今日はクリスマスイブ。
今年のスターク社主催のパーティには、アベンジャーズのメンバーも招待されていた。
みな、タキシードやドレスで着飾っている中、あの男だけが異彩を放っていた。
「…で、どうしてスティーブはそんな格好をしているの?」
ナターシャが冷ややかな目で見つめる視線の先には、サンタ服(しかもご丁寧にひげを付け、大きな袋まで背負っている)を着たスティーブ。
あのソーですら、フォーマルな格好をしているのに…(隣にいるジェーンにコーディネートしてもらったらしい)。
周りをキョロキョロと見渡したスティーブは、一人だけ恰好が違うことに気付いた。
「おかしいな…スタークに言われたんだ。クリスマスパーティは、クリスマスらしい格好をして来いよと…」
クリスマスらしい恰好って…そういう意味じゃないだろ?!と誰しもがツッコミをいれようとしたその時、
「あ!トニー。みんな来ているわよ?」
やって来たのはこのパーティーの主催者であるトニー・スタークと彼の恋人のペッパー・ポッツ。
ペッパーは白のロングドレスを着ており、その指に嵌められた指輪は、トニーのタキシードの襟元に付けられたピンとお揃いのデザインだった。
「よく着たな…」
にこやかに皆に挨拶していたトニーだが、スティーブを見ると目を見開いた。
「そこのサンタは誰だ?おい、まさか…。いくらじいさんだからって、わざわざサンタにならなくてもいいんだぞ?」
「君がクリスマスらしい恰好をして来いと言うから…」
口をとがらせたスティーブにさすがのトニーも何も言えず苦笑するしかなかった。
そこへ、
「社長!!大変です!!」
社員の一人が真っ青な顔をして慌ててやって来た。
「どうした?」
「そ、それが…」
トニーの耳元に口を当て何事か囁いたその社員。
「社長…本日のメインイベントです…。どうしましょう…」
話を聞き終わったトニーは目を閉じ黙ったままだ。
「どうしたの?」
何も言わないトニーにしびれを切らしたペッパーが社員に尋ねると
「ミス・ポッツ。それが、今日のメインイベントで必要な人物が、雪のため間に合わないと連絡がありまして…」
「え!!大変!!あの人がいないと…。トニー、どうするの?」
うろたえたペッパーはトニーの服の裾を引っ張った。
「どうすると言っても、来られないものは仕方ない」
「でも、代理って言っても…。今から準備するにも…」
状況がまったく分からないアベンジャーズのメンバーは顔を見合わせた。
「ど、どうしたんだ?」
「おい、ソー。天候をどうにかしろ」
「俺?」
「一体誰が来る予定だったんだ?」
見るに見かねたスティーブがトニーとペッパーの元に歩み寄り叫んだ。
「おい、スターク。もし手伝えることがあれば…」
その声に顔をあげた二人。スティーブの恰好を見た二人は目を輝かせた。
「そうだ!」
「そうよ、トニー!!」
「は?」
二人に服を掴まれ目を白黒させるスティーブ。
「スティーブ。君にしかできない…いや、キャプテンにしか頼めない仕事があるんだ」
「お願い、スティーブ。引き受けて?」
トニーとペッパー、二人からしかも上目遣いで頼まれたスティーブは、よくよく話も聞かず首を縦に振っていた。
パーティーのメインイベント…それはパーティー中盤に本場グリーンランドから招待したサンタクロースがそりに乗って登場するというサプライズ企画だった。
「いいか、キャプテン。間違っても『Assemble!!』と叫ぶなよ?」
「スティーブ、いつもみたいに機敏に動いちゃダメよ?サンタクロースなんだからね?」
「分かっているよ、スターク。私にまかせとけ!!」
それが心配なんだよ…と、ハラハラしながらスティーブを送り出した二人だが…やはりスティーブ。
しばらくして、大きな物音と同時に悲鳴が聞こえ、二人はため息をつきながらそっとドアを閉めたのだった。