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Once upon a time…③

料理上手な姫はブラックウィドウに代わり、家事一切を引き受けることになりました。毎日美味しいと残さず食べてくれるのは嬉しく、姫は料理の腕前をどんどん上げていき、料理本でも出版しようかしらと考えていました。

そんなある日のことです。
「絶対に、絶対に、知らない人が来てもドアを開けてはいけないよ」
キャプテンたちが国境の警備のため、数日家を離れることになりました。今までは誰か1人が護衛にと残っていたのですが、今回は6人全員が不在…つまりヴァージニアは1人で留守番することになったのです。
何度も何度もしつこいくらい念押しするキャプテンに、ヴァージニアは笑顔で答えました。
「大丈夫です。決してドアは開けませんから」

キャプテンの言いつけ通り、ヴァージニアは新作の料理を考えたりと、家の中に篭っていました。ですが、そんな生活も3日もすれば飽きて…いえ、料理をしようにも材料が尽きてしまいました。庭には野菜や果物が沢山植えてあるのですから、森の中にさえ入らなければ大丈夫だとヴァージニアは考えたのです。
「お庭になら出ても大丈夫よね?」

そっとドアを開け辺りを見渡しましたが、特に変わった様子もありません。安心した姫は籠を片手に庭の畑へ向かいました。
「そこの可愛いお嬢ちゃん。美味しい果物はいかが?」
庭で野菜を採っていると、背後から声を掛けられ、ヴァージニアは飛び上がりました。
いつの間に来たのか、大きな籠を背負った一人の老婆がすぐ側に佇んでいたのです。真夏なのに漆黒のローブを被った老婆は、見るからに怪しい人物です。小さい頃から『知らない人と話をしてはいけません』と躾られているヴァージニアですから、彼女は老婆を見なかったことにしようと、無言で立ち上がり横を通り抜けようとしました。が、どこにそんな力があるのか、老婆はあり得ない程俊敏にヴァージニアの腕を掴みました。
「お嬢ちゃん、冷たいねぇ。でも、あんたは可愛らしいから、良いものをあげよう」
そういうと、老婆はポケットからイチゴを取り出しました。
「知らない方から物をもらってはいけないと言われているんです。ですから遠慮しておきますわ」
断っても老婆は掴んだ手を離そうとせず、イチゴをヴァージニアに食べさせようとします。

実はこの老婆、マヤ王妃が変装していたのです。ヴァージニアを始末し損なったキリアンは、やむを得ず動物の心臓を持って帰り、姫を始末したと告げたのです。これで自分が一番だと喜び勇んで鏡に尋ねた王妃ですが…。
『森の中でアベンジャーズと暮らすヴァージニア姫です』
とジャーヴィスは答えたのです。始末したと思っていたヴァージニアが生きている。怒りに震えるマヤ王妃はキリアンを呼びつけましたが、キリアンは仲間のサヴィンと共にとっくの昔に国外から逃亡していたのです。こうなったら自ら決着をつけに行くしかないと考えたマヤ王妃ですが、アベンジャーズのガードはなかなか厳しく、彼らの監視の目が緩んだ今日、ようやくこの場に来ることができたのです。
だから、絶対にしくじる訳にはいきません。
「いいからお食べ!」
大人と子供とでは適う訳もなく、老婆…いえ、王妃はヴァージニアの口に無理矢理イチゴを押し込みました。

口の中にイチゴを押し込められた姫は青ざめました。実は姫はイチゴアレルギーだったのです。必死で吐き出そうとしますが、マヤ王妃に手で口を塞がれ、息をすることすらままなりません。ジタバタと抵抗するヴァージニアですが、イチゴが喉に詰まってしまい、パタリとその場に倒れました。
動かなくなったヴァージニアの首筋に触れた王妃は、彼女の息が絶えたことを確認しました。
「ようやく小娘が死んだよ!これで私が世界No.1よ!!」
高笑いをしたマヤ王妃は、足早に森をあとにしました。

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Once upon a time…②

どこをどう走ったのか分かりませんが、森の中はどんどん暗くなっていきます。このままではキリアンではなく狼に食べられそうだと、ヴァージニアは途方に暮れましたが、どこからともなく焦げ臭い匂いがしてきたため、そちらの方へ歩いてみることにしました。
数分歩くと、目の前が開け、小さな家が現れました。焦げ臭い匂いはその家から漂っているようです。と、家の中から悲鳴が上がりました。何事かと家の中に入ってみると、室内は黒煙で覆われています。煙の原因は、部屋の隅にある窯のようです。窯にかけられた鍋からは炎と煙が立ち上っており、そのそばでは女の人が喚いているではありませんか。このままでは火事になると思った姫は、そばにあった水を鍋の上にかけました。すると、たちまち火は消え、煙も薄らできました。この騒ぎの元凶である女性は、ふぅと額の汗を拭うと、ヴァージニアを振り返りました。
「助かったわ。で、あんた、誰?」
恩人に向かって『あんた誰?』はないだろうと思った姫ですが、自分も勝手に上がり込んだ口なので何も言えません。
「突然申し訳ございません。ヴァージニア・ポッツと申します。実は道に迷ってしまい困っていたところに、こちらの煙が見えて参りました」
上品にお辞儀をしたヴァージニアに、女性は一瞬目を丸くしましたが、跪くと恭しく頭を下げました。
「私はブラックウィドウ。でもお姫様には特別に本当の名前を教えてあげる。ナターシャ・ロマノフよ。それにしてもヴァージニア様、大きくなられましたわね」
姫の頭を優しく撫でたナターシャですが、どうして自分のことを知っているのかと驚いた姫は、口をパクパクさせました。

しばらくすると、キャプテン、ウィンターソルジャー、ファルコン、ホークアイ、ソー、ハルクと名乗る6人の男たちが戻って来ました。全員揃ったところで、キャプテンは演説を始めました。

自分たちは8年前までポッツ国の軍の先鋭部隊『アベンジャーズ』だったこと、ある日国王暗殺未遂事件の首謀者として捕まったウィンターソルジャーを幼馴染だったキャプテンが庇ったことから国を追い出されたこと、行く当てもなくこの森で陰ながら国を守っていることを話し終わったキャプテンは、ヴァージニアに事の経緯を尋ねました。そして話を聞き終わった彼らは、姫の境遇に涙し、好きなだけこの地にいるよう告げました。

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Once upon a time…①

トニペパで白雪姫パロ
***

昔々あるところに、ヴァージニアという赤毛の可愛らしいお姫様がいました。
ところでヴァージニアには、マヤという継母がおり、王妃はジャーヴィスという名の、真実を教えてくれる魔法の鏡を持っていました。
世界一美しいと自負しているマヤ王妃ですが、国内からは昔から『ヴァージニア姫こそ絶世の美少女』という声が上がっていたのです。ですが義理の娘はまだ8歳なのです。幼ない彼女が自分に適うはずがないと思っていたマヤ王妃ですが、次第に不安になり始めました。

10歳になったヴァージニアは、まだ幼さが抜けきれませんが、彼女に懸想する男性は日に日に多くなっているのです。そこでマヤ王妃は、久しぶりに鏡に向かって問いかけました。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰だ?」
『はい、ヴァージニア様です』
速攻で返ってきた答えに、マヤ王妃はキーっと叫びました。ヴァージニアがいる限り、自分が一番にはなれません。邪魔な存在は抹消するに限ります。

ということで、マヤ王妃はキリアンという家来にヴァージニアを殺すよう命じました。
「ヴァージニアを森の奥で殺して来なさい。殺す前に手篭めにしてもいいわ。お前はあの子に懸想しているからね。殺したら、その証拠にあの子の心臓を持って返ってきなさい」
ヴァージニアをモノにできるとキリアンは喜び勇んでヴァージニアを連れて森に出かけました。

ところでヴァージニアは、このキリアンという男が苦手でした。
義母の忠実な部下ですが、いつも自分のことを舐めるような視線で見つめてくるのですから、気持ち悪くて仕方ありません。今も迷子になってはいけないと手を握ろうとしてくるのですが、何とか理由をつけてヴァージニアは拒否し続けていました。
王妃は手篭めにしてから殺せと言いましたが、このまま連れ去ってしまえば永遠に彼女を自分のものに出来ると考えたキリアンは、森の奥深くにまでやって来るとヴァージニアの手を無理やり握りしめました。
「ヴァージニアよ、王妃はあなたを殺せと命じたが、そんなことは出来ない。だから私の妻になって…」
「お断りします」
ものの0.5秒で返ってきた答えに、ムッとしたキリアンですが、こうなったら力尽くで奪ってやろうと姫に襲いかかろうとしました。が、キリアンの股間を蹴り上げた姫は、悶絶するキリアンを横目に走って逃げ出しました。

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