ハロウィン 2013年

毎年恒例のスターク社のハロウィンパーティーにやって来たのは、おなじみのアベンジャーズのメンバー。
会場も豪華なのだが、社員とその家族総出のパーティーは、参加人数も半端ない。
あまりに盛大なパーティーに、到着したメンバーは目を丸くした。
「…すごいな…」
「と、とにかくスタークを探そう…」

だが、あまりの人の多さに、どこを探していいかも分からない。入り口で佇んでいたところへ
「あ、トニー、いたわよ!」
と、聞き覚えのある声と足音が聞こえてきた。
現れたのはスターク一家。
仲間の扮装を見たトニーは苦笑い。
「待ってたぞ…。しかし、スゴイ格好だな…。せっかくだから、解説しろよ、キャプテン」
トニーの格好を見たスティーブは、せっかくのハロウィンなのに…と言いかけだが、話を振られたからにはと、仲間の扮装を紹介し始めた。
「そういう君こそ…。まぁ、いい。まずはナターシャは…」
「私はミニスカポリスよ。一度着てみたかったのよね、黒のレザーのミニスカ…。で、クリントが…」
「ナターシャが警官だから、囚人やれって…」
白と黒の囚人服を着たクリントは、手錠をはめられた左手を上にあげた。
「僕は死神だ。一度この鎌を持ってみたかったんだよ」
フードを被って顔の見えない黒ずくめの人物は、声からしてどうもブルースのようだ。
「私は見て分かるだろ?」
両手を広げポーズを取ったスティーブにエストが食いついた。
「みっ○ーだ!」
「エストちゃん、正解だ!君の大好きなミッ○ーだよ?」
「エスト、ダッフィーちゃんがすきなの…」
「え?そうだっけ…」
ははは…と笑う大きなミッ○キーを見上げるエストは、大好きなディ○ニーのお姫様の格好をしている。

「で、なんでソーはいつもの格好なんだ?」
ソーの格好は衣装と言われればそうなのかもしれないが、いつも見慣れているお馴染みの格好をしているソーを皆不思議そうに見つめた。
「ん?美味いものが食える会なんだろ?」
と、ソーはどうやら主旨が分かっていなかったらしい。
「誰も教えなかったのか?」
ため息を付くトニーだか
「そう言うスタークもいつもと同じじゃないか」
とスティーブに言われ顔をしかめた。
「これはかわいい娘からのリクエストなんだ…」
「ちゃんと用意してたんだけど、エストがお友達に自慢したいから、どうしてもアイアンマンになってって言ったのよね」
アーマーを着たトニーに寄り添い頬にキスをしたペッパーは、長いローブを着て、頭には魔女の帽子をかぶっている。そして腕には大きなかぼちゃ…ではなくて、もうすぐ8ヶ月になるかぼちゃの着ぐるみを着たエリオット。
「ペッパーは…大人しめだな…」
その言葉に苦笑するペッパー。実は、ローブの下は、胸元が大きく開き腰の位置まで大きくスリットの入った黒のワンピースを着た妖艶な魔女なのだが、トニーが真っ青になって飛んでくるため、長いローブを着ているのだった。そしてこのローブ、便利なことに抱っこ紐になるのだ。

「そろそろ始まるから、みんな楽しんでくれ」
そう言うと、トニーはエストを抱きあげると、ペッパーの腕を取り挨拶をすべくステージの方へ向かった。

トニーの挨拶で始まったパーティー。
部屋の隅っこで宴会を始めたメンバーだが、まず捕まったのはソーだった。あのアベンジャーズのソーのコスプレ…しかも、かなり本気のコスプレをしていると みんな色めき立ったが、本人だと知るとあっという間にちびっ子に囲まれてしまった。他のメンバーはと言うと、気付かれないのをいいことに、ここぞとばかり に酒を飲みまくっている。

一方のトニーはと言うと…。やはり大人気のアイアンマンはたくさんの子供たちに取り囲まれていた。加えて、少しでもトニーに近づこうと子供たちの母親など女性陣もグルリと彼を囲んでいた。
ということで、エストはトニーに全く近づけない。口を尖らせるエストを
「しょうがないわよ、アイアンマンは人気者だから…」
と、ペッパーはなだめたのだった。
「うん…でも…」
せっかくおめかししたのに…と、口を膨らませる姉を、エリオットは心配そうに見つめている。
「だぁ…」
小さな手に頬を触られたエストが顔を上げると、幼稚園の友達が駆け寄って来るのが見えた。
「あ!エストちゃん!」
「エストちゃんのパパ、すごいね!」
「ほんとにアイアンマンなんだね!」
興奮する友達にエストは鼻高々だった。
「うん!パパはすごいのよ!」
どうしたのかと聞くと、みんなトニーと話がしたいのに、取り巻きの大人たち(主に女性)のせいで話せないとのこと。それなら…と立ち上がったエストは、友達を連れて父親の元へと向かった。

「パパ!」
エストの声に、部下と話をしていたトニーは振り返った。
「どうしたんだ?」
しゃがみこんだトニーは娘と視線を合わせた。
「あのね、エストのおともだちがね、パパとおはなししたいんだって」
エストの後ろには、目を輝かしている子供たちが大勢いる。
「よし、分かった!順番にな?」
ウインクしたトニーは目の前にいた子供を抱き上げた。子供が嬉しそうな声を出すと、その子の母親らしき女性がものすごい勢いで走って来た。
「あ、あの!私も一緒に写真を…」
モジモジと恥ずかしそうにする女性。断ってもいいのだが、エストの友達の母親なのだ。そういうわけにもいかず、結局トニーはたくさんの子供たちを順番に抱き上げ、その母親とも写真を撮る羽目になってしまった。

自分の父親なのに話すどころか触れることもできない。実はトニーが仕事で不在だったため、家族が全員揃うのは一週間ぶりだったのだ。
「パパ…」
少し離れた所でさみしそうにしているエストにトニーも気づいていたが、自分と会うのを楽しみにしている目の前にいるエストの友達を放り出すわけにはいかない。
(エスト、ごめんな)
というように、申し訳なさそうな顔をしている父親。
(パパはアイアンマンなの。みんなのにんきものなの。だからしかたないの…でも…エストもパパとあいたかったのに…)
俯いたエストの目から涙が零れ落ちた。

「あたしのパパなのよ!」
思わず叫んだエストの声に、辺りはしんと静まり返った。
「エスト」
父親の声に顔を上げると、眉間に皺を寄せている父親と、困惑した表情の友達が自分を見つめているではないか。
堪らなくなったエストは、走って会場を出て行った。

会場の外の隅っこのベンチに座ったエストは、涙でベトベトになった顔を拭った。
「どうしよう…パパもママもおこってるよね…。みんな、パパがアイアンマンだから、パパにだっこしてもらいたいんだよね。エストはまいにちだっこしてもら えるけど…。なのに、みんなのまえであんなこといっちゃった…。おともだちもパパもママも…みんなこまってた…。エスト、わるいこだよね…」
再び溢れた涙が膝の上に落ちた。すると、
「そんなことないぞ?」
頭上から大好きな声が聞こえ、エストが振り返ると、そこには父親がいた。
「パパ…」
エストの頭をくしゃっと撫でると、トニーは隣に腰掛けた。どこから話そうか…と、トニーが何か言いかけるその前に、エストはトニーの目をまっすぐ見つめ口を開いた。
「パパ、ごめんちゃい…」
「何で謝るんだ?」
トニーの問いかけに
「だって…エスト…わるいこだったから…」
と口を尖らせたエストは、顔を伏せると話し始めた。
「パパはね、アイアンマンだからね、みんながだっこしてっていうのもね、いいの。だけどね、エスト、さみしかったの…。せっかくパパとママとエリといるのにね、パパとおはなしできなかったから…。でも、エスト、わるいこだよね…。みんな、こまってたもん…」
(なんだ。ちゃんと分かってるじゃないか…)
自分たちが諭す前に幼いなりに自分がしたことを理解している娘。娘の頭を撫でたトニーは笑みを浮かべた。
「そうか。ちゃんと分かってるんならいい。でも、パパもエストとママとエリオットと、あとはそうだな、キャプテンたちも入れてやるか…みんなで酒でも飲みながら楽しみたかったんだ。だから、戻ったらみんなで楽しくやろう。みんな、エストのこと心配してたぞ?」
「うん」
顔を上げたエストの目から零れ落ちた涙を拭うと、トニーは立ち上がった。
「戻ったら、ちゃんと友達に謝れよ?」
「うん!」
赤くなった目でトニーを見上げたエストも元気良く立ち上がった。
「よし、お姫様。アイアンマンが助けに参りました。一緒にパーティー会場に戻りましょう」
大げさに一礼したトニーにエストは澄まして答えた。
「よろしくってよ!」
「どこで覚えたんだ?そんな言葉」
楽しそうに笑ったトニーは、エストを抱き上げると会場へ戻って行った。

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