クリスマス前
「トニー、大きすぎたんじゃないの?家に入らないわ…」
エントランスにそびえ立つ大きなモミの木。結婚して初めてのクリスマスということで、わざわざ現地まで出向き調達したのはいいのだが…。トニーが選んだ木は大きかった…いや、大きすぎた。
「何だ?大きいに越したことはないだろ?それに、入らなければ玄関を壊せばいい」
腕組みしたトニーはふんっと鼻を鳴らした。
(大きければいいというものじゃないでしょ…。どうして彼っていつもこうなのかしら…)
頭を抱えたペッパーはため息を付いたが、木を搬入してきた業者の声に我に返った。
「何とかして入らないかしら?」
外に飾ってもいいのだが、せっかくトニーが選んだのだ。どうにかリビングに…と業者と相談した結果、結局枝を落とし少しだけ高さを低くすることになった。
「ハニー、これなら…」
振り返ると、トニーの姿はなかった。
「もう!どこに行ったのよ!」
私がこんなに苦労してるのに!と眉間に皺を寄せたペッパーはイライラと足を踏み鳴らしたが、険悪な雰囲気が漂い始めたのに気付いた業者は、あっという間に 仕事を片付けるとそそくさと帰って行った。
吹き抜けの天井に届きそうなモミの木をペッパーが見上げていると、なぜかアーマーを着たトニーがラボから駆け上がってきた。
「トニーったら、どこに行ってたの!」
妻にジロリと睨まれたのも気にする風でもなく、トニーはツリーを見ると顔をほころばせた。
「さすが私が選んだだけある。大きさもピッタリじゃないか!」
(何がピッタリよ…)
今日何度目かのため息をついたペッパーだが、トニーは持っていた箱を彼女の面前に差し出した。
「さぁ、ハニー。共同作業の時間だ!」
トニーが持ってきた箱にはたくさんのオーナメントが入っており、二人は黙々と飾りつけを始めた。手が届かないところはトニーが(そのためにアーマーをわざわざ着たらしい)飾りつけ、30分ほどたった頃には箱の中には大きな星が一つになっていた。
「あとはこれだけね」
ペッパーが巨大な星を手に取ると、トニーが隣に降り立った。
「では…」
ペッパーを抱きかかえるとトニーは宙に浮かんだ。
「きゃ!!ど、どうしたの?!」
急に身体が浮き上がり思わず声を上げたペッパーは、トニーにしがみ付いた。
「ハニー、最後の一つは一緒に飾り付けるんだ」
ニヤリと笑ったトニーは木のてっぺんに近づくと、ペッパーの手を取った。
「さあ、一番高いところに…」
手を伸ばし星を付けると、窓から降り注ぐ太陽の光で、星は輝き始めた。
「ステキね」
ウットリとした表情のペッパーは、顔をトニーの肩口に摺り寄せた。
「ペッパー、一つずつ星を増やしていこうな」
首筋にキスをしながら囁かれたトニーの言葉の意味を理解したペッパーは、頬を緩めるとニッコリと微笑んだのだった。
クリスマス当日
『初めてのクリスマスは二人きりで過ごしたい』
毎年、クリスマスパーティーに出かけていた二人だったが、今年はトニーの言葉通り二人きりで過ごしていた。
数日前からリビングに鎮座するツリーの傍の暖炉の前で、二人は抱き合っていた。そう、文字通り、『抱き合って』いた。
パチパチと薪の爆ぜる音に合わせるように身体の上に掛けたブランケットが揺れており、二人の息遣いのみが部屋に響き渡っている。
やがて艶めかしい声と共にブランケットの山が崩れ落ち、布と布の隙間から二人が顔を覗かせた。
ほんのりと赤く染まるペッパーの身体を抱き寄せたトニーは、汗ばんだ素肌に口づけをした。
「どうだった?」
思いが通じ合ってから幾度となく身体を重ねたのに、トニーは初めて結ばれた後の少年のような瞳をしている。可愛らしくそして愛らしい顔にそっと触れたペッパーは、頬に唇を這わせた。
「あなたって最高ね。悔しいけど、毎回ぞくぞくしちゃう…。で、あなたはどうなの?ミスター・スターク?」
キスをしながらリアクター周囲を触れるペッパーの指遣いに身体を震わせたトニーは、身体を反転させると彼女の華奢な身体を組み敷いた。
「あぁ、最高だ。ハニー、君は最高だよ。私たちは相性がいいんだろうな。どうしてもっと早く君とこうしていなかったんだろうな?」
ニッコリと微笑んだトニーは、さらなる高みへ上るべく、夜通しペッパーに愛を囁き続けた…。