03.できちゃった!?~結婚5題より

気持ちが悪いとバスルームに籠っているペッパーに、トニーはドア越しに声を掛けた。
「ハニー、大丈夫か?」
「…何とか…」
苦しそうな声が聞こえていたが、しばらくしてペッパーはバスルームから出てきた。
朝から熱っぽい、吐き気がする、気分が悪いと訴えるペッパーは、ふらふらとベッドに横になった。
何か変な物でも食べたかしら…と考えてみたが、同じ物を食べたトニーはピンピンしている。不安で泣き出しそうな顔をしているトニーを見つめていたペッパーだが、ふとあることに気が付き顔色を変えた。
「もしかして…」
何やら指折り数えていたペッパーは、口を覆うと目を見開いた。同じく顔色を変えたトニーは、慌ててベッドに昇るとペッパーの手を取った。
「ど、ど、どうしたんだ?!」
慌てふためくトニーにペッパーは震える声で呟いた。
「トニー…どうしよう。できちゃったかも…」
ペッパーの言葉が一瞬理解できなかったトニーは、呆けた顔をしている。
「出来たって、何が?朝食か?」
朝ごはんがまだなことを思い出したトニーは、ぐぅぅと鳴るお腹を押さえた。いつもはあれだけ鋭いのに、こういう時は鈍感な彼に腹が立ったペッパーは金切声をあげた。
「何がって……赤ちゃんよ!!」
静まり返った寝室にペッパーの声がこだまする。お腹を押さえたまま固まったトニーは、1分ほど経ってようやく我に返った。
「い、今…何と言った?…こ、こ、こ、子供ができたのか?」
小さく頷いたペッパーは口を尖らせ俯いてしまった。そのため、みるみるうちに笑みを浮かべ、その場で踊りだしそうなくらい喜んでいるトニーには全く気付いていなかった。
「もう!どうしてよ!何で今なの?!」
今手掛けている仕事が終わるのは半年後。おそらくその頃には、自分は仕事どころではない状態のはず。予定外の出来事に、ペッパーは思わず悪態をついてしまった。
そんなペッパーを見たトニー。
彼女が今進行している仕事に半年以上前から準備をして臨んでいるのは知っている。そしてこの妊娠が計画外であることも…。
だが、ああいうことをしている以上、いつ子供が出来てもいいと彼女も同意のうえでの行為だと思っていたのだが…。
トニーは顔を顰めると悲しそうにぽつりと呟いた。
「ペッパー。君は子供が欲しくないのか?」
「え…」
悲しそうな声にペッパーは思わず振り返った。
「そうだろ?さっきから君は嫌だとばかり言っている。確かに予想外だ。まだ結婚式も上げていない。正直、心の準備だって出来てない。ペッパー、もし君が産みたくないのなら…」
トニーの潤んだ瞳を捕えたペッパーは、彼の言葉を遮るように叫んだ。
「そ、そんなことないわ!あなたの子供よ!嬉しいに決まってるわ!だから、例えあなたが反対しても絶対に産むから!」
誰も反対してないだろ…と、肩を落としたトニーだったが、彼女も子供が出来たことを喜んでくれていると知ると、顔を綻ばせた。
「おい、私がいつ反対した?むしろ大賛成だ。一刻も早く君との子供は欲しい。3人か4人…いや、10人でも20人でもいいぞ!」
「20人……それは無理かも……。でも、私だってあなたの子供は大勢産みたいわ!」
目を輝かせたトニーは、ペッパーの手を引っ張り腕の中に閉じ込めた。
「よし!そうと決まれば、結婚式は前倒しだ!」
「トニー!大好き!」
見つめ合った二人が唇を合わせようとしたその時…。

『トニー様、ペッパー様。盛り上がっているところ申し訳ありません。ですが…ペッパー様は妊娠されていません』
「「え……」」
静まりかえた寝室に、ジャーヴィスの冷静な声が響き渡った。
『おそらく、食あたりだと思われます。トニー様は平気だったようですが、昨晩の牡蠣が原因と思われます。ペッパー様、病院へ行くことをお勧めします』

顔を見合わせた二人だが、急に気恥ずかしくなりベッドから飛び起きた。
「わ、私…病院へ行ってくるわ。先に会社に行ってて?」
「分かった…そうする」
そそくさと身支度を始めた二人だが、ペッパーが寝室を出ていく前にトニーは声をかけた。
「さっき言ったことは本当だからな。帰ったら…な?」
ウインクどころか投げキスまでしてきたトニーに、顔を真っ赤にしたペッパーは恥ずかしそうに頷くと部屋を飛び出して行ったのだった。

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