「やっぱりここだったか」
聞き慣れた声に振り返ったエイブリーの目に映ったのは年下の元同僚。
「久しぶりだな、ロバート」
隣に腰をおろしたグレイスミスは、エイブリーの横顔を盗み見しながらバーテンダーに言った。
「彼と同じものを…」
しばらく見ないうちに、痩せたか?
顔色の悪いエイブリーの横顔をじっと見つめていると、エイブリーはゴホゴホと苦しそうに咳き込んだ。
大きく息をしたエイブリーは、グレイスミスの視線に気づくと、からかうように言った。
「なんだ。見惚れてるのか?」
その言葉を無視したグレイスミスは、手元のグラスをじっと見つめた。
「ポール…聞いたぞ。体、壊したんだってな…」
どこで聞いたんだ…という様に目をぐるりと回したエイブリーは口の端を少しだけ上げた。
「あぁ…大したことではないんだ。心配するな」
グレイスミスの泣き出しそうな瞳を捉えたエイブリーは、グラスの中身を煽ると、ニヤっと笑った。
その笑顔にグレイスミスも頬を緩めた。
嘘を付いた。
本当は助からないんだ。
だが、彼を傷つけたくなかった。
あの笑顔を守るためなら、俺はどんな嘘でもついてみせるさ…。