I want to live a second life with you.⑮

「ねぇ、シャワー浴びない?」
暫くしてペッパーが甘ったるい声でそう囁いた。チラリと腕時計を見たトニーは、身体を離した。
「お先にどうぞ」
するとペッパーは、わざとらしく眉を吊り上げた。
「やだわ、トニー。『一緒に』って意味よ」
悪戯めいた笑みを浮かべたペッパーに、トニーは彼にしては珍しく、照れ臭そうに鼻の頭を擦った。
無理もない。一緒に風呂に入るのは5年ぶり…いや、モーガンが生まれてからは、どちらかが娘と共に入っていたため、夫婦2人きりで風呂に入ったことは、一度もなかったのだ。
「5年ぶりか?」
頬を赤らめているトニーに、ペッパーは笑い声を上げた。
「あなたは5年ぶりでしょうけど、私は10年ぶりよ」

手早くシャワーを浴びた2人は、バスタブの中で向かい合って座っていた。
「広いお風呂っていいわね」
バスルームを見渡したペッパーは、身体を伸ばした。湖畔の家もマンハッタンの家の風呂も足を伸ばすことはできるが、こんなにも広くはない。久しぶりに広々としたバスタブに浸かることができたし、ジャグジー機能も付いた高性能なバスタブに、ペッパーはご満悦だ。
「マリブの家の風呂はもっとバカでかくしよう。そうすれば、3人で入れるだろ」
真顔で頷いたトニーだが、ペッパーは苦笑した。
「トニーったら…。モーガンは大きくなったから、一緒には無理よ」
と、トニーが目を見開いた。
「そんな……」
ガックリと肩を落としたトニーに、ペッパーは目をくるりと回した。
「モーガンはもうすぐ10歳なのよ、トニー」
妻の言葉に、空白の5年間が重くのしかかってきた。
娘は自分が知っている、4歳のモーガンではないのだ。あの頃のように、絵本を読んで寝かしつけたり、ベッドの中でこっそりアイスキャンディーを食べたりするような年齢ではないのだ。
途端に虚無感が襲いかかってきたトニーは、唇を尖らせた。
「そうだったな…。もうちっちゃなモーグーナではないんだな…。5年という歳月は、やはり長いな…」
寂しそうなトニーの姿に、ペッパーは胸が張り裂けそうになった。トニーの中では、モーガンは4歳のままなのだ。彼の中では4歳の小さな娘が突然9歳に成長したのと同じなのだ。そして娘のその5年間を、彼は今、必死に受け入れようとしているのだ。いや、モーガンのことだけではない。トニーは全てのことにおいて、空白の時間を埋めようと必死なのだ。
だが、ペッパーは信じていた。その5年間はこれからの5年…いや、何十年という歳月がきっと埋めてくれる。だから、これから先、その5年間を忘れてしまうくらい楽しい思い出を作ればいいのだと…。
そこで、腰を浮かせたペッパーは、トニーの傍まで行くと、彼の膝の上に座った。甘えるように彼の首元に腕を回したペッパーは、頬にキスをした。
「モーガンはもう一緒に入れないけど、その分私と一緒に入るっていうのはどうかしら?旦那様?」
何度か瞬きをしたトニーは、目じりを下げ笑みを浮かべた。少しだけ寂しげな様子だが、甘ったるい笑みを浮かべたトニーは、ペッパーの頬にそっと手を置いた。
「仕方ない。君で我慢するよ」
からかうような口調で告げたトニーに、ペッパーはわざとらしく頬を膨らませたが、すぐにその頬は赤らみ始めた。というのも、トニーの指が背中を這い回り始めたのだ。
「ん……」
ペッパーが吐息を漏らした。トニーの手は今や尻を撫で回しており、ジワジワと沸き起こってきた快楽に、ペッパーは腰をモゾモゾと動かした。すると腹部に硬くなり始めたトニーのモノが触れた。手を伸ばしそれに指を這わせると、トニーが目を閉じた。
「トニー……」
耳元で名を囁いたペッパーは、彼の耳朶を甘噛みした。
「ねぇ…ベッドに連れて行って…」
仕上げとばかりに耳にふぅと息を吹きかけると、身震いしたトニーは目を開けた。
「愛する妻の頼みなら」
ニヤッと笑ったトニーはペッパーを抱き上げると、寝室へと向かった。

⑯へ…

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