100万年の幸せ!(2012年社長生誕祭)

5月29日。毎年憂鬱な1日が今年もやってきた。私がこの世に生を受けた日でもあり、その20年後両親を失うという喜びも悲しみも味わう日。

「…疲れた」
そうつぶやくと、トニーはソファーへと身を沈めた。今日は5月29日。トニーの誕生日。先程まで盛大なパーティーが開かれていたのだ。
『おかえりなさいませ、トニー様。今日のパーティーはいかがでしたか?』
何も答えずこめかみに指をあて、疲れ切った様子の主人を気遣うかのようにジャーヴィスが声をかける。
「疲れたよ、ジャーヴィス。世間体もあるし参加したパーティーだからな。みんな祝ってくれているように見えるが、別に心から祝ってくれているわけではないからな」
そう寂しそうに答えると、トニーは目を瞑ってしまった。

本音を言うと、誕生日なんて祝ってもらう柄でもないし、年でもない。20歳の誕生日、両親を失ったあの誕生日。優しい母親と滅多に褒めてくれない父親だったが、失ってからは胸にポッカリと大きな穴が空いてしまった。その穴はどんなに騒いでもどんなに女を抱いても決して埋められることのない心の穴。その胸の喪失感を忘れるかのように、あの年以来、5月29日は浴びるほど酒を呑み、女を抱き、気が付くと5月30日となっていた。だが、彼女が自分の人生に登場してから、5月29日は今までとは違う楽しい日になった。ペッパー・ポッツ。トニーの心の中に唯一住み続けることを許された女性。トニーの心の喪失感を埋めてくれる唯一の人。
パーティーに出かける前、
「今日は大事な用があってパーティーには参加できないの」
と頬にkissして送り出してくれた。…てっきり私が帰る前には戻って来てくれていると思ったのだが…。
「もう寝る」
少々ふてくされ気味にトニーは言い残し、リビングを後にした。そんなトニーの後ろ姿に
『トニー様、これから本当のお誕生日をお過ごし下さい』
とジャーヴィスが嬉しそうに囁いた。

誰もいないはずの寝室の扉の隙間から明かりが漏れているのに気付いた。このセキュリティー万全の我が家に侵入者がいるはずがないと思いつつも、警戒心を抱きつつドアを開けると…
「ペ、ペッパー!!!」
ベッドの上には頭にリボンを付け、シーツ1枚を身にまとったペッパー・ポッツ。ありえない。かのペッパー・ポッツがこんな姿をしているなんて・・・これは 夢だ夢だ・・・私はソファーの上でうたた寝しているんだ…夢なら早く覚めてくれ…こんな夢を見るなんて私は欲求不満なのか…。

「と、トニー…」
気づくとペッパーが不安そうな顔でこちらを見ていた。どうやら先ほど思っていたことが全部声に出ていたようだ…。

「やっぱり、バカげてるわよね…こんな格好してもトニーは呆れるだけだわって私は言ったんだけど、ローディがこの格好で『私がプレゼントよ』と言えばあなたは喜ぶって…」
一気にまくし立てると、ペッパーはシクシク泣き出してしまった。

ローディめ…と内心舌打ちしつつも慌ててペッパーに駆け寄り、シーツごとペッパーの細い体を抱きしめた。
「泣かすつもりはなかった。許してくれ。ただ、驚いただけだ。まさか君がこんな大胆な格好で私の寝室に忍び込んでいるとは思わないからね。好きな女にここまでされて嬉しくない男なんていないさ。さあ、顔をあげてくれ」
そう言うと、ペッパーの目元に残る麗しき雫を指でそっと拭った。
「私が望むのはただ一つ、君のその笑顔だ。君が笑ってずっと側にいてくれれば、私は何も望まない。さあ、私のために笑ってくれ、ペッパー。今日は君がいなくて最悪だったぞ。まさか大事な用とはこの準備ではあるまいな?だったらお仕置きだ。私に寂しい思いをさせたのだからな」
イタズラっ子のようにニヤっと笑い、ペッパーをギュッと抱きしめた。
「と、トニー⁈ お仕置きって…」
目を白黒させて反論するペッパーのくちびるを「黙れ」と言わんばかりに奪い、私は最高の誕生日プレゼントに溺れていった…。

『トニー様ですか?私の口から申すことではないですが…。その後ペッパー様と朝まで仲良くされたみたいで…。いえ、間違えました。今はお昼でございます。お二人ともまだお部屋から出てこられません。申し訳ありませんが、ローズ様、緊急のご用でなければ、日を改めていただけませんか?…では明日。ローズ様、ペッパー様がまさかあなた様のご意見を実行されるとは私も思いませんでした。ですが、ありがとうございます。トニー様も心よりお誕生日を楽しめたことと思います』

アベンジャーズの設定では、パパとママの亡くなった日は誕生日ではないんですよね…汗

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