペッパー!そろそろデザートみたいだ!あ、君のキライな…いや、アレルギーだったな…。イチゴは外してもらったぞ。いや、その前にシャンパンでも飲み直さないか…」
ポロポロと涙をこぼし始めた私を見て、ますます慌てふためいた彼は、私のご機嫌を取ろうと必死だ。
「例のシャンパンを頼むよ」
傍にいたウェイターに声をかけ、彼は私の手を取り優しく撫で始めた。
「ペッパー、すごく美味いシャンパンが手に入ったんだよ。きっと君も気に入ると思うから泣かないでくれ…」
5分ほどたった頃…。
「ポッツ様、こちらはスターク様がお選びになった特製のシャンパンでございます」
目の前に運ばれてきたシャンパングラス。
持ち手部分が薔薇の花と赤いリボンで装飾されていて…そして中には…。
「トニー…これ…」
グラスの中に入っているのは、シャンパンとそして…。
「ゆ、指輪?!でも…どうして…」
グラスと彼の顔を交互に眺めていると、彼は頭を掻きながら照れくさそうにつぶやいた。
「定番の演出で悪いんだが…」
そう言いながら立ちあがると、グラスの中から指輪を取り出し私の前に跪いた。
「ペッパー…」
その声に顔をあげ彼の方を見ると、さっきまでの照れくさそうな顔は一変。すごく真剣な表情をし、私の目をまっすぐに見つめる彼がいた。
「ペッパー…いや、ヴァージニア・ポッツさん。君の笑顔が好きだ。君が傍にいるだけで私は幸せなんだ。君のこと、一生大事にする。だから一生傍にいてくれないか?」
どうしよう…まさかこんな突然…しかも誕生日にこんな形でプロポーズしてくれるなんて思いもしなかった。
やだ…早く返事をしなきゃいけないのに、今度は嬉涙が止まらない…。
「ペッパー?返事は?」
うなずくばかりで声が出せない私の手を優しく取り、こぼれ落ちる涙をハンカチでそっとぬぐってくれる彼。
「…私こそ一生離れないから…」
差し出した手に大事そうに指輪をはめてくれた彼に抱きつくと、待ちかまえていたようにぎゅっと抱きしめてくれた。
「やれやれ、こんなに緊張したことはなかったよ…。さぞかし挙動不審だったろうな。君が不審がるのも無理はないよ」
苦笑しながら涙で濡れた私の頬を指先で撫でると、それが合図だったかのように、先程までクラッシックな音楽を奏でていた生演奏の奏者が聞き覚えのある音楽を奏で始めた。
“~and you know you know I love you so you know I love you so(君は知っているよね そう僕は君を愛している 君が知っているように 僕は君を愛している)♪”
「Coldplayの”Yellow”だわ…」
「そう、君の大好きな…」
「もう、トニーったら…。ロマンティックじゃないあなたにしては上出来じゃない?」
私の言葉にニヤリと笑う彼の唇にキスを落とすと
「私を誰だと思ってるんだ?トニー・スタークだぞ?」
そう言うと、熱いキスを繰り返ししてきた…。
***
「ペッパー…みんな祝福してくれているぞ」
「え?」
キスに夢中になっていて気づかなかったけど…気が付くと、他のお客さんやお店のスタッフたちが私たちを囲んで総立ちで拍手喝采。中には動画まで撮っている人まで!!!
「キャー!!!」
あまりの恥ずかしさに真っ赤になって彼の胸に顔をうずめると、彼は楽しそうに笑いながら
「今日は記念すべき日だ!」
とVサインまでするから、店中大盛り上がり…。
そんな中、耳元で「愛してるよ…」なんて囁くんだから…。
もう、トニーったら最後までずるいんだから…。
でもね、最高のプレゼントよ…。
トニペパプロポーズ。ペッパーの中の人の御主人がボーカル&社長の中の人夫妻もファンなのと、私が大好きなグループなので、勝手にトニペパ思い出ソングに捏造