041.ご賞味あれ

トニーはコーヒーが好きだ。
起床すると目覚めの一杯、朝食時にも一杯、会社に着くとまずコーヒーを淹れさせる。会議中も必ずコーヒーの飲み、帰宅しくつろいでいる時も何倍か飲んでいる。そして外へ出かけると、気が付けばコーヒーのカップを持っている。

「一日何杯飲んでるの?」
会議が終わり部屋に戻って来たトニーは、ネクタイを緩めるとソファーに腰を下ろした。
「さぁ?数えたことない。だが、君も好きだろ?」
カップの中の琥珀色の液体を一口啜ったトニーは、ほぅと幸せそうに息を吐いた。

昔はさほど好きではなかった。どちらかと言うと、紅茶の方が好きだった。だが、彼に合わせて飲むうちに、いつの間にかコーヒー派になっていたのは事実。
「本当は好きだけど…今はダメ。控えてるんだから…」
香ばしい匂いが鼻孔をくすぐり、思わず一口頂戴と言いそうになったペッパーは、頭を軽く振るとハーブティーを啜った。
「そうか…そうだな。私も控えるか…」
チラリとペッパーを見たトニーは、手元のカップを机に置くと妻を抱き寄せた。
「あなたはいいわよ。それに、妊娠したらカフェインの入っていないのを飲むから」
ふふっと笑ったペッパーは、トニーに頬に顔を摺り寄せると、キスをした。
「あなたのキス、コーヒーの味がするわ」
「本当か?では、子供ができるまでは、こうやって堪能してくれ」
唇の隙間から舌を入れたトニーは、ペッパーの小さな舌を捕えると、コーヒーの味を移すかのように蕩けるようなキスをし続けた。

子作り中でコーヒー断ちしているペッパー。10月1日コーヒーの日に寄せて。

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