二人が顔を合わせたのは、年が明け行なわれた部の新年会だった。
トニーに協力してもらったペッパーの研究は、最優秀賞は逃したものの、その着目点は大いに評価され、審査員特別賞を受賞したのだった。一年生がこの栄誉に輝いたのは学校創設以来のことだったため、顧問は大喜び。近くのビーチでバーベキューパーティーを開いてくれることになり、主役であるペッパーはもちろんのこと、あれ以来彼女と話そうにも話せなかったトニーも参加したのだった。だが、こんな席にトニーが参加すること自体が珍しいため、彼はあっという間に他の女子部員に囲まれてしまい、トニーのことが気になりつつも、ペッパーはどうすることもできず目を合わせないようにしていた。
女の先輩たちと話していたペッパーだが、以前よりペッパーのことが気になっていた男子生徒がペッパーに近づいて来た。
「ポッツさん、おめでとう」
「ありがとうございます」
可愛らしく笑ったペッパーは、その男子生徒に誘われるように会話をし始めた。
二人仲良く話している姿をじっと見つめていたトニーだったが、他の男が彼女と二人でいるのを見せつけられ、気が狂いそうになり、気が付くとペッパーの目の前に立っていた。
「先輩、どうしたんですか?」
突然目の前にトニーが現れ驚いたペッパーは、目を丸くしている。
「ポッツくん、話があるんだ。いいか?」
ペッパーの腕を引っ張り強引に立たせたトニーは、少し歩こう…と波打ち際を歩き始めた。
しばらく黙ったまま歩いていたトニーだったが、重い口を開いた。
「この間はすまなかった」
「いえ…私こそすみませんでした。先輩にはお世話になったのに…」
俯いたままのペッパーは、足を止めると頭を下げた。
そばにあった流木に腰を下ろしたトニーに手招きされたペッパーは、彼の隣にちょこんと座った。
海を眺めながら、トニーは静かに話し始めた。
「あれからいろいろ考えたんだ。無理やりあんなことをしてしまって本当にすまない。だが、ポッツくん…その…」
足元に落ちていた貝殻を海に向かって投げ捨てたトニーは、ペッパーをじっと見つめた。
「俺と付き合わないか?」
(付き合うとは、恋人になるってことよね…。彼はあの日のことに責任を感じてそう言ってるのよ…)
そう考えたペッパーは口を尖らせた。
「先輩、それって…躰から始まる恋をしようってことでしょ?そんなの続くわけないわ…」
潤んだ瞳を擦ったペッパーだが、トニーは首を振った。
「いや、違う。確かにあの時俺は君のことを欲望のまま抱いた。だが、俺は…君に初めて出会った時から君のことが気になっていたんだ」
「初めてって…」
彼の言う『初めて会った日』は、手伝うと言ってたくれた日のことだろう。でも、どうして…とペッパーは戸惑った。戸惑うペッパーの手をそっと取ったトニー は、キュッと握りしめた。
「君たちが入部した時に歓迎会があっただろ?あの時、他のオンナは俺に纏まりついてきたけど、君は違った。話す機会はなかったが、君は不純な動機で入部したんじゃないって気付いていた。それからしばらくして、俺は先生に呼ばれた。『ポッツくんという生徒は優秀なんだが、もう一皮脱げて欲しい。君からアドバイスをしてくれないか?』と。今までも頼まれたことはあった。だが、人と関わるのは面倒だと断ってきたんだ。でも君のことは放っておけなかった」
「だからあの日…」
あの日、彼が来たのは、先生に呼ばれたからでも偶然でもなかったのだ。彼が自ら…それも自分のために来てくれたということだけでも、ペッパーは込み上げる涙を抑えることができなくなっていた。
「あぁ。君と話しているうちに、俺は君のことがますます気になり始めた。だが、俺のことを兄のように慕ってくれる君に、自分の気持ちは伝えられなかった。 君に嫌われたくなかったんだ…。でも、俺が恐れずにもっと早く話していれば、こんなことにはならなかったな…」
鼻の頭を掻いたトニーは、真剣な目でペッパーを見つめた。
「ポッツくん、俺は君のことが好きだ。君を愛している。正直なところ、こんな気持ちは初めてなんだ。俺は生まれて初めて恋をした…」
「先輩…」
あの時、彼は自分の欲のためだけに私を抱いたんじゃない…。私だから抱いたんだ…。
ポロっと涙を零したペッパーは、腕を伸ばすとトニーに抱きついた。
「先輩…私も先輩が好きです。大好きな先輩だから、あの日…」
震えるペッパーの背中を抱きしめたトニーは、首元に何度もキスをおとすと、耳元で囁いた。
「分かってる…分かってたんだ。君は自分を安売りするようなオンナじゃない。俺だからだって分かってた。それなのに、俺はあの時何も言わなかった。すまなかった…。これからは君のこと大切にする…。そばにいてくれ…」
「うん・・・」
トニーの肩に顔を押し付けたペッパーは、力強い腕に抱かれ…そして思いが通じ合い幸せだった。
高校生パロ。1月のお話。