The best thing my dad ever made.⑪

その日から早速、モーガンは父親のラボに籠った。父親が作っていた義手の設計図を元にしているが、デザインは一新してみた。きっとパパはこういうデザインが似合うだろうと、モーガンは必死で考えた。それから、少しだけ改良もしてみた。

1週間経った。トニーは順調に回復しており、まだ起き上がれないが、大好きなチーズバーガーも食べることができるようになっていた。
そこでモーガンは、チーズバーガーとドーナツを買うと、完成した義手を持ち、父親の元に向かった。

「パパ、出来たわよ」
鼻歌を歌いながら箱を開けたモーガンだが…。中にはやけに可愛らしい色合いで、しかもカラフルな…いかにも10代の女の子が好きそうな色合いの義手が入っていた。
トニーは一瞬ドン引きしてしまった。こんな派手なのをこれから付けなければならないのかと…。
だが、モーガンは期待に満ちた瞳で自分を見つめているではないか。
気づかれないように溜息を付いたトニーは、これも10代の娘を持った父親の務めかもしれないと思い直すと、娘に告げた。
「モーガン、早速試したいから、起こしてくれ」
「うん」
父親の身体を少しだけ起こしたモーガンは、背中に枕を入れた。そしてパジャマの上を脱ぐのを手伝った。が、包帯の巻かれた父親の身体は傷だらけで、モーガンは胸が痛んだ。
パパはいつまで傷つけられなくてはならないのだろう…。ヒーローからはとっくに引退しているのに、どうしていつまでも辛い目に遭わなければならないのだろう…と。
そして心に決めた。これからは私がパパとママを守ると…。

義手を箱から出したモーガンは、父親の身体の右側に装着した。義手はピッタリだった。黙って指を動かしている父親に、モーガンは不安げに尋ねた。
「どう?」
するとトニーは、真剣な表情で大きく頷いた。
「さすがパパの娘だ。動きもスムーズだし、完璧だ」
自分が作った物に比べると動きは鈍いが、少しだけ軽くなっており、義手の出来栄えに、トニーは内心舌を巻いていた。
やたら派手なデザインであることを除けば、義手はほぼ完璧だった。自分が書いた設計図やデータがあるにしろ、15歳の娘がたった一人で初めて作った義手に、トニーは娘の底知れぬ才能を誇らしく思った。
「よかった」
目標であり尊敬してやまない父親に完璧と言われたのだ。安心したように息を吐いたモーガンは、嬉しそうにニコニコ笑い出した。

と、そこへペッパーが買い物から戻って来た。
「あら?新しい義手?」
トニーの右腕に装着された義手に気づいたペッパーが、開口一番そう口に出した。
「あぁ、そうだ」
頷いたトニーが『モーガンが作ってくれた』と言う前に、ペッパーはプッと吹き出した。
「それにしてもあなたにしては可愛らしい色合いだし、派手すぎない?」
母親の言葉にモーガンが口を尖らせた。あ…っと口を押さえたペッパーに、トニーは眉を吊り上げた。
「おい、ハニー。こんな派手な義手が似合うのは、私しかいないだろ?」
流石のトニー・スタークでも、可愛らしいデザインの義手は正直ミスマッチなのだが、せっかく娘が作ってくれたとトニーも思っているのだろう…と、ペッパーも神妙な顔をして頷いた。
「そうね。あなたはそれくらい派手な方が似合ってるわ」
が、モーガンはまだ口を尖らせている。
確かに60近い父親にこの色合いは大丈夫なのかと自分でも思った。だが、退院すれば父親は自分で義手を作るだろうから、この義手はそれまでの仮の物だ。
『あたしがパパの右のおててになってあげる』
小さすぎて覚えていないが、父親が右腕を切断した時、そう言って父親を励ましたらしい。その思いは11年経った今でも変わっていない。だから、せめて入院中、ずっとそばで支えているという思いを伝えたくて、敢えてこのデザインにしたのだ。その思いを伝えるべきかモーガンが迷っていると、トニーは真新しい義手を撫でた。
「確かに前の義手よりは派手だが、モーガンがパパのために考えて作ってくれたことが、パパは何より嬉しいんだ」
父親の言葉に、モーガンは上目遣いで見つめた。
「ホント?」
「当たり前だ。まさかモーガンが作ってくれた物を使える日が来るなんて、夢にも思ってなかったさ。生きていてよかった」
そう言いながら笑ったトニーは心底嬉しそうで、父親の笑みにようやくモーガンは安心した。

⑫へ・・・

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