The best thing my dad ever made.②

街中のホテルで開かれた国際フォーラムは何事もなく順調に終わった。トニーの講演も大好評だったし、2人で街中をぶらつき、モーガンへの土産も沢山買うことができた。
2日間の日程を終えたトニーとペッパーは、娘に半ば強引に取らされた3日間の休暇を、湖水地方で過ごすことにした。
いつもならば、ハッピーが運転手兼ボディーガードとして付いてきているのだが、今回はモーガンのお目付役としてNYに残っているので、文字通り本当に2人きりの旅行だ。
「久しぶりね、2人きりって」
ペッパーは、運転しているトニーに向かって嬉しそうに微笑んだ。
確かに、家族3人で行動するのが当たり前になっていた。だが、これからはこうやって夫婦2人きりでの行動も増えてくるだろう。嬉しくもあり、そして寂しさも感じたトニーだが、昨晩の甘い夜を思い出した彼は、
「モーガンに感謝しよう」
と、頷いた。

と、その時だった。

ドーーーン!!!

目の前で突然大爆発が起きた。
慌ててブレーキを踏んだため、巻き込まれずに済んだが、気づけば、上空にはヘリ、周囲は武装した車に取り囲まれているではないか。
「トニー……」
腕にそっと触れてきたペッパーに向かって、
「ここはイギリスだぞ?いつからこんなに治安が悪い国になったんだ?」
と、ブツブツと文句を言ったトニーは腕時計を妻に向けて見せた。するとペッパーも、腕時計に触れると頷いた。

銃を片手に覆面をした複数の男たちが走ってきた。抵抗しても無理矢理降ろされるだろうと、2人はゆっくりと車から降りた。すると1人の男がトニーに向かって告げた。
「トニー・スターク。一緒に来てもらおう」
「嫌だと断ったら?」
トニーが男を睨みつけると、周囲の男たちが一斉にペッパーに銃を向けた。
「お前の愛するオンナの頭が吹っ飛ぶぞ」
やれやれと首を振ったトニーは、ペッパーに向かって頷いた。と同時に2人は腕時計に触れた。あっという間にナノテックが2人の身体を覆い、アイアンマンとレスキューが姿を表した。
トニーは携帯用のアーマーを万が一のことを考え、作っていたのだ。
「トニー、悪い子にはお仕置きが必要よ」
「仕方ないな」
頷き合った2人は、同時にリパルサーを放った。

***

アイアンマンとレスキューは見事な連携プレーで次々と敵を倒していく。が、複数のヘリが次から次へとやって来て、敵の数はどんどん増えていくではないか。派手な戦闘をしているのだから、いい加減誰かが気づいても良さそうなのに、誰もやって来る気配もない。そうかと言って、敵は追いかけて来るだろうから、街中に向かう訳にもいかない。
「F.R.I.D.A.Y.!その辺に暇にしているヒーローはいないのか?!」
『ボス、通信が妨害されています。どなたにも連絡できません』
トニーは小さく舌打ちした。
ヒーロー業から遠ざかって早10年。サノスとの戦いから、一度も戦ったことはなかった。アーマーの出番も、モーガンの誕生日パーティーや、学校に忘れ物を届けに行く時など、戦いとは全く関係のない時しかなかった。
つまり、認めたくはないが、戦いの感覚は確かに鈍っていたのだ。
それはペッパーも同じだ。しかも彼女の場合、10年前に一度戦っただけだ。
戦いながら妻の様子を気にかけていたトニーだが、気づけばかなり離れてしまっているではないか。
『ボス!』
F.R.I.D.A.Y.の声に振り返ると、遠くにいるヘリからミサイルが一斉に妻に向かって発射された。しかもやっかいなことに追跡ミサイルだ。逃げても必用に追いかけて来る。
トニーはミサイルを撃ち落とした。ペッパーも逃げながら次々と撃ち落とした。全て撃ち落としたはずなのに、制御を失った1発のミサイルが、ペッパーの背後から彼女に迫っているではないか。しかもセンサーに反応していないのだから、ペッパーは気づいていない。この距離から撃ち落とせば、ペッパーが爆発に巻き込まれる…。
トニーはペッパーを守ろうと必死だった。ペッパーだけは守らなくては…と、トニーはペッパーとミサイルの間に身を投じた。

背後で大爆発が起き、ペッパーは振り返った。すると自分の目の前にはナノテックが盾のように広がっていた。自分は何もしていない。つまりこのナノテックは…。
辺りを見渡したペッパーは、トニーが爆発に巻き込まれ、地上に落下していくのを見つけると、悲鳴を上げた。
トニーがミサイルを受け止めてくれたのだ。ナノテックはペッパーを守るために使い、彼自身はほぼ生身でミサイルの爆発に巻き込まれた…。
慌てて追いかけようとしたが、敵の方が早かった。地上に叩きつけられたトニーを、敵は拘束した。血塗れになっているトニーを、まるでボロ布のように、敵は引きずっているではないか。
ペッパーは唇を噛み締めた。1人で適う人数ではない。ここは一旦撤収して、体勢を立て直した方がいいのかもしれない。だが、このままトニーを残して行きたくない…。
葛藤するペッパーに、地上から一人の男が声を掛けた。
「スタークの妻よ。一緒に来い。共に来なければ、トニー・スタークをこの場で殺す」
血塗れのトニーの頭に銃を突きつけた男たちは、せせら笑っている。
彼らは本気だ…。
そう感じたペッパーは、素直に従うことにした。
「分かったわ」
頷いたペッパーは地上に降りるとアーマーを脱いだ。そして抵抗することなく、車に乗り込んだ。

③へ・・・

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