04.誓いの言葉~結婚5題より

結婚式まで後1週間。
トニーに呼び出されたローディは、ラボの中央で仁王立ちするトニーの前に座っていた。
「式では誓いの言葉を言わなければならないらしい。そこで考えてみた。聞いてくれ」
要するに練習台になれということか…と、ため息を付いたローディだが、トニーはポケットから紙を出すと咳払いをし読み始めた。
「では、聞いてくれ。…ハニー…」
そう言うと、トニーはじっとローディを見つめた。
大きな煌めく目で見つめられ、ローディは思わず身体を震わせた。あまり意識したことはないが、トニーの瞳は人を引きつけ魅了する力がある。無意識のうちに顔を赤らめたローディだが、それに気付いたトニーはべぇっと舌を出した。
「おいおい、相棒。そんな目で私を見るのはやめろ。気持ち悪い。私にはそんな趣味はないぞ?」
大体お前が…と言いかけたローディだが、本人は無自覚なのだから言っても仕方ない。
「俺もそんな気はない。貸せ。読んで校正してやる」
と言うと、トニーから紙を奪った。

『ハニー。初めて君と出会ったのは11年前の今日だったな。
結婚が決まってから君は私に聞いた。『初めて会った時、どう思った?』と。あの時は照れ臭くて言えなかったが、今なら言える。白状するよ。あの時、私の小さなミスを正してくれた君の細やかさに、そして控えめだが強い意志を持った君の瞳に私はすぐに魅了された。その時感じた。君とは長い付き合いになると…。それまで何人ものPAがいたが、君は違っていた。出会ってすぐの頃だったな。風邪を引き一人で家で寝込んでいる私のために君は泣いてくれた。酒を飲み酔っぱらって帰ると、本気で心配し怒ってくれた。そして、こんなめでたい席では言いにくいんだが、他のオンナを連れて帰ってきても、君は文句も言わず後始末をしてくれた。今思えば私は酷い男だ。長年自分の気持ちを偽り、君の気持ちに気付かないふりをし、君を苦しめてきたんだから…。すまなかった。許してくれ。
だが、ペッパー。私はあの時…NYで心の底から思った。私がこの世で守りたい物は君だけだと。私は君なしでは生きていけないと。そして、これから君と一緒にやりたいことがたくさんあると…。
ペッパー…いや、ヴァージニア。初めて会った時から、私は君の事を愛していた。もっと早く自分に正直になっていればよかったんだな。11年間、私を支えそして愛してくれてありがとう。私とこれからの人生を共に歩みたいと言ってくれてありがとう。両親が死に孤独だった私に、君は生きること、そして愛することの素晴らしさを教えてくれた。感謝してる。そして君のことは人として尊敬もしている。これからも私のただ一人のオンナでいて欲しい。
今日、ここに誓う。私は君の事を生涯かけて愛しそして守り抜くと…。
ペッパー…愛してる…永遠に…。

アンソニー・エドワード・スターク』

ローディが没頭している間、落ち着かないトニーはその辺の物を弄っていたが、しばらくしてすすり泣く声が聞こえ顔を上げた。
見ると、ローディは大きな身体を縮め、目から大粒の涙をボロボロと流しているではないか。
「ローディ?どうしたんだ?」
手に持っていたスパナを放り投げたトニーは、彼に駆け寄ると隣に腰を下ろした。
「わ、悪い…。おかしいな…涙が止まらないじゃないか…」
紙を大切そうに返したローディは、トニーの身体をぐっと抱き寄せた。気持ち悪いと悪態をつこうとしたトニーだったが、この世に数えるほどしかいない彼の親友であり介添人である目の前の男は、まだ肩を震わせている。
「トニー、よかったな…。本当に良かった…」
めったに見れない親友の涙。彼が心の底から、そして自分のことのように結婚を祝福してくれていると改めて実感したトニーは、嬉しそうに口の端を上げた。
「あぁ…ありがとう。本番も頼むぞ?」
親友の肩をポンと叩いたトニーの目もまた、親友につられるように潤んでいたのだった。

ローディが号泣したとお墨付きの誓いの言葉だが…残念ながら陽の目を見ることはなかったのだが、それはまた別のお話。

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