今宵は、S.H.I.L.D.長官であるニック・フューリー主催のクリスマスパーティー。ヘリキャリア内で開催されるパーティーには、 S.H.I.L.D.のエージェントのみならずアベンジャーズのメンバーも参加していた。
ということで、当然トニー・スタークと恋人のペッパー・ポッツの姿もあるわけで…。だが、嫌々参加したトニーは早く帰ってペッパーと二人きりになりたいと 内心思っていたのだった。
ダンスも終わり、酒を片手に料理を摘まんでいたスティーブは、先ほどまで隣にいたトニーとペッパーがいないことに気づいた。
「あれ?スタークたちは?」
キョロキョロと辺りを見回したスティーブだが、二人の姿はどこにもない。
「あぁ…あの二人なら…」
何か言いかけたクリントだが、その言葉を遮るようにナターシャが横から口を挟んだ。
「あの二人なら、下に降りて行ったわよ?」
二人が会場を抜け出したと知ったスティーブは、顔を顰めた。
「これからメインイベントなんだぞ?!まったく…スタークの奴!呼んで来る!」
元々トニーがこのパーティーに参加するのは乗る気ではなかったのを知っているスティーブ。だが、フューリーが半年前から用意していたメインイベントが始まるのに抜け出すなんて…と許せないのだろう。真面目実直な彼らしいと言えばそうなのだが、どうやら彼の選択肢には『そっとしておく』というのはないらしい。肩で風を切り階下へ降りて行ったスティーブに、ナターシャは慌てて声をかけた。
「待ちなさい!スティ……あ、ダメね。もう行っちゃったわ」
間に合わなかったことを気にする風でもなく、悪戯な笑みを浮かべたナターシャをクリントはニヤニヤ笑いながらつついた。
「全くお前も意地が悪いな。ちゃんと説明しないと、キャプテンが誤解するぞ?」
だがナターシャは肩をすくめるとワイングラスを手に取った。
「あら、いいじゃない。面白いもの」
澄まして言うナターシャに、クリントはやれやれとため息を付いた。
あちこち探し回るスティーブだが、トニーとペッパーの姿はない。
「スターク?」
何度か名前を呼ぶが一向に返事がなく、痺れを切らしたスティーブは片っ端から部屋のドアを開けていった。だが、あの二人はどこに姿をくらましたのか、気配すらない。
「全く…どこに行ったんだ!」
頬を膨らませたスティーブだが、ふと顔を上げると少し先の尋問室の方から声がするのに気づいた。
「もしかして、あそこか?」
うっすらと開いたドアからは光が漏れ出している。そっと近づいたスティーブは、聞き耳を立てた。すると…。
「と、とにー…や、やだ…」
妙に艶っぽい声が聞こえ、スティーブは飛び上がった。目を白黒させているスティーブに追い打ちをかけるようにトニーの声も聞こえてきた。
「嫌だと?こんなにしておいて、どの口が言うんだ?」
「ん…」
ドアの隙間から聞こえてきた会話。いくら童貞でも、その向こうで行われている行為については容易に想像できた。
(す、す、スタークとミス・ポッツは…そ、その…ふぉ、フォンデュ?!)
真っ赤になったスティーブは慌ててドアから身を離したが、やはり刺激が強すぎたのだろう。フラフラと後ろに下がると、そのまま気絶してしまった。
何かが倒れる音が聞こえ驚いたのはトニーとペッパー。
部屋から飛び出した二人だが、ドアの前で鼻血を出したスティーブが倒れているのに気付き飛び上がった。
「おい…じいさんはなぜここで寝てるんだ」
何となく状況を理解したトニーをしゃがみ込みスティーブを揺さぶっていたペッパーが見上げた。
「ねぇ、トニー…気絶してるわよ?」
やっぱりな…と鼻を鳴らしたトニーはペッパーの腕を取ると立ち上がらせた。
「全く…どうせ勘違いしたんだろ?」
「勘違いって…」
不安げに見上げてくるペッパーにトニーはニヤリと笑みを浮かべた。
「私たちがセッ○スしてるとでも思ったんじゃないか?」
「せ!?そ、そんな…」
いくらなんでもこんなに人の出入りが激しい場所ではしないということくらい誰が考えても分かりそうなものだが、相手はあのスティーブなのだ。その可能性は 十分に…いや、間違いなくそうだろう…。
途端にあたふたし始めたペッパーを抱きしめたトニーだが、大げさに肩をすくめた。
「じいさんが勘違いするのも仕方ないな。足を固定しただけなのに、君があんな艶めかしい声を出すからだ。それより、その足じゃ歩けないだろ?おぶってやる よ」
身体を離したトニーは、ペッパーに背を向けた。だが、トニーに背負われて会場に帰った途端みんなに冷やかされる光景を想像したペッパーは、慌てて首を振った。
「だ、大丈夫よ」
だが、トニーは眉を吊り上げ声を荒げた。
「大丈夫だと?!腫れてるじゃないか!しかも足を引きずっている。誰がどう見ても大丈夫ではない。そもそもそんなにヒールのある靴を履いてくるからだ。そんな物を履いて走るから足を挫くんだ。いいか?もう二度とそんなにヒールのある靴は履くな。分かったな?」
トニーの言葉はもっともだ。反論できず小さく頷いたペッパーを抱きかかえたトニーは、今だに気絶しているスティーブを跨ぐと、パーティー会場へ戻っていっ た。