―今日は何の話を?
…そうだった。息子の話だったな。息子の名前は、アンソニー・エドワード・スタークだ。名前の由来?私のミドルネームが『アンソニー』なんだ。だからそう名付けた。そうだな、トニーと呼んでくれ。
やっとできた跡取りだからな。それは可愛くて仕方ないさ。私と妻の良い所を受け継いでいて、産まれた時も病院一の美男子だったんだ。それに、私に似て頭もいいんだ。生まれてまだ一か月だが、私たちの話していることを全て理解しているんだぞ!…え、気のせいだと?!そんなことはない!一度会えば分かるぞ!
おい!マリア!トニーを連れて来てくれ!
―トニー、かわいいトニー。パパでちゅよ~!見ろ!この賢そうな瞳と顔だち!かわいいだろ?将来が楽しみだ!
…どうした?トニー?なぜ泣くんだ?どこか痛いのか?…!!大変だ!おむつが濡れている!おい!替えをすぐに持ってこい!いや、その前に、カットだ!カット!トニーの泣き顔は世界一カワイイんだ。私とマリア以外の人間が見るのは許さない!もう一度撮り直しだ!!
フューリーが残していった『親父の箱』。
二重になった底からペッパーが見つけたのは、『極秘!見るな!』と書かれた8㎜フィルム。
『見るな』と言われれば見たくなるのは人間の心理。
早速見始めたのだが…。
フィルムを見終わった私たちは顔を見合わせた。これがハワード・スタークか?!
記憶の中の親父とはかけ離れた映像に、何と言っていいか分からず頭を抱え込んだ私に、ペッパーがぽつりと呟いた。
「…ねぇ…。何だかイメージが違うんだけど…」
イメージも何も…。もの心ついた頃には、親父は厳しかったから、こんなデレデレした親父は私ですら見たことない。
「…そうだな…」
何とも言えない顔をして一言発した私だが、ペッパーはニッコリ笑うと私に抱き着いてきた。
「でも、お父様はあなたのことを愛してたのね?よかったわね、トニー」
あぁ、親父は私のことを愛していたさ…。
胸に光る真新しいリアクターにそっと触れた私は、隣に寄り添う最愛の女性を抱き締めた。