母の日 2014年

両親と疎遠になり数年。それでも毎年母の日には、カーネーションとプレゼントを送っていたトニー。贈り物が届いたと嬉しそうな母親の声を電話越しに聞きながら、5月の第二日曜日は過ごしていたのだが…。

「もうお袋の声は聞けないんだな…」
持参したカーネーションの花束を墓標の上に置いたトニーはポツリと呟いた。
父親と母親が突然他界し5ヶ月。ようやく気持ちの整理がついたトニーだが、突然の両親の他界、そして父親の跡を継ぎCEOとなった彼の身辺は慌ただしく、そして多忙を極めていた。
「親父の跡を継いだんだ。だから忙しくて…。また暫く来られないと思う…」
温もりを求めるように墓標にそっと触れたトニー。もちろん答えなどあるはずはない。手に伝わる冷たさに目を閉じたトニーは、小さくため息を付くと踵を返し車へと戻って行った…。

それから二十数年後…。
「今日は紹介したい女性がいるんだ」
カーネーションの花束を置いたトニーは、繋いだ手を握り直した。
「ずっと秘書をしていたから知ってるだろうが…。ペッパー…いや、ヴァージニアだ。来月、彼女と結婚する」
隣に立つ女性を見ると、微笑んだ彼女はしゃがみ込み、母親の大好きだったバラの花束を置いた。
「お母様、お父様、ヴァージニアです。もう何度もお会いしてますけど…改めてよろしくお願いしますね」
墓標を優しく撫でるペッパーの手をトニーはそっと包み込んだ。その手は温かく、そしてずっと冷たく無機質だった墓標もまるで二人を祝福するかのように温もりを帯びていたのだった。

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