ペッパーが入院してから毎日のように病院へ通っているトニーだったが、三週間ほど経ったある日、学校を出ると門のそばに見覚えのある車が停まっていることに気づいた。
(おい、まさか…)
ため息をついたトニーが車に近づくと、後部座席の窓が開き一人の女性が顔を覗かせた。
「トニー、待ってたわよ」
自分とよく似た笑みを浮かべたその女性は、マリア・スターク、すなわちトニーの母親だ。ドアを開けたマリアは渋い顔をしている息子を車の中に引っ張り込んだ。
「何でいるんだよ?」
ぶっきらぼうに答える息子にマリアは口を尖らせた。
「あら?『大事な人の一大事』と言って飛び出してから、何も言ってこないでしょ?ハワードも心配してるわよ?ジャーヴィスから聞いたわよ。トニーったら恋人ができたんでしょ?何でママに教えてくれないの?それもあなたのせいで大変な目にあったんでしょ?ちょうどこっちで用事があったの。だから母親としてきちんと謝っておかなきゃって…」
ペラペラと話す母親にため息を付いたトニーは、勝手にしろと窓の外を眺め始めた。
病院へ到着すると、マリアは大きな荷物をトランクから山のように取り出した。目を白黒させているトニーに持つように命じると、マリアはスキップしながらペッパーの病室へ向かった。
母親と話していたペッパーは、突然見知らぬ派手な女性が入ってきたのに驚き飛び上がった。母親共々呆然としていると、その女性の後ろから大荷物を抱えたトニーが顔を覗かせた。
(先輩?!ということはもしかして…)
どことなくトニーに似ているその女性は、ペッパーと母親に歩みよると頭を下げた。
「ヴァージニアさんとお母様ですよね?初めまして。トニーの母親のマリアです。ポッツさん、この度はうちのバカ息子のせいで、お宅のお嬢様を大変な目に合わせて申し訳ありませんでした。本来なら主人共々ご挨拶に伺うべきなんですが、あいにく主人は仕事で…。本当にすみません」
頭を下げ続ける女性がトニーの母親…すなわち、あのスターク・インダストリーズの社長夫人だと知ったペッパーの母親は立ち上がると、つられるように頭を下げた。
「スタークさん、頭を上げて下さい。今回のことは、トニーくんのせいでも何でもありません。それに、彼には本当によくしてもらってるんです。ですから…」
お互い頭を下げ続けていたが、そのうちすっかり意気投合した母親たち。ペッパーにと持ってきたお土産…有名店のお菓子に可愛らしいフリルの付いたパジャマやガウン、洋服などを次々と出すマリアは、恐縮しまくるペッパーと母親に向かいにっこり笑った。
「遠慮しないでちょうだい、ペッパーちゃん!私ね、ずーっと娘が欲しかったの。結局この子しかできなかったんだけど、あなたが娘になってくれたらさぞかし楽しいでしょうね!あ、ポッツさん、ペッパーちゃんはトニーに責任を取らせますから、安心して下さいね」
「私もトニーくんが息子になってくれたら…って、ずっと思ってたんです!スタークさん、こちらこそよろしくお願いします!」
「…というわけで、親公認に…というよりも、勝手に母親同士で婚約まで話が進んだぞ」
マリアの襲撃から三日後。
放課後のカフェテリアで、トニーはクリント、ナターシャ、スティーブの前で、事の顛末を話していた。
「さすがお前の母親だな…」
クリントだけでなく全員が苦笑する中で、真面目なスティーブは顔を曇らせた。
「だが、トニー。君たちの気持ちは…」
スティーブの言いたいことが分かったトニーは、彼の肩をポンっと叩いた。
「ああ。俺も彼女と一緒にいたいと思ってたから、伝えたさ。ずっとそばにいてくれって…」
「そうか…」
ホッとしたように息を吐いたスティーブは、嬉しそうにトニーの背中を叩いた。
「ところで、どうするんだ?」
カフェテリア中の生徒の視線が自分に向いているのは、入った時から気づいている。ちらりと見渡したトニーは、
「ちゃんと考えてる。大丈夫だ」
と言うと、ニヤリと笑った。
高校生パロ。3月のお話。親同士で盛り上がる両家