On Your Side Forever⑫

半年も経つと、メディアは急に大人しくなったヴァージニアの異変を騒ぎ始めた。パーティーに出席しても早々に真っ直ぐ帰る彼女の様子に、ついに特定の恋人が出来たのかと、一斉に書き立てた。だが、その恋人が秘書であるトニーだとは誰も気づいていなかった。

そんなある日のことだ。
社長室でヴァージニアと書類整理をしているトニーの元に、受付から電話が掛かったきた。
「スタークさん、少しよろしいですか?」
「どうした?」
「社長にお客様なんですが…それが…」
訪問客の名を聞いたトニーは顔を顰めた。
「分かった。すぐに行く」
電話を切ったトニーは、ふぅとため息をついたが、心配そうなヴァージニアの視線に気づくと笑顔を作った。
「ミス・ポッツ。トラブルがあったようで…。申し訳ありませんが、少し抜けます」
ヴァージニアが何か言う前に、トニーは部屋を出て行った。

訪問客はあのアルドリッチ・キリアンだった。
実はあの事件の後、キリアンはしつこくヴァージニアに会おうとしていた。が、再び彼女が傷つくことを恐れたトニーが、AIMの人間からの連絡は受け付けるなと命令していたのだ。

受付の前には、キリアンと数人の部下がいた。受付嬢に何やら喚いている彼に、トニーは足早に近づいた。
「申し訳ないが、お引き取りを。社長はあなたたちにはお会いになりません」
毅然とした態度を貫くトニーに、キリアンは不機嫌そうに詰め寄った。
「よお、スターク。俺は彼女の大勢いる恋人の一人だぞ?恋人に会いたいと言ってるんだ。そのどこが悪いんだ?」
「ですが、社長はあなたに会いたくないと言われています。お引取りを」
トニーにぐいと顔を近づけたキリアンは、ニタニタ笑いながらトニーの耳元で囁いた。
「あのオンナ、なかなかの上物だぞ?あの日のこと、知ってるか?彼女、俺達5人と同時にセックスしたんだぞ?」

トニーの脳裏にあの日のヴァージニアの姿が蘇った。ボロボロに傷つき、一日中泣き続けた彼女の姿が…。
目の前の男のせいで、彼女は心に傷を負った。それを彼は武勇伝のように話している。
許せなかった。彼女を傷つけ笑っているキリアンに、トニーは怒りがこみ上げたきた。ぐっと拳を握りしめたトニーだが、感情を抑えるより先に、手が出てしまった。

バキッ!

鈍い音がし、キリアンが床に倒れた。
トニーがキリアンを殴ったのだ。
「帰れ!これ以上ジニーに近づくな!」
いつになく感情露わに叫んだトニーに、その場は静まり返った。
起き上がったキリアンは血が流れ落ちる口を拭うと、ははっと笑い声を上げた。
「おいおい、お前、彼女のことが好きなのか?!身分違いもいいところだな!いや、お前も一応お坊ちゃんか。元御曹司だもんな!だが、お前みたいな小物、彼女が相手にする訳ないだろ?」
怒りに震えるトニーをからかうキリアンだが、騒ぎを聞きつけたハッピーが、複数の警備員を引き連れやって来たのを見ると立ち上がりトニーに近づいた。
「彼女に伝えろ。あの日の動画を持ってるって。ばら撒かれたくなければ、今日の19時に指定した場所に来いと。場所は後でお前にメールする」
トニーの肩をポンっと叩いたキリアンは、部下を引き連れ出て行った。

部下の1人にキリアンたちの後を付けるよう命じたハッピーは、トニーの元に歩み寄った。
「トニー、警察に連絡を…」
だが、トニーはハッピーを制した。
「いや、言うな。言えばあの事件のことで社長も事情を聞かれる。それと、今の話、彼女には言うな」
不満げなハッピーの背中を叩いたトニーは、ざわつく周囲を落ち着かせようと手を叩いた。
「よし、終わりだ。引き続き、彼らからの連絡は受け付けないでくれ。それから、対応できなければ、すぐに私に言ってくれ」
トニーの言葉に一同は頷くと、それぞれの仕事へ戻っていった。

(何とかしなければ…。ジニーが再び傷つく前に、俺が何とかしなければ…)

社長室へ戻ると、ヴァージニアが飛び出して来た。
「トニー、下で何かあったの?」
幸いにも、先程の騒ぎの内容は、彼女の耳に入っていないようだ。笑みを作ったトニーは
「何もありません。ところで、ミス・ポッツ。今日の夜は大人しく家にいて下さいね」
と、告げたのだが、ヴァージニアはクスクスと笑い出した。
「トニーったら、私が遊びまわってないのはあなたが一番よく知ってるでしょ?あなたに毎晩抱かれてるんだから、そんな暇もないけど」
確かにそうだ。この半年、2人は毎晩共に眠っていた。パーティーや会合でどんなに遅くなっても、そして出張先でも、余程のことがない限り、2人は抱き合い眠っていた。それはヴァージニアがトニーが隣にいないと眠れないと言うから…。だがトニー自身も、彼女が隣にいなければぐっすり眠れなくなっていたのだ。
何やら考え込んでいるトニーを元気づけようと、ヴァージニアはギュッと抱きついた。
「今日は早く帰れそうだし、2人でピザパーティーをしましょ?映画でも見て、2人でゆっくり過ごすの。その後、たくさんセックスして…。いいでしょ?」
抱きついてくる彼女は、男の自分とは違い、壊れそうなくらい華奢だ。
(ジニーのことは、絶対に俺が守る…)
心の中でそう決意したトニーは、腕の中に彼女を閉じ込めると、頭にそっと口付けした。

R-18な⑬へ…
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