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Day.6 soulmate

戦火に追われ逃げ込んだものの、若い夫婦に逃げ道はなかった。覚悟を決めた2人は離れ離れにならぬよう抱き合った。
「生まれ変わっても、私たち、また一緒になれるわよね?」
「あぁ。君のこと、必ず見つけるから…」
それが最期の言葉だった。見つめあった2人は唇を重ねると、迫り来る業火に身を委ねた…。

***

「何処かで会ったことがあるか?」
ある日、一人の女子社員とすれ違った。赤毛の髪の美しい女性だった。肩が触れた瞬間、今まで感じたことのない何かに襲われ、トニーは思わず声を掛けた。立ち止まった女性は、不思議そうに首を傾げた。
「いいえ。お会いするのは初めてです」
琥珀色とオーシャンブルーの瞳が交錯した。見つめ合った瞬間、何とも言えない懐かしさが込み上げてきた。そして互いの瞳に吸い込まれるような感覚に陥った。何故だか分からないが、ずっと昔からお互いのことを知っている気がした。
「今、ここで出会ったのは、運命か?」
我ながらキザな台詞だと思ったが、自然と言葉が口に出ていた。
「そうかもしれませんね」
クスクス笑いだした女性のその笑い声さえも懐かしく、トニーはすっと手を差し出した。
「トニー・スタークだ」
「ヴァージニア・ポッツです」
おずおずと差し出された柔らかな手の温もりは、トニーに生まれて初めて心の平安をもたらしてくれた。

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Day5. post-Infinity War

あの事件の後、世界は一変してしまった。それでも残された人々は、以前の暮らしを取り戻そうとしたが、失われたものは戻ってくるはずはなかった。そしてトニー自身もまた、何かが変わってしまっていた。

「ねぇ、聞いてる?」
ボンヤリとしているトニーを突くと、ようやく我に返った彼はペッパーを見つめた。
「あぁ、すまない。何だ?」
「もう、しっかりして。さっきから5回は言ってるわよ。モーガンの部屋をどこにするかって話」
わざと頬を膨らませてみせると、申し訳なさそうにトニーは肩を竦めた。
目の前で息子のように思い始めていた少年を失ったことは、トニーの中で何かが永遠に変わってしまった。はっきりとは口に出さないが、おそらく彼自身の血を分けた息子もまた、失うのではないかという恐怖…。
トニーが小さく震えているのに気づいたペッパーは、彼の手を取ると自分のお腹にあてた。
「トニー、心配しないで。私もモーガンも絶対にどこにも行かないから…」
そう言いながら抱きしめると、小さく頷いたトニーの震えが止まった。

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Day3. Jealousy

トニーに女性が近寄ってくるのは昔からのことなのだが、それはペッパーが恋人になってからも相変わらず続いていた。
今日もチャリティーパーティに出席しているのだが、トニーは大勢の女性に囲まれていた。中でも一際目を引くのは、ゲストのハリウッド女優のA。今世界中で大ブレイク中のAは、トニーのファンだと公言すると、トニーに抱きつき離れようとしない。トニーもAがゲストだからか、振り払おうともせずなすがままだ。
これも仕事だと最初は我慢していたペッパーだが、Aがあまりにベタベタしているので、段々と腹が立ってきた。

Aがトイレへ行った隙に、トニーはようやくペッパーの元に戻ってきた。
「楽しそうね」
やけに棘のある言い方だが、珍しく子供のように頬を膨らませているペッパーに、トニーは目を見張った。思い当たることはただ一つ。それは…。
「嫉妬してるのか?」
ニヤニヤ笑みを浮かべたトニーをペッパーはじろりと睨み付けた。
「嫉妬?する訳ないでしょ?!」
ぷんっと顔を背けたペッパーだが、そこへAが戻って来た。
「トニー!お待たせ!ねぇ、ここから抜け出さ…あら?誰?」
ペッパーに気づいたAはジロジロと値踏みするように見つめた。まるで『私がトニーをもらうのよ』と言うように…。
ここは冷静に…と、ペッパーは自己紹介しようとしたのだが、それより先にトニーがペッパーの腰を抱き寄せた。
「紹介しよう。恋人のペッパー・ポッツだ」
『恋人』をやたら強調したトニーは、呆然とするAに取ってつけたような笑みを浮かべた。
「悪いが私の相手を出来るのはペッパーだけなんだ」
ペッパーの唇を奪ったトニーはAに向かって手を振ると、ペッパーを抱き寄せたまま歩き始めた。

Day4へ続く…

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Day.2 rescue! Pepper

(あー!もう!嫌になっちゃう!)
とあるパーティでペッパーはとある男性に捕まっていた。この男性には以前から何度もデートに誘われているのだが、彼のことがどうも苦手なペッパーは毎回丁重にお断りしていたのだ。いつもなら渋々引き下がる男性なのに、この日は酔った勢いもあってか、執拗にペッパーを誘い離れようとしなかった。
「ポッツさん、ほら、俺なら君のことを幸せにできるからさ」
あなたにはそんなことは望んでいませんと、はっきり告げるべきかとペッパーが迷っていると、酒臭い息を吐いた男性はキスをしようと顔を近づけてきた。思わず手に持っていたグラスの中身をぶち撒けると、男性のベージュのジャケットは、見事にワイン色に染まってしまった。
「おい!何するんだ!弁償しろ!」
自分のしたことを棚に上げ、怒り狂い始めた男性は、ペッパーの手首を捻り上げた。
と、その時だった。
「ポッツくん」
いつもよりも遥かに低音だが、この声はトニー・スタークだ。振り返ると、そのトニー・スタークが仁王立ちになっていた。眉間にはあり得ない程皺が寄っており、全身から醸し出されるオーラーはどす黒く、外はいつの間にか雷雨となっており、あまりの迫力に男性はペッパーから手を離すと、その場から逃げ出した。

「ありがとうございます」
窮地を救ってくれたのだ。頭を下げるペッパーに、トニーはふんっと鼻を鳴らした。
「秘書が困っていた。助けるのは、上司として当然のことだ」
じっと見つめてくるトニーの双眸はいつもよりも熱っぽく、その瞳に射抜かれたペッパーは無意識のうちに頬を赤らめた。
そこへ、一人の女性が駆け寄って来た。
「トニー!早く行きましょ!」
彼女は確か数分前までトニーとキスをしていたはず…。ということは、今夜は彼女と過ごすのだろうと、ペッパーはその場を離れようとしたのだが…。
「気分が悪いんだ。帰る」
女性に向かってそう言ったトニーは、ペッパーを抱き寄せると歩き始めた。先程の女性は後ろで何やら叫んでいるが、トニーはさっさと会場を後にすると、建物の外に出た。
「いいんですか?」
豪雨で何も聞こえないため、声を張り上げそう告げると、トニーが何やら呟いた。が、雨の音に消され、その言葉はペッパーの耳には届かなかった。何と言ったのか聞き返そうとしたが、迎えの車がやって来たため、結局その時のペッパーは聞くことができなかった。

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