「全然帰って来ないの…」
何やら計器を握りしめ、シクシクと涙を流すジェーン・フォスターを、ベティ・ロスとペッパー・ポッツは黙って見つめた。
「今度は何日?」
「帰って来るって言わなければ良かったのに…」
こそこそと話しているつもりだろうが丸聞こえ。鼻をかんだジェーンは、計器を置き立ち上がった。
「でも、もういいの!彼は帰って来てくれたから。でも…また一週間前ね、いなくなったの。すぐに帰って来るって言ってはいたけど…」
そう、そこなのだ。相手は神様、マイティ・ソー。この間のように「帰ってくるから」と言われても、2年も待たされるのはもう嫌だ。
そういうことね…と、顔を見合わせたベティとペッパーは、ニンマリと微笑んだ。
「閉じ込めちゃえばいいのよ」
「え…」
閉じ込めるとは、つまり『監禁』ということかしら…と、ジェーンがポカンとしていると、妙に目をキラキラさせたペッパーが笑みを浮かべた。
「開発研究費なら心配しないで。神様でも破れない部屋を作りましょ!」
で、一体誰がそれを開発するの?私は天文学者よ?専門外だわ、と心配するジェーンを他所に、科学者と開発者を恋人に持つ二人は盛り上がっている。ただ心配なのは、この件をトニー・スタークに任せると、とんでもないトラップを仕掛けられる可能性があるということだろう。
誰に頼もうかと頭を悩ませている三人の元に、天の声が聞こえてきた。
『そういうことなら、このロキ様の出番だ!』
一番聞きたくない名前が聞こえた気がした。顔を見合わせた三人は慌てて拒否しようとしたが、遅かった……。
気がつけば3人はそれぞれ真っ白な部屋に佇んでいたのだから……。
【トニーとペッパーの場合】
「え?!ここ、どこよ!」
ドアも窓もない真っ白な部屋にポツンと置かれたクイーンサイズのベッド。その上にペッパーは座り込んでいた。
「何だここは!!!」
聞き慣れた声に振り返ると、何も着ていないトニーが全身ずぶ濡れで佇んでいるではないか。
「と、トニー?!」
ベッドからシーツを引き剥がしたペッパーは、慌ててトニーの元に駆け寄ると身体を包み込んだ。
「どうしたの?!どうしてあなたがここに…」
乱暴に髪を拭いたトニーは、シーツを腰に巻きつけると、辺りをジロジロと観察し始めた。
「シャワーを浴びていた。目を閉じ、シャンプーを流し終わった…と思ったら、こんな所にいた。おい、ペッパー、ここはどこだ?」
「恋人を閉じ込める部屋?」
全裸で胡坐をかくトニーの前に、ペッパーはちょこんと座っていた。
先ほどのジェーンとベティとの会話、そしてロキの声がしたことなどの一部始終を語ったペッパーに、トニーはため息をついた。
「閉じ込めておけばいいか…。なるほど…。君と私の場合はあまり関係ないと思うが…」
上目遣いに恋人を見上げたペッパーは、ボソボソと何やら言っている。
「そ、そうよね…。あなたは私の話を聞かずにラボに閉じこもって出て来ないことはあっても、夜には必ず出てきて私と一緒に眠るし、仕事で帰って来れなくても、きちんと連絡くれるし…」
(途中嫌味が聞こえたのは気のせいか?)
どちらにせよ、これがあの悪戯好きなロキの仕業なら、当分はこのままだろう。だが、せっかくの二人きりの空間なのだ。しかも密室。こうなったら、とことん利用させてもらうぞ…。
ニンマリと微笑んだトニーは伸びをすると、ペッパーを押し倒した。目を白黒させているペッパーの服を手際良く脱がせたトニーは、とびっきりの笑みを浮かべた。
「なぁ、ハニー。深く考えても仕方ない。そのうち出られるさ。せっかく2人きりなんだぞ?あるのはベッドだけだ。と、なると…分かるだろ?」
やけにご機嫌なトニー。こういう時のトニーの考えていることはただ一つ。
「…やっぱりそうなるわよね」
いつの間にか何もかも脱がされていたペッパーは、胸に顔を埋めているトニーの髪の毛を撫でると頭にキスをおとした。
「トニー…思いっきり愛して…」
しばらく静観していたロキだが、彼には少々刺激が強すぎた。
二人の息遣い、水音、身体のぶつかり合う音は次第にエスカレートしていき、ペッパーの妖艶な声が言葉にならなくなった頃には、上から覗き見していたロキはすっかり逆上せていた。
「さ、流石は鉄の男…。や、やるな…。あの女も鉄の女なのか?あれだけの技を受け止めるとは…」
一筋の鼻血が流れ落ちたのに気づいたロキは、慌てて綿を鼻に詰めると、別の部屋を見てみることにした…。
【ベティとブルースの場合】
何もない。ドアも窓も何もない。
閉じ込めてと願ったけど、こんなに何もないのは予想外。
あるのはただ一つ。自宅のよりも遥に大きいふわふわのベッドのみ。
「仕方ないわね…」
ため息を付いたベティは、ベッドに上った。だが…。
「や、やぁ、ベティ…」
隣を見ると毛布の山。その中から聞き慣れた声が聞こえてきた。自分の恋人であるブルース・バナーだ。
「ブルース、どうしたの?そんなに潜って…」
四つん這いになり山に近づくと、山はビクっと震えた。
「い、いや…その…。シャツ一枚を羽織った君って…その……」
言われて初めて気が付いた。黒のシャツを羽織っているだけで、他には何も身につけていないと…。しかもボタンは閉まっておらず、胸の谷間はおろか、先までも丸見えだ。
要するに、彼は自分のこの姿に発情し、理性と格闘しているということらしい…。
だが、この部屋はロキが作った空間。それならば、少々無理をしても大丈夫と判断したベティは、悪戯めいた笑みを浮かべると、毛布の山を剥いだ。
「感じちゃった?」
理性と格闘していた割には何も身に付けていないブルースは、真っ赤な顔をしている。
口をパクパクしているブルースを押し倒したベティは、彼の足の間に座ると太腿をすっと撫でた。身体を震わせるブルース。と同時に彼の分身もビクっと震えるわけで…。
「二人きりよ…試してみない?」
硬くなり始めたモノに指を這わせたベティは、先端に音を立てたキスをした。ブルースの息が上がり始め、同時に心臓も激しく鼓動を打ち始めた。
「だ、ダメだよ、ベティ…し、心拍数が……」
だが、ベティは止まらない。普段の彼女からすれば珍しいことだが、たがが外れたのか彼女の行動はエスカレートする一方。
「しー…いい子ね…ブルース…」
両手でそっと包み込むと、ブルースの口から吐息が漏れた。
とは言いつつも、ブルースの心拍数を気にしつつ行為に及んでいる二人。
口の中に広がった証を飲み込んだベティは、荒い息をしているブルースに身体を摺り寄せた。
「続き…いい?」
どこか惚けたブルースはベティと目を合わせると、小さく頷いた。
「まさかあの女が…ああも積極的だとは…。緑の怪物も大変だ…」
ミッドガルドの女性は強く逞しいとあの兄がよく言っていたが、まさにその通りだった。人は見かけで判断してはならないと、心のメモに書き残したロキは、ある意味ライバルの女性を見てみることにした。
「さてと、あの女。泣いてるぞ?兄上は来ない。いくら待ってもな。兄上だけは入れないようにしたんだ…」
【ソーとジェーンの場合】
『帰って来ないなら閉じ込めればいい』と思ったものの、そもそもどこに行ったか分からないのだから、どうしようもない。
ロキのことだ。おそらく他の二組は部屋に閉じ込め仲良くしているのを覗き見し、私は一人なのを笑ってるんだわ…。
「やっぱり来ないじゃないの…」
ベッドの上に座り込んだジェーンは、膝を抱え込むと丸くなった。
そこへ…。
「ジェーン!!!!」
窓もドアもない部屋の壁を破り現れたのは、ソー。
「そ、ソー?!」
どこからもとなく現れたソーに驚いたのはジェーンもだが、こっそりと覗き見しているロキも同じ。
(あ、兄上は入れないようにしたんだぞ!それなのにどうして!!)
ロキが地団駄を踏んでいるのに気づいているのかいないのか、ソーはチラリと上を見上げると、呆気にとられているジェーンに近づいた。
「ジェーンよ、遅くなって悪かった。だが、帰って…」
それ以上言葉はいらなかった。
ソーに駆け寄ったジェーンは黙って彼に抱きつくと唇を奪った。
ただそばにいて抱きしめキスをしてくれるだけでいい。約束なんていらない…私の元に帰って来てくれるだけで幸せなんだから…。
(ロキよ…、言ったであろう。ミッドガルドの女性は気が強くて良いと…)
この光景を見てるであろう義弟に向かって払いのけるような仕草をしたソーは、ジェーンの身体を抱き寄せると腕の中に閉じ込めた。
「見せつけられただけではないか…」
3人のミッドガルドの女性を見たが、形は違えど皆強く逞しかった。
「疲れた…」
覗き見をやめたロキは指をパチンと鳴らすと、昼寝でもするか…と自室へと戻って行ったのだった。
そして件の3組はというと…。
いつの間にかそれぞれの寝室へ戻っていたが、やっていることは普段と全く変わらないため、戻ってきていることにそのまま朝まで気付くことはなかったとさ…。
支部に掲載されたフォロワーさんの漫画の補完です。