I want to live a second life with you.⑬

翌日。3人はコニーアイランドにあるNY水族館に向かった。
「3人で水族館に来るのって初めてだね」
両親と手を繋いだモーガンは喜びを隠しきれないようで、跳ねるように歩いている。が、あまり大声を出すと周囲にバレると感じたのか、慌てて口を閉じた。
トニーもペッパーも深々と帽子を被っているし、トニーに至っては念のため髭まで剃ってきたのだ。今のところバレていないようで、叫び声も黄色い声も聞こえない。つまり、3人は完全に周囲に溶け込んでおり、このまま気づかれずにやり過ごせると思ったのが…。

アシカショーを見終わった3人は、ショップへと向かった。
「ねぇ、パパ。このぬいぐるみ、買って?」
自分の背丈ほどもある大きなアシカのぬいぐるみを抱えたモーガンに、トニーは大きく頷いた。5年間寂しい思いをさせていたのだから、娘がねだるものはなんだって買ってあげようと、娘とアシカを連れて、意気揚々とトニーはレジへと向かった。

金額を告げられポケットから財布を取り出したトニーは、ここでようやく気づいた。自分は死んでいたのだから、クレジットカードの有効期限はとっくに切れており、ただ今再発行中で手元にないということに…。生憎現金は、チップ用程度しか持ち合わせていない。そこでキョロキョロと妻の姿を探すと、彼女は遠く離れた場所にいるではないか。
「おい、ペッパー!」
トニーはうっかり叫んでしまった。それもいつもの調子で…つまり大声で。すると、
「トニー、どうしたの?」
と、大声で叫んだペッパーが駆け寄ってきた。

『トニーとペッパー』
地球広しといえど、その呼び名はあの2人しかいない。5年ぶりに生き返ったと、話題沸騰中のトニー・スタークと妻のペッパー・スタークだ。
店内の全員が声の主に注目した。
と、レジを打っていた店員が顔を上げた。
彼女は目の前の人物が誰か気づくと、目を見開いて飛び上がった。

「と、と、トニー・スターク!!!!!!」

店員がトニーを指差し大声で叫ぶと同時に、店内は歓声と悲鳴と叫び声に包まれた。中には奇跡を目の当たりにしていると、トニーを拝み出す人までいる始末。
あまりの熱狂ぶりにモーガンはポカンと口を開けたまま固まっているではないか。溜息を付いたトニーだが、元々バレてもいいと思っていたのだから、帽子を取った。すると人々から拍手が沸き起こった。
「おかえりなさい!」
何処からともなく聞こえた声に向かって、トニーは手を振ると口を開いた。
「ありがとう。ありがとう、みんな。どうやら私は死んでも人気者だったらしいな。奇跡が起こり、戻ってくることができた。皆が祈ってくれたからかもしれない。ありがとう」
トニーの言葉に、再び拍手が沸き起こった。大袈裟に一礼したトニーは、いつの間にか会計を済ましてくれていたペッパーと、アシカを抱えたまま固まっているモーガンの手を取ると、店を後にした。

勿論、車に向かう途中も大騒ぎで、3人は急いで車に乗り込んだ。何処かでランチをする予定だったが、こんな状況ではゆっくりすることもできないだろうと、結局真っ直ぐ家へと戻ってきた。
家へ戻ってきても、モーガンは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして黙ったままだ。
「モーガン、大丈夫?」
自分たちはああいう状況には慣れているが、モーガンは初めての経験だから、驚くのも無理はないだろうと、娘の隣に腰を下ろしたペッパーは、小さな背中をそっと撫でた。すると何度か瞬きをしたモーガンは、頬を赤らめると、興奮気味に喋り始めた。
「パパってやっぱり凄いんだね!だってみんながあんなに喜んでるんだもん!私、ビックリしちゃったけど、面白かった!」
トニーは思わずペッパーと顔を見合わせた。てっきり怖がっているのかと思いきや、逆に面白がっているのだから…。
「やっぱりあなたの子ね」
目をクルリと回したペッパーだが、可笑しそうにクスクス笑い出した。
「いや、12%は君の子だ」
ふんっと鼻を鳴らしたトニーは、モーガンの傍に鎮座しているアシカの頭を撫でた。

⑭へ…

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