5年ぶりに賑わいを取り戻したクリスマス。
街はすっかりクリスマスムードなのだが、街に出れば、至る所にアイアンマンがいた。
テレビでも連日のようにアイアンマンのことを報道していた。
トニーが死んでまだ2ヶ月も経っていないのだから…。
あの時、トニーは無理矢理笑った。
まるで、『こうするしかなかった。君たちを守るためには…。すまない…。ペッパー…泣くなよ…』というように…。
だが、彼が死んだ瞬間、ペッパーは半分死んだのだ。ペッパーにとって、トニーは全てだったから…。
だから、泣かないなんて出来るはずがない。
もしかしたら彼はひょっこり帰ってくるのでは…と、毎日思ってしまう。
彼が隣にいない夜は、眠れるはずはなかった。
分かっている。いい加減には、前へ向いて歩かないといけないというとは…。トニーはこんなこと望んでいないと分かっている。
きっと笑顔で生きていけと、言っていることは分かっている。
それでも街に出れば、人々はあらゆる所でトニーに追悼の意を表していた。
見られるはずがなかった…。
会社や人前では気丈に振る舞った。『ペッパー・ポッツ』を演じれば、少しは平気なフリをすることができたから。
だが、それ以外では…ヴァージニア・スタークになると、そんなフリをすることすら無理だった。
ペッパーは家に閉じこもった。
テレビもつけようとしなかった。
トニーの思い出の詰まった家で、まだ残る彼の温もりに包まれて、身を守るように娘と生活を続けていた。
気が付けば、クリスマスの時期になっていた。だが、クリスマスを祝う心境にはなれなかった。
それでもペッパーはモーガンのために、細やかながらパーティーをすることにした。
それにきっとトニーも言うはず。せっかくのクリスマスなんだから、楽しめ…と。
クリスマスツリーを飾り、暖炉に靴下を下げた。トニーとペッパーとモーガンと名の入った靴下を…。
去年のクリスマスは、トニーがサンタクロースに扮してモーガンにプレゼントを渡した。
トニーが被っていたサンタ帽をアイアンマンのヘルメットに被せたペッパーは、暖炉の前にそれを飾った。
すると、クッキーと手紙が置いてあることに気づいた。手紙には、モーガンの字で『サンタさんへ』と書かれており、ペッパーはそれを読み始めた。
『サンタさんへ
あたし、もうプレゼントはいりません。ずーっといりません。おおきくなってもいりません。だから、パパをかえしてください。パパがいないから、ママはないてます。あたしもないてます。ハッピーおじちゃんも、ローディおじちゃんもないてます。みんなパパにあいたいです。パパがいないとさみしいです。パパがいないと、かなしいです。パパにあいたいです。だからおねがいします。パパがおうちにかえってきますように。おねがいします。あたしのいっしょうのおねがい、かなえてください。パパがかえってきてくれたら、もうプレゼントはずっといりません。おねがいします。あたしのおねがい、かなえてください。
モーガン』
「モーガン…」
ポタポタと涙が手紙の上に零れ落ちた。手紙を握りしめたペッパーは、暖炉の上に飾ってあるトニーの写真を胸に抱くと、その場に座り込み泣いた。
暫くして、ペッパーは涙を拭うと、モーガンの部屋に向かった。
彼女の部屋には沢山の絵が貼ってあった。今までは彼女の好きな動物の絵ばかり描いていたのに、あの日以来、モーガンは毎日父親の絵を描き続けた。部屋中に貼られたトニーの似顔絵には、『パパがおうちにかえってきますように』と添えられていた。
ラボから持ち出したアイアンマンのヘルメットを抱きしめ、トニーが買ってきたぬいぐるみや本を山のように自分の周りに積み上げ、モーガンは眠っていた。
モーガンは毎朝目を覚ますと寝室とラボに覗き、父親がいないかを確認していた。夕方になるとバルコニーの椅子に腰掛けて、モーガンは待っていた。トニーが帰ってくるのを…。
トニーはもう帰ってこないと何度説明しても、モーガンはずっと父親を待っていた。
眠る娘の頬には涙の跡があった。ペッパーがそっと拭うと、モーガンが寝言を言った。
「パパ…」
モーガンのベッドサイドのテーブルには、トニーの写真がいくつも飾ってあった。その一枚をペッパーは手に取ると、写真の中のトニーを撫でた。
「パパもあなたに会いたいって…、天国で泣いてるわよ…」
明日はハッピーとローディを呼んでパーティを開く。
きっとトニーは…賑やかなクリスマスを望んでるから…
トニーも天国から来てくれるかもしれない。サプライズだと、夢の中に会いに来てくれるかもしれない。
だってクリスマスの夜には奇跡が起こるものだから…。