27:50.めくるめく甘い夜

ペッパーの卒業まであと半年となった11月のある日。卒業式までを指折り数えていたペッパーの元に、トニーから電話が掛かってきた。
「来週、ボストンで会合があるんだ。会合の後に休みも取った。十日ほどそっちに行くから」
トニーの嬉しそうな声にペッパーも大喜び。
「ホント?!やったー!」
と、飛び上がったペッパーは、カレンダーに走り寄ると大きなハートマークを付けたのだった。

そして一週間後。
「ただいま」
と言う声に、ペッパーは玄関に向かって走った。
「トニー!おかえりなさい!!」
玄関のドアを閉めるなり抱きついてきたペッパーを受け止めたトニー。顔や首筋にキスを始めたトニーは、力が抜け始めたペッパーを壁に押し付けた。手際良く服を脱がされ、気づけば裸同然なっていたペッパー。下腹部から沸き起こる快楽と水音に首をイヤイヤと振ったペッパーは、片足を持ち上げ熱い塊を押し付けるトニーの肩に顔を埋めた。
「と、とにー…ご飯…」
だが、トニーは鼻を鳴らすと、己で入り口をなぞり始めた。
「後で食べる。その前に君を…」
「さ、さめちゃうわ…」
こんな所で…と思う一方、早くトニーに抱かれたい…。ペッパーの心の迷いを見透かしたように、トニーは耳たぶを甘噛みした。
「ハニー。一か月ぶりの再会だぞ?そんなこと言うな」
久しぶりに聞く甘い声に小さく頷いたペッパーは、トニーの熱い塊を受け入れると悦びの声を上げ続けた。

「ご飯冷めちゃったじゃないの…」
ひとしきり愛を囁きあった後、ブツブツと文句を言いながら、ペッパーは料理を温め直しトニーの前に並べた。
「君もうまかったけど、料理も最高だな?」
嬉しそうに料理にかぶりつくトニーもペッパーも、久しぶりに過ごせる二人きりの時間を楽しんでいたのだった。

翌日から会合のため朝早くからトニーは出かけて行き、帰宅するのも夜遅くだったが、それでもお互いの温もりに包まれて眠ることが出来、二人は幸せだった。そんな幸せな日々が三日続いた夜のことだ。明日は会合の最終日。これが終わればトニーは休暇を取っているため、二人きりで過ごすことが出来ると、ペッパーはワクワクしていた。
珍しく早く帰って来たトニー。バスルームへ引っ張り込まれたペッパーはシャワーを浴びながら散々愛され、少々のぼせていた。バスタブの中でトニーに背後から抱きしめられたペッパーが真っ赤な顔をしているのは、のぼせただけではないだろうが…。
そんなペッパーの首筋にキスを刻んでいたトニーが、思い出したように口を開いた。
「会合も明日で終わりだ。夜にはパーティーがあるんだ。なぁ、ペッパー。一緒に来てくれないか?」
思いもしない提案に、ペッパーは立ち上がったが、入浴中で何も着ていないのだ。恥ずかしそうに胸を抑えるとトニーの膝の上に向かい合わせで座り込んだ。
「え?!いいの?」
目をぱちくりさせているペッパー。それもそのはず。マスコミの前に出ればペッパーの存在がバレてマスコミに付け回されると、トニーは卒業するまでペッパーを公の場に出さないと常々言っているのだから。
「あぁ。君さえ迷惑でなければ…。それに、明日は内輪の会だからマスコミはいない」
ニヤリと笑ったトニーにペッパーは飛びついた。
「うん!行く!どうしよう…何着て行こう…」
頭を抱え悩むペッパーを愉快そうに見ていたトニーだが、ペッパーを抱きかかえるとそのまま寝室へ向かった。

翌日、帰宅したペッパーはリビングに大きな箱があることに気付いた。箱にはメッセージカードが付いており、カードを開いたペッパーは歓声を上げた。
『18時に迎えに来る。気に入ってくれればいいが…』
箱を開けると、マーメードラインのグレーのドレスにジュエリーに靴、そしてバッグと一式揃っているではないか。
「素敵!」
早速着てみると、サイズもぴったり。
「トニーって、何で私の事をこんなに分かってるのかなぁ…」
まだ学生の身のペッパーは、貰うばかりで返すことができない。ありったけの愛をあげることしかできないと言ったら、トニーは「それがいいんだ。それが一番だよ」と笑って答えていたことを思い出したペッパーは、髪をアップにするとメイクをし始めた。

迎えに来たトニーと向かったのは、市内にある高級ホテル。
ホテルのラウンジを貸し切って行われているパーティーは、トニーが内輪だと言ってように、こじんまりとしたものだった。
見るからにお偉いさんに挨拶するトニーの横でペッパーはニコニコと笑顔でいるように努めていた。
「おや、こちらのお嬢さんは?妹さんかい?」
「い、いえ…」
否定しようとしたトニーとペッパーだが、相手は話を聞いていない。
「トニーくんは素晴らしい男だ。うちに年頃の孫がいるんだ。君の写真を見て君のことが気に入っていてね。結婚してやってくれ」
いかにも昔気質の頑固そうな老人。他の人間には一切話をしないのにトニーのことを気に入っているようで、トニーとばかり話をしている。そしてとうとう孫と結婚しろとまで言い出した。
トニーはもちろん、彼の両親であるハワードとマリアもその気はないのは分かっている。だが、世間体というものがあるだろう。妹ではないと否定できないペッパーは思わず俯いてしまった。
ペッパーの様子をチラっと見たトニーは、安心させるように手をギュっと握りしめた。
「申し訳ありませんが、そのお話はお断りさせて頂きます」
ムッとした表情をした老人だが、トニーは顔色を変えない。
「あ、紹介が遅れました。彼女は俺の婚約者です。ですから、結婚相手は間に合ってます」
何か言いたげな老人に一礼すると、トニーはペッパーの手を引張っり別の集団へと向かった。
見覚えのある後ろ姿にトニーは
「親父」
と、声をかけた。振り返ったのはトニーの父親であるハワード。ペッパーに気づいたハワードは、腕を伸ばすとペッパーを抱きしめた。
「ヴァージニアさん、久しぶりだね」
「お父様!お久しぶりです」
去年のクリスマス以来なのだから、ほぼ一年ぶりの再会だ。
「来月のクリスマスは、ドイツに行こうと思ってるんだ。古城を貸し切ってね。君のご両親にはもう連絡しているから。マリアも楽しみにしているんだ」
楽しそうに話す父親と恋人を嬉しそうに見ていたトニーだが、父親に目配らせするとペッパーの手を引っ張った。
「じゃあ、親父。俺たちはこの辺で…」
「あぁ。頑張れよ」
父親に頑張れと言われたトニーは軽く睨みつけたが、ハワードは気にする風でもなく、二人に向かって手を振っている。
「どうしたの?」
状況が分からず首を傾げるペッパーだが、トニーは黙ってエレベーターに乗ると、最上階を目指した。

最上階のバーは人も少なく先ほどのラウンジとは違い静かだった。
「素敵な所ね」
初めて来るお洒落なバーをキョロキョロと見渡すペッパー。窓際の夜景が一望出来る席に通されると、トニーは
「適当に頼むぞ?」
と、何やら頼み始めた。

しばらくして、バーテンダーが直々にグラスを持ってやって来た。
「こちらはスターク様からポッツ様へプレゼントでございます」
ペッパーの目の前に置かれたのは、細長いグラス。持ち手は真っ赤なバラで飾られており、そしてグラスの中にはシャンパンと指輪。
「トニー…これ…」
目を見開いてグラスの中身とトニーを交互に見つめるペッパーの目には、次第に涙が溜まり始めた。
立ち上がったトニーは指輪を取り出すとペッパーのそばに跪いた。
「ペッパー、正式に伝えるのが遅くなってすまなかった。だけど、男として、自分の稼ぎで君を養えるようになるまで…と決めてたんだ。君ももうすぐ卒業だ。だからこの機会に言わせてくれ。ヴァージニアさん、俺と結婚してください。君は俺の全てだ。君なしの人生なんて、今までもそしてこれからも考えられない。だから、ずっと俺の傍にいてくれないか?」
言葉では何度もプロポーズされていた。だが、言葉だけではなく思い出とそして形に残る物を、それも最高のシチュエーションでトニーはプレゼントしてくれた。
ポロポロと大粒の涙を零しながら、ペッパーはトニーに向かって手を差し出した。
「トニー…わ、私…」
涙が出て言葉にすることができない。しゃくり上げながらトニーに抱きついたペッパーは、彼のジャケットをギュっと握りしめた。
「おい、ペッパー。返事は?一生に一回なんだぞ?ちゃんと聞かせてくれよ」
ペッパーの背中を撫でながら笑ったトニーに、ペッパーは涙でグチャグチャになった顔を向けた。
「私…あなたの傍を一生離れないから!」

「部屋を取ってあるんだ」
と、トニーが向かったのはスイートルーム。
「ペッパー、永遠に愛してる…」
ふかふかのベッドの上にペッパーをそっと下ろしたトニーは、一晩中愛の言葉を囁き続けた。

朝方まで愛し合っていた二人が目覚めたのは、太陽が南の空に昇りきった頃だった。
枕元の時計を見たペッパーは、慌てて飛び起きた。
「大変!トニー!もうお昼よ!」
慌てふためくペッパーだが、寝ぼけ眼のトニーは、彼女の腕を引っ張ると自分の腕の中に閉じ込めた。
「大丈夫…明後日までここは予約してる…」
「あ、明後日?!」
目を白黒させていたペッパーだが、すぐにトニーから与えられる愛に溺れていった。

結局、二人はベッドの中のみならず、リビングやジャグジー、シャワールームと様々な場所で三日間愛し続けた。次にこんなに長い間二人きりでいられるのは、おそらく半年後…ペッパーが卒業してから。共に暮らせるようになる日までの思いを全てぶつけるかのように、トニーは自分の思いを彼女の中に吐き出し続けたのだった。

28:141.痩せ我慢

高校生パロ。社会人トニー20歳 大学生ペッパー18歳。

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