「On Your Side Forever」カテゴリーアーカイブ

On Your Side Forever⑪

「会社から電話だ。君の携帯を鳴らしても繋がらないと、俺にかかってきた」
日曜日の朝食兼昼食を食べながら、トニーは自分宛てに掛かってきた電話についてヴァージニアに説明した。
「用件、聞いた?」
トニーの焼いたふかふかのホットケーキを頬張ったヴァージニアは首を傾げた。確かに自分が電話に出ない時は、皆トニーに電話をする。だが今日は日曜日だ。余程のことがない限り、日曜日に電話がかかってくることはないはず。
「あぁ…」
用件を聞いたはずなのに、トニーはなかなか切り出そうとしない。
「何?」
早く話してと眉を吊り上げると、渋々といった様子で話し始めた。
「デートのお誘いだ。○△社の社長が、今夜食事に行かないかと言ってきたらしい」
道理で口ごもるはずだ。他の男とのデートの仲介役など引き受けたくはないだろう。そう思ったヴァージニアは
「行かない」
と即答したのだが、予想外にもトニーは顔を顰めた。
「だが、○△社はうちと取引もある。今後も大手の取引先になるだろう。だから君と向こうの社長が親しくなれば、ビジネス上では都合がいい」
つまりデートして来いということなのだろうか。向こうの言う『デート』がどういうことか、トニーが一番よく分かっているはずなのに…。
「行けっていうの?きっと向こうは、さっきまで私たちがしてたことが目的なのよ?」
ナイフとフォークを乱暴に置いたヴァージニアは、目をくるりと回した。
眉間に皺が寄り始めたヴァージニアは、今にもキレそうだ。勿論トニーだって彼女を他の男とデートさせたくない。だが、これはビジネスなのだ。ビジネスにおいて必要ならば、自分の私情は挟むことはできない。それに、ただの食事会と思えばいいんだと、トニーは必死で感情を抑え込んだ。
「…仕事だと割り切って、せめて食事だけでも…」
が、ヴァージニアは違った。彼女もこれがビジネス上必要なことだと分かっていた。だが、他の男性と2人きりで食事をするのだ。それに食事だけで済めばいいが、その先に発展する可能性も0ではないのだ。勿論そんなことは断じて許さない。そういう雰囲気になっても絶対に断るつもりだ。だがヴァージニアとしては、トニーに『行くな』と止めて欲しかったのだ。
「あなたは平気なの?私が他の男とセックスしても?」
金切り声を上げたヴァージニアに、トニーも反論した。
「セックスだけがデートじゃないだろ?大体何で食事とセックスがセットなんだよ」
食事だけのデートもあると分かっている。だが、今までの経緯から考えると、おそらく向こうは自分のことを朝まで過ごせるオンナとしか思っていないだろう。いや、それが目的で誘ってきているに違いない。だからこそ、トニーには止めて欲しかった。それをトニーが分かってくれないことがヴァージニアは悲しかった。
「あなたは私の気持ちよりも仕事の方が大事だっていうのね!もういいわ!」
テーブルをバンと叩いたヴァージニアは立ち上がると、バタバタと部屋へと向かった。
後に残されたトニーはため息を付くと、頭を抱えた。

***
結局ヴァージニアはデートへと向かった。
トニーとデートする時に着ようと数日前に購入したプラダのワンピースは、胸元が大きく開き、大きく入ったスリットからは太腿が丸見えで、どう見ても誘っているようにしか思えないヴァージニアに、相手の男性は興奮しっぱなしだった。
食事を終え、バーへ移動する頃には、男性は舐める様な視線をヴァージニアに送り続けていた。
「ミス・ポッツ…どうだい?この後、朝まで飲み明かさないか?」
露わになった太腿を撫で回している男性は、酒臭い息を耳元に吹きかけてきた。
どうせ今夜は帰っても、トニーと喧嘩するだけだ。それに、このまま彼と寝れば、トニーも少しは嫉妬してくれるかもしれないと考えたヴァージニアは、男性の手を取ると立ちあがった。

店を出ると見慣れた車が停まっていた。頼んでいないのにどうしてハッピーがいるのかと不思議に思ったヴァージニアだが、車のそばに立っている人物に気が付くと、はっと息を飲んだ。
「トニー…」
驚いたことにトニーがいたのだ。
いつもより上等なスーツを着た彼は、先日ヴァージニアがプレゼントしたネクタイを締めていた。
仏頂面のトニーはヴァージニアを見つめると深々と頭を下げた。
「ミス・ポッツ、デートの邪魔をして申し訳ありませんが、至急お戻り下さい」
そう告げたトニーは、呆気に取られる男性を残し、黙ったままのヴァージニアの手を引っ張った。

後部座席にヴァージニアを押し込んだトニーは隣に座ると、ハッピーに車を出すよう告げた。
車が走り出しても、トニーは黙って窓の外を眺めているだけだ。沈黙に耐え切れなくなったヴァージニアは、仕方なく自分から切り出すことにした。
「何よ。彼とセックスして来いって言ったでしょ?」
ヴァージニアの方を振り返ったトニーは、彼女をじっと見つめた。
「食事だけして来いと言ったつもりだ」
トニーは今までヴァージニアが見たことない程、冷たい目をしていた。人を射抜くような視線に、ヴァージニアは初めて彼のことを怖いと思った。
怖いほどヴァージニアを見つめていたトニーだが、彼女の腰を突然引き寄せると、そのまま唇を奪った。
トニーの舌が入ってきた。逃げ惑うヴァージニアを捉えた彼は、彼女の頭を抑え込んだ。息が出来ない程の激しく乱暴なキスにヴァージニアはトニーの胸をポカポカ叩き始めた。
程なくして、トニーが唇を離した。銀色の糸を引きながら離れた唇は、お互い持って行き場のない気持ちのためか震えていた。
デートして来いと言ったのにどうして彼がこの場にいるのか…どうしてこんなにも怒っているのか、ヴァージニアは頭の中が混乱してどう言葉を発すればいいのか分からなかった。
黙ってトニーを見つめていると、彼は腕を伸ばしヴァージニアを抱きしめた。
「お前は俺のオンナだ。他の男に渡すわけないだろ!」
え?と思ったヴァージニアを、トニーはぎゅうぎゅうと抱きしめた。
「あー、もう!仕事なんてクソくらえだ」
その言葉で、今回のことも仕事だとトニーが我慢していたことにようやく気付いたヴァージニアは、目を丸くした。彼は根っからの仕事人間だと思っていたし、私情よりも仕事を優先させる人だと思っていた。その彼からそんな言葉が発せられたのだから、ヴァージニアは驚きっぱなしだった。
「トニーでもそんなこと言うの?」
身体を離したトニーは、バツが悪そうに鼻の頭を掻いた。
「俺が今日1日、嫉妬で気が狂いそうだったのを知らないのか?」
(トニーが嫉妬してた?!)
10歳も年上で大人な彼が嫉妬してくれていたという事実に、ペッパーは顔を輝かせた。
「嫉妬してくれたの?」
トニーににじり寄ったヴァージニアは、喜びを隠し切れないといった風でニコニコしているではないか。
ここは素直になった方がいいだろうと、トニーは正直に胸の内を話すことにした。
「当たり前だ。俺だって人間だ。俺のオンナが他の男と2人きりで食事してるんだぞ?居ても経ってもいられなかったから、ずっと店の前で見張ってた。あいつ、お前の身体にベタベタ触りやがって…。お前に触っていいのは俺だけだぞ?」
嫉妬なんてしないと思っていたトニーが嫉妬していたということだけでも嬉しいのに、心配で後を付けていたというのだ。
「嬉しい!」
と叫んだヴァージニアは、トニーに飛びつき思いっきりキスをした。
キスをしながらトニーは先程の男が触れていた太腿へ手を滑らせたのだが、彼は重大な事実に気付いてしまった。
「おい、この服…ノーパンなのか?!」
唇を離したヴァージニアは、悪戯めいた視線をトニーに送った。
「だって、下着のラインが見えちゃうもの。それに、このドレス、本当はあなたとのデートで着ようと思って買ってたの。下着を付けてないと、何かと便利でしょ?でもあなたを嫉妬させたくて今日着ちゃったの」
勝ち誇ったように告げるヴァージニアに、トニーは苦笑い。
「君の作戦は大成功って訳だ。それに、便利だな、確かに」
すっとドレスの裾をたくし上げたトニーは、そのまま座席にヴァージニアを押し倒そうとしたのだが…。

「ポッツ様、トニー…家に帰ってからにしてください」
白けたハッピーの声に我に返った2人は、慌てて座りなおした。

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On Your Side Forever⑨

2人が恋人となり、1ヶ月が経った。
トニーが作った夕食を食べた2人は、リビングのソファーの上で抱き合いキスをしていたが、頃合を見計らってトニーがポケットから小さな箱を取り出した。
「そうだ。ジニー、プレゼントがあるんだ」
箱の中に収まっていたのは、真っ赤なルビーの輝く可愛らしい指輪だった。
どうして急に指輪をくれたのかと目をぱちくりさせているヴァージニアに、トニーは申し訳なさそうに告げた。
「付き合い始めて今日で1か月だろ?君が持っているものに比べれば、こんなもの、大したことないかもしれないけど…」
恋人になって1ヶ月の記念の指輪。
大したことないなんてとんでもない。彼が自分のために選んでくれたということだけでも嬉しくて仕方ない。初めてのプレゼントに、ヴァージニアは目を輝かせた。
「ううん、凄く嬉しいわ!ありがと、トニー!」
早速指輪を嵌めたヴァージニアは、顔中にキスをし始めた。
キスを受けながらトニーは一人考えていた。

本当は結婚して欲しいと言いたかった。だが、彼女の社会的立場を考えると言えなかった。
彼女はきっと結婚を申し込めば喜んで受けてくれるだろう。だが、周囲はきっと反対するはずだ。彼女はCEOとして、それなりの立場の人間と結婚すべきだ。もし自分がスターク・インダストリーズのCEOだったら、彼女との結婚も反対されないだろうか…。いや、もしそうなら、そもそも彼女と出会いこうして愛を育むことも出来なかっただろう…。

いつか、彼女にプロポーズできる日がきますように…と、トニーはヴァージニアを抱きながら祈るしかなかった。

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On Your Side Forever⑦

「あなたのセックス…最高ね」
トニーの胸元に顔を摺り寄せたヴァージニアは、上目遣いに彼を見つめると、瞳を瞬かせた。
「そうか?」
今まで関係を持ったどの女性からも言われたことのないセリフに首を傾げたトニーだが、彼女は真剣そのものだった。
「えぇ。こんなに幸せな気持ちになったの、生まれて初めてよ…。私…もう、抜け出せないかも…」
最愛の女性の口から紡がれた言葉にトニーは照れたように鼻の頭を掻いた。
頬を赤く染めた彼は可愛らしく、キスをしよう身体を動かしたヴァージニアだが、トニーが放ったものが太腿を流れ落ち、彼女も頬を赤らめた。
可愛らしい反応に堪らなくなったトニーはヴァージニアを腕の中にぎゅっと閉じ込めた。
「俺も、今、人生で一番幸せだ。親父とお袋が突然死んで、何もかも失って…俺の人生はこのまま終わるのかと思ったこともある。一人もがき苦しんだこともある。でも、君の笑顔はいつも俺のことを救ってくれた。この15年、君は俺の心の拠り所だった。それが今は俺の腕の中にいる…。こんなに幸せなことってあるか?」
その言葉にヴァージニアは思わず顔を上げた。トニーはこの15年、どれだけの孤独と戦っていたのだろう。
だが、自分と共にいることで彼がその孤独から抜け出せるのなら、どんなことでも受け入れよう…。
「トニー、私がそばにいるわ。あなたはもう一人じゃない…。私がずっとあなたのそばにいるから…」
彼の顔を両手で包み込んだヴァージニアは、ニッコリと微笑んだ。真っ直ぐで意志の強い瞳こそ、トニーが愛したヴァージニアの魅力の一つだった。
「あぁ…ジニー…。俺も君のこと…絶対に離さない…」
ヴァージニアを抱きしめたまま身体を反転させたトニーは、再び彼女に愛を囁き始めた。

***
翌朝、ヴァージニアが目を覚ますと、隣はもぬけの殻だった。
「トニー?」
床に落ちていた彼のシャツを羽織ったヴァージニアが寝室を出ると、香ばしい香りが鼻孔を擽った。誘われるようにキッチンへ向かうと、テーブルには豪華な朝食が並んでいた。
「おはよう、ジニー」
ヴァージニアにキスをするとトニーは彼女の好きな紅茶を手渡した。
「ありがと」
首を伸ばしトニーにキスをしたヴァージニアは、目の前の朝食を見ながら鼻息荒くトニーに告げた。
「私もお料理習うわ。あなたに美味しい朝食を作ってあげたいから」
彼女には壊滅的に料理の腕前がないことを知っているトニーは思わず苦笑い。
「期待しないで待ってるよ」
ニヤニヤ笑うトニーに、ヴァージニアは口を尖らせた。
「なにそれ、トニーッたらひどい!」
ぷうっと膨れたヴァージニアは可愛らしく、何気ない朝の風景だが、2人は幸せいっぱいだった。

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