Day 7 (Friday, August 27):  post-cacw reconciliation fluff

スティーブ・ロジャースからの手紙を思い出したトニーは、溜息を吐いた。
「家族か…」
それを共に築くことの出来そうだった女性は、自分の元から去ってしまった。いや、正確にはまだだ。今は一時的に距離を置いているだけだから…。だが、このままでは別々の道を歩むことになりそうなのは目に見えている。
「あなたのそばにいる自信がないの…。あなたは自分一人で抱え込んで、私に話してくれない…。もう限界なの…。あなたのそばにいて…あなたが傷つくのを黙ってみているのは…」
あの時、泣きながらペッパーは胸の内に秘めていた思いを吐き出した。
『君がそばにいてくれるだけで十分なんだ。君がいるから私は頑張れるんだ』
そう言えばよかったのかもしれない。だが、言うことが出来なかった。今の生き方を始めてからずっと、彼女を傷つけ苦しめていることは、分かっていたから…。その生き方を自分は変えることはできない…つまり、永遠に彼女を苦しめると分かっていたから…。だから彼女が去るのを黙って見送るしかなかった。『行かないでくれ』と叫びたいのをぐっと堪えて…。

帰路に着きながらそんなことを考えていたトニーは、気づけばペッパーの家の前にいた。車のエンジン止め彼女の部屋を見上げると、カーテン越しにシルエットが見えた。ペッパーに会いたくて堪らなかった。もし拒否されたら、黙って立ち去ろう…。いや、もう二度と会わないと彼女に告げよう…。そう覚悟を決めたトニーは、足早に玄関に向かうとチャイムを押した。

シャワーを浴び終えたペッパーは、チャイムが鳴っていることに気づくと、玄関へと急いだ。この家に越してきてから数週間。トニーとの関係次第では、別の地にすぐに引っ越すことになるかもしれないと、ペッパーは引っ越したことを誰にも告げていなかった。それ故に、訪問者といえば宅配業者くらいだが、何かを頼んだ覚えはない。一体誰がやってきたのかとドアを開けると、何とトニーがいた。
「トニー………」
トニーは酷く顔色が悪かった。悲しみと絶望、そして今まで以上の責任を一人抱えたようなトニーの様子に、顔を歪めたペッパーの目から涙が零れ落ちた。
「すまない…。来るべきではないと分かっている…。だが…君に会いたくて…」
蚊の鳴くような声で呟いたトニーに、ペッパーは小さく首を振ると抱きついた。シクシク泣き続けるペッパーをトニーは黙って抱きしめた。

リビングへ通されたトニーにコーヒーを出したペッパーは、彼の隣に腰を下ろした。
「聞いたわ、キャプテン・アメリカの件。ニュースで報道されていることはね…。何があったの?」
トニーの様子からただ事ではないことが起こったに違いない。報道されている以上の何かが…それも、トニーを酷く傷つけるようなことが起こったことには間違いないのだ。今までの経験上、トニーが全てを話してくれるかどうかは分からなかったペッパーだが、トニーはポツリポツリと話し始めた。
ドイツの空港での一件、そしてシベリアで起きたこと…。そこで両親の死の真相を知らされたこと…。

ペッパーは黙って聞いていた。が、彼女は泣いていた。大粒の涙を流し唇を噛みしめ、彼女は泣いていた。
その涙を見たトニーは心が少しだけ軽くなった。
彼女は泣いてくれているのだ。自分のことのように悔しがり、怒り、悲しんでくれているのだ。彼女だけが、ありのままの自分のことを全て受け止めてくれるのだ…。

話し終えたトニーにペッパーは抱きついた。
「…ごめんなさい…。あなたが辛い時に…そばにいなくてごめんなさい…」
何度も謝罪の言葉を口にするペッパーの髪にトニーはキスをした。
「私こそすまない…。距離を置いているのに突然押しかけて…」
すると顔を上げたペッパーは、トニーの頬にそっと手を置いた。
「あなたと離れている間に、考えたの。これからのことを真剣に…。あなたのことが心配でたまらなかった。何をしていても、あなたのことを思い出した…。あなたがそばにいないことが、こんなにも辛いことだとは知らなかった…。だから決めたの。私はもう逃げない。あなたのこと、全て受け止めてみせるわ。だからお願い…そばにいさせて…」
ペッパーの言葉に、トニーの目からも小さな涙が零れ落ちた。その涙を拭ったペッパーの手に、トニーは自分の手を重ねた。そしてもしももう一度やり直せるのなら、伝えようと決めていた思いを口に出した。
「君にそばにいて欲しいのは…私も同じだ。ペッパー、すまなかった。本当は君が距離を置きたいと言った時に伝えるべきだった。君を傷つけてしまって、本当にすまない。これからも君を傷つけることはあると思う。泣かせることもあると思う。だが、君にはきちんと話をする。思っていること全てを、今まで以上に…。だから、ずっとそばにいてくれ…」
うんうんと頷いたペッパーは、泣きながらトニーに抱きついた。そして首元に腕を回すと唇を奪った。
最愛の女性の柔らかな唇の感触に、トニーの心はようやく落ち着きを取り戻した。

「ペッパー…愛してる…」
キスの合間に囁くと、ペッパーは蕩けるような笑みを浮かべた。
「私も、愛してるわ…」
再び啄むようなキスをしていると、トニーはペッパーのことがどうしようもなくくらい愛おしくなった。つまり、今宵は…いや明日も明後日も永遠に離れたくないと…。
「泊まっていいか?」
答えは分かっていたが一応尋ねると、ペッパーは身体をぎゅうぎゅうとトニーに押し付けた。
「もちろんよ。そうだわ、明日からあなたの家に戻っていい?」
「あぁ」
Tシャツ越しにペッパーの胸の感触が伝わった。どうやらシャワーを浴びた直後なので、下着はつけていないらしい。裾から手を入れたトニーは、素肌をすっと撫でると、Tシャツを脱がせた。ぷるんと現れた柔らかな胸にむしゃぶりつき、背中に指を滑らせると、ペッパーの息が上がり始めた。
「トニー…お願い…。ベッドに連れて行って…」
胸の先端を甘噛みしながら唇を離したトニーは、ジャケットを素早く脱ぐとペッパーに向かってにっこり笑った。
「仲直りのセックスといこうか?」
「えぇ」
嬉しそうに笑ったペッパーを抱き上げたトニーは、キスをしながら寝室へと向かった。

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