6月のある日曜日。
朝方までペッパーを抱いていたトニーは、彼女の代わりに枕を抱きしめ熟睡中。そこへやって来たのは、二人の可愛い子供たち。
ベッドに忍び寄ったのは、5歳になるエスト。イビキをかいて眠る父親を首を伸ばし確認したエストはニヤっと笑い、足を忍ばせ部屋を出るとドアをそっと閉めた。ドアのそばで待ち構えていた2歳になるエリオットは、姉であるエストの服を引っ張った。
「ねーね、パパは?」
「パパは、ぐーぐー寝てるわ。ママの言うとおり、当分起きないわよ。エリ、早くママに知らせましょ?」
「うん!」
弟の手を取ったエストは、計画通りねとニヤニヤしながらキッチンへと向かった。
「ママー!パパね、ねんねしてるよ」
キッチンへ向かうと、ペッパーがカウンターに何やら広げ二人を待ち構えていた。
「ママの言うとおりよ。パパ、イビキかいて寝てたわ。ママってパパのこと、何でも分かるのね!」
パパは朝まで頑張ってたからね…とは、子供たちには言えず、ペッパーは苦笑い。
「じゃあ、パパが起きてくる前に作りましょ?」
カウンターへ駆け寄った子供たちは椅子の上によじ登ると、ペッパーの手元を覗き込んだ。
「おはよ…」
大あくびをしながらトニーが起きて来たのは、それから数時間後。昼近くになってからだった。
キッチンではペッパーがコーヒーを飲みながらメールのチェックをしていた。
「おはよ、トニー」
ペッパーの頬にキスをすると、トニーは自分のコーヒーを注ぎ椅子に座った。
「あれ?エストとエリは?」
やけに静かだと思ったら、いつもまとわりついてくる子供たちがいない。
「二人とも部屋で遊んでるわよ」
トニーに朝食兼昼食を用意したペッパーは、微笑むと腰を下ろした。
「そうか…」
久しぶりに夫婦二人きりの朝食。それなのに寂しさを感じるのは、やはり子供たちがいる生活に慣れているからだろう。物足りなさを感じながらもトニーはペッパーとの二人きりの朝食を楽しんだ。
朝食を食べたトニーがリビングでくつろいでいると、パタパタと足音が聞こえ、子供たちがペッパーと一緒に降りてきた。
「あ!パパ!おはよ!」
「パパ、おはよー!」
いつもなら我先に飛びかかってくるのに、今日はその気配すらない。どうしたんだと首を傾げるトニーの前に並んだ二人は、後ろにいるペッパーをチラリと振り返った。
「ほら、二人とも。パパに渡さないと」
ペッパーが背中を押すと、エストとエリオットは顔を見合い、背後に隠していた物をトニーの前に突き出した。
「パパ、今日は父の日でしょ?ママと私とエリからのプレゼントよ」
「パパ、どうじょ!」
差し出された箱には黄色いリボンがかかり、赤いバラが刺してある。
「開けていいか?よし、開けるぞ!」
リボンを解いたトニーが蓋を開けると、そこにはたくさんのクッキーが入っていた。アイアンマンやリアクターの形をしたクッキーの中に、トニーの顔を作ったものもあるではないか。何とも可愛らしいプレゼントにトニーは口元を緩めた。
「すごい出来だな?食べるのがもったいないよ」
箱をテーブルの上に置いたトニーは、子供たちを抱き寄せると膝の上に座らせた。
「ママとねーねとつくったの」
得意げに言うエリオットの額にキスをおとしたトニーに、エストがカードを差し出した。
「あとね、これもよ。エリオットと作ったの」
カードにはトニーの似顔絵とアイアンマン、そして二人からのメッセージが書かれていた。
『パパへ。まいにちおしごともがんばってるのに、エストとエリともあそんでくれたり、ほんをよんでくれてありがとう。パパ、だいすき! 』
子供たちからの言葉を読んだトニーは、目が潤みそうになり、二人をギュッと抱きしめた。
「ありがとう、二人とも。パパもエストとエリのことが大好きだ」
いつまでも離そうとしない父親の力強い腕の中で、エストとエリオットは嬉しそうに顔を見合わせた。
ペッパーが予約していたレストランで夕食を楽しんだ帰り道。朝から張り切っていたエストとエリオットは、後部座席のチャイルドシートで夢の中。
静かになった車内。バックミラーでちらちらと子供たちを確認していたトニーだが、信号待ちの隙に助手席のペッパーの頬を掴むと唇を奪った。
「ペッパー、ありがとう」
「よかった、喜んでもらえて。実はもう一つプレゼントがあるの。でも、家に帰ってからのお楽しみよ」
今宵のことを考え、ふふっと笑ったペッパーにトニーもニンマリ。
「そうか。それは楽しみだ」
ペッパーの手を取り何度もキスをしていたトニーだったが、信号が変わるとはやる気持ちを押さえつけられないとばかりに、家路を急いだのだった。
父の日のプレゼントは、黄色いリボンに赤い薔薇。そして何よりのプレゼントは「家族と過ごすこと」らしいです。
エスト5歳、エリオット2歳