⑮080.狂熱の一夜

5月。学年最後の試験が始まった。そして試験が終われば卒業式。卒業式が終われば、トニーはLAを離れボストンへ向かうため、二人が一緒にいられるのも残り僅かだ。
元々成績の良いペッパーだが、一刻も早く卒業してトニーの元に行きたいという一心で、必死で勉強したのだった。

「あーぁ…全滅だわ…」
試験後のカフェテリア。ぐったりとテーブルに倒れこんだナターシャは、恨めしそうにペッパーを見つめた。
「ペッパーはいつも通り完璧なんでしょ?」
「そんなの分からないわよ。でも、早く卒業しなきゃ!後二年で卒業するって約束したんですもの」
「愛の力は強いわねー」
「ところで、プロムはどうするの?」
卒業生ではない自分たちは、招待でもされない限り出席できないのだが、クリントはどうやらきちんとナターシャを相手に指名したようだ。だが、トニーは何も言ってこない。卒業生の女子たちも、トニーに誘われないかと一応気にはしているようだが、そもそもペッパーという恋人がいるのだから不可能に決まっている。
「先輩、何も言ってこないの…」
しょんぼりと頭を垂れたペッパーは、スケジュール表を見ていたが、あ!と声を出した。
「どうしたの?」
「あ…うん。プロムって5月29日よね?その日は…」

放課後、トニーを捕まえたペッパーは学校の近くのカフェに入った。
念のため、プロムに行くか聞いてみると…。
「プロムには行かない」
と、トニーはアイスコーヒーを啜りながら答えた。
「えー!どうして?」
思わず立ち上がったペッパーが口を尖らせると、
「なんでお前が残念がるんだよ。行っても仕方ないだろ?それに、君のドレス姿を他の男に見せられないだろ?」
と、トニーはニンマリ。
だが、プロムに行かないとなるとチャンスだ。午後からずっととある計画を練っていたペッパーは、テーブルの上に置かれたトニーの手をそっと握った。
「ねぇ、トニー。あのね、29日なんだけど…どこかにお泊りに行かない?」
初めてのペッパーからの誘いに、トニーはアイスコーヒーを噴き出した。
「だ、大丈夫なのか?」
事実上婚約状態で親公認の仲だから、今さら反対されることはなさそうだが、やはり心配なのはペッパーの両親の反応。盛大に飛び散ったコーヒーを布巾で拭きながらも、トニーはドキドキしていた。だが、思いのほかペッパーは冷静だった。
「うん…ナターシャたちと旅行に行くって、パパとママには言うから大丈夫よ」
計画は私が練るから楽しみにしておいてねと笑ったペッパーは、照れるトニーの頬にキスをした。

そして5月29日。
トニーはペッパーに指示されながらLAの郊外に車を走らせていた。
「どこに行くんだ?」
「秘密よ」
ふふっと笑ったペッパーはかわいらしいのだが、車に乗り込んでからどうもペッパーの様子がおかしい。トニーと目を合わさないようにしているし、今さら緊張しているのか、声も上ずんでいる。
大丈夫か?と思ったトニーだが、あまりいじるのもかわいそうかと黙って運転し続けた。
森の中を走っていた車の前に、かわいらしいお城のようなホテルが姿を現した。
一度泊まりたかったとはしゃぐペッパーの手を握ったトニーは、ホテルへと入って行った。

一日数組しか宿泊できないというホテルだが、平日ということもありトニーとペッパー以外の宿泊客はいないようだ。
ホテル内のレストランでディナーを楽しんだ二人だが、急に照明が落ちトニーの前に何かが運ばれてきた。
「ペッパー…これ…」
大きなケーキには、『Happy Birthday』も文字と17本のろうそく。
そう、5月29日はトニーの誕生日。
そういえば、付き合い始めてまだ半年も経っておらず、お互いの誕生日を祝うのは今回が初めてだった。
「覚えてたのか?」
と驚くトニーにペッパーはニッコリと微笑んだ。
「当たり前よ。大好きなあなたが生まれた日ですもの」

部屋に戻って来た二人は、しばらく他愛もない話をしていたが、次第に落ち着かなくなってきたペッパーは、勢いよく立ち上がった。
「ねぇ、トニー!あのね…プレゼント渡すから…ちょっと待ってて!!」
バスルームへ飛び込んだペッパーは急いで準備し始めた。
プレゼントがなぜバスルームにあるんだろう…と不思議に思ったトニーだが、ガチャっとドアが開く音がし、振り返ると言葉を失った。
「トニー…お誕生日おめでとう…」
目の前には、真っ赤な下着を着て頭にリボンを付けたペッパーが恥ずかしそうに立っていた。
「ぺ、ペッパー?!ど、どうしたんだ?!」
さすがのトニーもペッパーのこの大胆なプレゼントには顔を真っ赤にして照れるしかなかった。
もじもじとしていたペッパーだったが、ゆっくりとトニーに向かって近づくと彼の膝の上にちょこんと座った。
「あのね…プレゼントは…その…私なの…。あなたの好きにして?」
小首を傾げたペッパーだが、耳の先まで真っ赤にしたトニーは固まったままだ。
「トニー?大丈夫?」
何も言わないトニー。もしかして気に入らなかったのかしら…としょんぼりしたペッパーだが、我に返ったトニーは、ペッパーの身体を抱きしめると、首筋に赤い印を刻み始めた。
「最高だよ、ペッパー。まさか君がこんなことをしてくれるなんて思っていなかったから…その…驚いてしまって…」
鼻の頭を掻いたトニーは、恥ずかしそうにしているペッパの身体を抱きかかえるとベッドへ向かった。
「本当に俺の好きにしていいのか?」
切なそうに呟いたトニーにペッパーは真っ赤になった顔を彼の肩に押し付けながら
「好きにして…」
と、頷いた。

⑯001.未知の快楽

高校生パロ。5月のトニー誕生日話。

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